どうも、当ブログ管理人のへどばんです。11月となり、気温も大分下がって参りましたが、読者諸氏は如何お過ごしでしょうか?新型コロナも第3波到来ではと言われておりますし、ご健康に気を付けてお過ごし下さい。
さて、インターネットでは度々話題に上ることなのですが、創作者にとって読者からのレスポンスというのが非常に大事で、これが(創作者の期待する水準よりも)少ないと、甚だしい場合は創作を止めてしまうことがあります。私もオリジナル小説を書いているので、その気持ちはよく理解できますし、創作のモチベーションを失うことの辛さ、或いは読者側からすれば好きな創作物の続きが読めなくなることの辛さというものは個々人にとって重いものであることは容易に推察できます。
一方で、私はレビュアーとして作品に対する“リアクション”をする側でもあって、これに対する作者側の“レスポンス”に興味がある者でもあります。端的に言えば、レビューが喜んで頂ければ嬉しく思いますし、反応がなければ寂しいという感情が湧くのは否定できません。特に後者の状態が連続するとレビューを書くことのモチベーションは一定程度低下します。とは言え、このようなものはネガティブな印象が残置しやすいものでもあって、反応の多寡というのは概して(負の面に偏った)印象論になりがちです。
そのようなわけで、今回は当ブログのレビューに対して、対象作品の著者がSNS(Twitter)においてどのようなレスポンスをしているかのデータを集積し、その傾向について分析しました。分析した結果如何によって、当ブログの運営方針を変更するつもりは毛頭なく、前述の印象論を単純に自分で腑に落ちるようにしたいというのが動機です。
とは言え、以下の2点は極めて重要ですので、結果をご覧になる前に読了とご理解をお願い致します。
①各個人のSNS上での行動について是非を論じるものでは決してなく、特定の行動を称揚または非難することを目的としていない
当たり前ですが、各個人がSNSでどのような行動をするかは(法令や規約等に反しない限り)自由であって、他人がとやかく言うものではありませんし、私も言われたくありません。また、SNS上における行動は、各作家さんそれぞれの創作におけるスタンスや各種のレスポンスの一部分の傾向のみを示すものであって、これのみを以て各個人のスタンスを論じることはナンセンスでしょう。
②レスポンスの有無やその程度は当ブログにおけるレビュー執筆の有無、内容に影響することは決してない
度々申し上げていますが、当ブログは作家、出版社への敬意を持った上で、読者諸氏にとって有用なレビューを書き、ひいてはエロ漫画ジャンルの発展に寄与することを目的とすると共に、レビューの究極の目的というものは自分にとって作品の価値や意味がどのようなものであるかを整理・検討する内省的なものとも言えます。ブログ運営のモチベーションとしてはともかく、各作品に相対するに当ってそこにレスポンスがあるか否かという評価軸は存在しませんし、しないように努力し続けてきました。当ブログの12年間変わらぬ方針ですが、面白そうなら買ってみるし、買って読んだらレビューを書く、ただそれだけです。
【材料と方法】
2020年6月19日から11月7日までにレビューし、その記事更新をTwitterにおける管理人のアカウントから告知した単行本103冊について、有効なTwitterアカウントを保持するその作者100名を対象としました。
(1名は有効なアカウントを確認できず、2名は期間内に2冊の単行本を上梓されていた。2名の重複者のデータの扱い方については後述)
なお、管理人による記事更新をお知らせするツイート(以下、告知ツイートと呼称する)は、下に引用した様に、作者名+作品名+記事へのリンク+短評によって構成されており、この形式は調査期間中において全て同じです。
各記事の対象作品に対するその作家さんの“レスポンス”の程度を数値化するために、Twitter上での行動を以下のように分類し、個々の行動性における能動性や必要コストを考慮して、それぞれにAP(Action Point)を設定しました。
いいね AP 1点
リツイート AP 2点
ツイート AP 3点
レス AP 2点
リンク張り AP 2点
多少分かりにくいですが、単純にリツイートした場合は2点、引用リツイートの場合はなんらかのツイート(文章を書く)が付随することになるので、2 + 3 = 5点となります。
また、レスはレスすること自体が2点ですが、やはり2(レス) + 3(ツイート) = 5点となります。APはそれぞれのレスポンスの累計を求めますが、期間をおいて同じアクションを繰り返した場合でも初回のアクションのみを累計値に加えています。
(例えば作家さんによっては、しばらく後に再びレビュー記事を紹介して頂くことがあり、書き手としては大変嬉しいですが、行動として同じ場合は初回のもののAPのみを用いています)
また、“ツイート”に関しては、前後の文脈から明らかに当ブログに対して個別に言及しているもののみに限ってカウントしています。
なお、大変有りがたいことに当ブログに直接コメントを頂いたり、各個人のサイト等で言及して頂いたりすることもございますが、Twitter上でのレスポンスを対象としているこの調査においてはカウントしておりません。申し訳ありませんが、御理解を願います。
レスポンスの有無、有る場合にはそのAP値の算出およびレスポンス前後24時間のツイートの確認(個別言及の有無を確認するため)をすると共に、当該アカウントが告知ツイートの時点において管理人のアカウントをフォローしているか否かも記録しました。
また、8月8日以降は、レスポンスがあった場合には、時系列において最も早いレスポンスが告知ツイートの何時間後にあったか(これを以下、反応時間と呼称します)を記録しました。この反応時間については、正確な時間が計測できたものと、(管理人が就寝中であったり勤務中であったりするため)前後のツイートから推定したものがありますが、推定値は実際の値から3時間以上のズレたことは無いと判断しています。
調査期間中に2回の該当があった2名の作家さんについては、両方の単行本レビューに対するAP値が共に同値であったため(1名はAP値が共に1, もう1名はAP値が共に8)、AP値はその値を、反応時間については平均値を用いました。
なお、調査期間中に、米国の大統領選挙に伴うリツイートの仕様変更がありましたが、調査期間末期のものであり、その影響は検討できていません。ただし、体感的には大きな差は感じませんでしたし、データの大半がそれ以前のものであるため、結果全体に大きく影響したとは考えていません。
【結果】
1.レスポンスの有無とその強度の組成

調査期間中、53%のアカウントがその著作のレビューに対して何らかのレスポンスを示し、47%は何もレスポンスを示しませんでした(図1)。当アカウントのフォロワー・非フォロワーに分けてレスポンスの有無を見ると、フォロワー(n = 23)の場合はその73.9%が何らかのレスポンスを示したのに対し(図1)、非フォロワー(n = 77)の場合は何らかのレスポンスを示したのは46.8%となっていました(図1)。この比率には有意差があり(カイ2乗検定, p < 0.05)、フォロワーである方がレスポンスを示す率が高いことを示しています。

レスポンスの形式は15パターンに分類され、“RTのみ(AP値2)”と“RT+いいね(AP値3)”が共に13名で最も多く、この2パターンのみでほぼ半数を占めています(図2a)。

レスポンスのあった作家さんをフォロワーと非フォロワーに分けてそのAP値を比較すると、前者(n =17)では平均5.1(標準偏差3.2)、後者(n = 36)では平均4.1(標準偏差2.1)となり、フォロワーにおける平均値が非フォロワーによる平均値を1程上回りましたが(図3)、両者には有意差はなく(t 検定, p > 0.05)、フォロワーか否かでレスポンスの強度は異ならないことを示しています。
2. 反応時間とレスポンスの強度の関係

図4にレスポンスがあり、反応時間が計測できたアカウント(n = 34)によるレスポンス強度(AP値)と反応時間の散布図を示します。なお、反応時間は0.2~391時間と非常に幅広いため、横軸は対数軸にしてあります。
反応時間とレスポンス強度には有意な正の相関が認められました(ピアソンの積率相関分析, p <0.05)。この結果は、告知ツイートからレスポンスまでの時間が長い程、反応強度が高いことを示しています。
なお、フォロワーである場合の平均反応時間±標準偏差は34.5 ± 59.7時間、非フォロワーである場合の平均反応時間±標準偏差は30.1 ± 80.7時間であり、分散が大きいこともあって両者に有意差は認められませんでした(t 検定, p > 0.05)。
【考察】
期間中、約半数の作家さんが当ブログにおけるその作品のレビューに対して何らかのレスポンスを示していた。これが高いのか低いのかは他のサイトに対するレスポンスの発生率を調査して比較しないと判定できませんが、個人的にはありがたい数値であると感じています。
レスポンス形式としては“RTのみ”、または“RT+いいね”のみが多いですが、この一因は作家さんが単行本の発売からしばらくは(おそらくいわゆるエゴサーチをして)単行本発売に関するツイートを連続してリツイートすることが多いためと考えられます。この場合、リツイートしたツイートへの言及が無いか、あっても総括しての言及が大半のため、観測されるAP値は低くなる傾向があります。
このことは、レスポンス強度と反応時間の相関関係に大きく影響している可能性があり、発売後しばらくの間は宣伝のためにもそういった行動の実行頻度が多いことが推測され、反応時間が短く、AP値の低いレスポンスが発生しやすいと考えられます。
仮説としては、レスポンスを能動的に探す作家さんはレスポンス強度が高くなると考えていたのですが、その仮説が棄却されたことになります。また、反応時間が非常に長く(告知ツイートから100時間以上)、AP値が高い2つのデータも相関関係に大きく影響したと考えています。
当アカウントのフォロワーであるか否かは、レスポンスの発生頻度には影響しましたが、レスポンスの強度には影響しませんでした。フォローの有無は当該レビューの発見のしやすさにあまり影響しないと考えられませんし、平均反応時間にも有意差が認められないために、発生頻度には他の要因、例えばフォローしている相手の方がレスポンスを取りやすいといった精神的なコストの低さが関係している可能性があります。
また、フォローの有無はレスポンスの強度に影響しておらず、例えば相互フォロワーであるからより強度の高いレスポンスを取るということはなく、各個人がそれぞれ固有のレスポンスの仕方をしていると考えられます。
これは本調査の本筋から外れますが、当アカウントに対してレスポンスを示さなかったり、AP値が低い値のレスポンスであったりした場合でも、他のアカウントのよる作品へのリアクションに対して高いAP値のレスポンスを示していたケースは多々観察されました。大手ブログであったり、フォロワー数が多く影響力のあるアカウントであったりと、それによる実利(宣伝としての効果等)が大きいリアクションに対して作家側のレスポンスが大きいのは納得できるものであり、商業作品である以上、作家側にとっては価値の高いリアクションとそうでないリアクションという認識はあるのでしょう。
また、基本的に各作家さんの1冊の単行本のレビューに対する反応を調べた本調査では明らかに出来ていませんが、当サイトに対するレスポンスの有無や強度は各作家さんにおいて固定的であると感じています。実際に期間中2冊の単行本レビューがあった作家さんは、両方において同じレスポンス強度を示しましたが、単行本レビュー時にいつも好意的なレスポンスを示してくれる作家さんも居れば、デビュー作以来全ての単行本をレビューしているが、いずれも反応なしという作家さんも居ます。この辺りは、作家さんによって、読者側のリアクションについてレスポンスする価値があるか否かの判断基準が様々であり、かつ経時的に大きく変動しないものであることを示していると考えます。
12年間レビューを続けてきましたし、上述した様に運営方針を変えるつもりもないので、例えばこのレスポンスの発生率やレスポンス強度を高めるための直接的な努力をするつもりはありません。とは言え、客観性・公平性を保った上で、作家さんにも喜んで頂けるようなレビューが書けるように精進していきたいとは考えています。
ただ、私が心配するのは、レビューに対するレスポンスの低下は、特にこれからレビューサイトを始めるような人のモチベーションを削ぐことにならないかということです。エロ漫画ジャンルに留まらないことですが、SNSの普遍化によって、レビューサイトというものの存在感は薄れていってるようには感じます。この12年間で更新が止まったり、消えたりしたレビューサイトをいくつも見てきたこと故の感覚ではあるでしょう。
即応性や双方向性を有するSNS上での作品へのリアクションは、それはそれで大きな価値を持つものであると感じていますが、長文でどっしり構えた批評・評論の価値を信じているからこそこのサイトを続けているというのはあります。
そういったサイトがこれからも生じて欲しいなと思っているのですが、もしかしたら、これは私の感覚が時代遅れになっているのかもしれません。スタンスを変えないというのは哲学でもありますが、裏を返せば変化できない硬直性とも言えるでしょう。エロ漫画の歴史というものを含めた大きなスケールでこのジャンルを見ている稀見理都氏や、エロ漫画ジャンルにおける王道の評論を歩んでいる新鋭・新野 安氏の活躍を傍で見ていて、羨ましく思いますし、そういった新たな形でエロ漫画ジャンルの批評・評論を標榜する若い人が出てきて頂くことを期待しています。私にはもう無理そうですが。
であれば、このサイトの自分自身以外の方にとっての存在意義というのを今後如何に考えていくべきかというのは、今更ながら自分に課された宿題なのかもしれません。
余談が長くなりましたが、また明日からレビューを頑張ります。
へどばん拝
さて、インターネットでは度々話題に上ることなのですが、創作者にとって読者からのレスポンスというのが非常に大事で、これが(創作者の期待する水準よりも)少ないと、甚だしい場合は創作を止めてしまうことがあります。私もオリジナル小説を書いているので、その気持ちはよく理解できますし、創作のモチベーションを失うことの辛さ、或いは読者側からすれば好きな創作物の続きが読めなくなることの辛さというものは個々人にとって重いものであることは容易に推察できます。
一方で、私はレビュアーとして作品に対する“リアクション”をする側でもあって、これに対する作者側の“レスポンス”に興味がある者でもあります。端的に言えば、レビューが喜んで頂ければ嬉しく思いますし、反応がなければ寂しいという感情が湧くのは否定できません。特に後者の状態が連続するとレビューを書くことのモチベーションは一定程度低下します。とは言え、このようなものはネガティブな印象が残置しやすいものでもあって、反応の多寡というのは概して(負の面に偏った)印象論になりがちです。
そのようなわけで、今回は当ブログのレビューに対して、対象作品の著者がSNS(Twitter)においてどのようなレスポンスをしているかのデータを集積し、その傾向について分析しました。分析した結果如何によって、当ブログの運営方針を変更するつもりは毛頭なく、前述の印象論を単純に自分で腑に落ちるようにしたいというのが動機です。
とは言え、以下の2点は極めて重要ですので、結果をご覧になる前に読了とご理解をお願い致します。
①各個人のSNS上での行動について是非を論じるものでは決してなく、特定の行動を称揚または非難することを目的としていない
当たり前ですが、各個人がSNSでどのような行動をするかは(法令や規約等に反しない限り)自由であって、他人がとやかく言うものではありませんし、私も言われたくありません。また、SNS上における行動は、各作家さんそれぞれの創作におけるスタンスや各種のレスポンスの一部分の傾向のみを示すものであって、これのみを以て各個人のスタンスを論じることはナンセンスでしょう。
②レスポンスの有無やその程度は当ブログにおけるレビュー執筆の有無、内容に影響することは決してない
度々申し上げていますが、当ブログは作家、出版社への敬意を持った上で、読者諸氏にとって有用なレビューを書き、ひいてはエロ漫画ジャンルの発展に寄与することを目的とすると共に、レビューの究極の目的というものは自分にとって作品の価値や意味がどのようなものであるかを整理・検討する内省的なものとも言えます。ブログ運営のモチベーションとしてはともかく、各作品に相対するに当ってそこにレスポンスがあるか否かという評価軸は存在しませんし、しないように努力し続けてきました。当ブログの12年間変わらぬ方針ですが、面白そうなら買ってみるし、買って読んだらレビューを書く、ただそれだけです。
【材料と方法】
2020年6月19日から11月7日までにレビューし、その記事更新をTwitterにおける管理人のアカウントから告知した単行本103冊について、有効なTwitterアカウントを保持するその作者100名を対象としました。
(1名は有効なアカウントを確認できず、2名は期間内に2冊の単行本を上梓されていた。2名の重複者のデータの扱い方については後述)
なお、管理人による記事更新をお知らせするツイート(以下、告知ツイートと呼称する)は、下に引用した様に、作者名+作品名+記事へのリンク+短評によって構成されており、この形式は調査期間中において全て同じです。
また、告知ツイートは概ね午後10時~午前0時の間に為されています。たぬきマソ先生の(本名義での)初単行本『おち○ぽスキスキびっちーず』レビューアップ https://t.co/YbteRn8dFU あっさりとした印象の絵柄と作劇でありつつ、情動の奥行きやエネルギー感を感じさせるキャラクター描写と、派手さ・過激さのあるエロ演出で彩る痴態描写が特徴的な作品集です
— へどばん👊🏽皇牙組 (@Ero_Thrasher) November 11, 2020
各記事の対象作品に対するその作家さんの“レスポンス”の程度を数値化するために、Twitter上での行動を以下のように分類し、個々の行動性における能動性や必要コストを考慮して、それぞれにAP(Action Point)を設定しました。
いいね AP 1点
リツイート AP 2点
ツイート AP 3点
レス AP 2点
リンク張り AP 2点
多少分かりにくいですが、単純にリツイートした場合は2点、引用リツイートの場合はなんらかのツイート(文章を書く)が付随することになるので、2 + 3 = 5点となります。
また、レスはレスすること自体が2点ですが、やはり2(レス) + 3(ツイート) = 5点となります。APはそれぞれのレスポンスの累計を求めますが、期間をおいて同じアクションを繰り返した場合でも初回のアクションのみを累計値に加えています。
(例えば作家さんによっては、しばらく後に再びレビュー記事を紹介して頂くことがあり、書き手としては大変嬉しいですが、行動として同じ場合は初回のもののAPのみを用いています)
また、“ツイート”に関しては、前後の文脈から明らかに当ブログに対して個別に言及しているもののみに限ってカウントしています。
なお、大変有りがたいことに当ブログに直接コメントを頂いたり、各個人のサイト等で言及して頂いたりすることもございますが、Twitter上でのレスポンスを対象としているこの調査においてはカウントしておりません。申し訳ありませんが、御理解を願います。
レスポンスの有無、有る場合にはそのAP値の算出およびレスポンス前後24時間のツイートの確認(個別言及の有無を確認するため)をすると共に、当該アカウントが告知ツイートの時点において管理人のアカウントをフォローしているか否かも記録しました。
また、8月8日以降は、レスポンスがあった場合には、時系列において最も早いレスポンスが告知ツイートの何時間後にあったか(これを以下、反応時間と呼称します)を記録しました。この反応時間については、正確な時間が計測できたものと、(管理人が就寝中であったり勤務中であったりするため)前後のツイートから推定したものがありますが、推定値は実際の値から3時間以上のズレたことは無いと判断しています。
調査期間中に2回の該当があった2名の作家さんについては、両方の単行本レビューに対するAP値が共に同値であったため(1名はAP値が共に1, もう1名はAP値が共に8)、AP値はその値を、反応時間については平均値を用いました。
なお、調査期間中に、米国の大統領選挙に伴うリツイートの仕様変更がありましたが、調査期間末期のものであり、その影響は検討できていません。ただし、体感的には大きな差は感じませんでしたし、データの大半がそれ以前のものであるため、結果全体に大きく影響したとは考えていません。
【結果】
1.レスポンスの有無とその強度の組成

調査期間中、53%のアカウントがその著作のレビューに対して何らかのレスポンスを示し、47%は何もレスポンスを示しませんでした(図1)。当アカウントのフォロワー・非フォロワーに分けてレスポンスの有無を見ると、フォロワー(n = 23)の場合はその73.9%が何らかのレスポンスを示したのに対し(図1)、非フォロワー(n = 77)の場合は何らかのレスポンスを示したのは46.8%となっていました(図1)。この比率には有意差があり(カイ2乗検定, p < 0.05)、フォロワーである方がレスポンスを示す率が高いことを示しています。

レスポンスの形式は15パターンに分類され、“RTのみ(AP値2)”と“RT+いいね(AP値3)”が共に13名で最も多く、この2パターンのみでほぼ半数を占めています(図2a)。
AP値は1から11までの範囲にあり、平均値は4.5となりました(図2b)。

レスポンスのあった作家さんをフォロワーと非フォロワーに分けてそのAP値を比較すると、前者(n =17)では平均5.1(標準偏差3.2)、後者(n = 36)では平均4.1(標準偏差2.1)となり、フォロワーにおける平均値が非フォロワーによる平均値を1程上回りましたが(図3)、両者には有意差はなく(t 検定, p > 0.05)、フォロワーか否かでレスポンスの強度は異ならないことを示しています。
2. 反応時間とレスポンスの強度の関係

図4にレスポンスがあり、反応時間が計測できたアカウント(n = 34)によるレスポンス強度(AP値)と反応時間の散布図を示します。なお、反応時間は0.2~391時間と非常に幅広いため、横軸は対数軸にしてあります。
反応時間とレスポンス強度には有意な正の相関が認められました(ピアソンの積率相関分析, p <0.05)。この結果は、告知ツイートからレスポンスまでの時間が長い程、反応強度が高いことを示しています。
なお、フォロワーである場合の平均反応時間±標準偏差は34.5 ± 59.7時間、非フォロワーである場合の平均反応時間±標準偏差は30.1 ± 80.7時間であり、分散が大きいこともあって両者に有意差は認められませんでした(t 検定, p > 0.05)。
【考察】
期間中、約半数の作家さんが当ブログにおけるその作品のレビューに対して何らかのレスポンスを示していた。これが高いのか低いのかは他のサイトに対するレスポンスの発生率を調査して比較しないと判定できませんが、個人的にはありがたい数値であると感じています。
レスポンス形式としては“RTのみ”、または“RT+いいね”のみが多いですが、この一因は作家さんが単行本の発売からしばらくは(おそらくいわゆるエゴサーチをして)単行本発売に関するツイートを連続してリツイートすることが多いためと考えられます。この場合、リツイートしたツイートへの言及が無いか、あっても総括しての言及が大半のため、観測されるAP値は低くなる傾向があります。
このことは、レスポンス強度と反応時間の相関関係に大きく影響している可能性があり、発売後しばらくの間は宣伝のためにもそういった行動の実行頻度が多いことが推測され、反応時間が短く、AP値の低いレスポンスが発生しやすいと考えられます。
仮説としては、レスポンスを能動的に探す作家さんはレスポンス強度が高くなると考えていたのですが、その仮説が棄却されたことになります。また、反応時間が非常に長く(告知ツイートから100時間以上)、AP値が高い2つのデータも相関関係に大きく影響したと考えています。
当アカウントのフォロワーであるか否かは、レスポンスの発生頻度には影響しましたが、レスポンスの強度には影響しませんでした。フォローの有無は当該レビューの発見のしやすさにあまり影響しないと考えられませんし、平均反応時間にも有意差が認められないために、発生頻度には他の要因、例えばフォローしている相手の方がレスポンスを取りやすいといった精神的なコストの低さが関係している可能性があります。
また、フォローの有無はレスポンスの強度に影響しておらず、例えば相互フォロワーであるからより強度の高いレスポンスを取るということはなく、各個人がそれぞれ固有のレスポンスの仕方をしていると考えられます。
これは本調査の本筋から外れますが、当アカウントに対してレスポンスを示さなかったり、AP値が低い値のレスポンスであったりした場合でも、他のアカウントのよる作品へのリアクションに対して高いAP値のレスポンスを示していたケースは多々観察されました。大手ブログであったり、フォロワー数が多く影響力のあるアカウントであったりと、それによる実利(宣伝としての効果等)が大きいリアクションに対して作家側のレスポンスが大きいのは納得できるものであり、商業作品である以上、作家側にとっては価値の高いリアクションとそうでないリアクションという認識はあるのでしょう。
また、基本的に各作家さんの1冊の単行本のレビューに対する反応を調べた本調査では明らかに出来ていませんが、当サイトに対するレスポンスの有無や強度は各作家さんにおいて固定的であると感じています。実際に期間中2冊の単行本レビューがあった作家さんは、両方において同じレスポンス強度を示しましたが、単行本レビュー時にいつも好意的なレスポンスを示してくれる作家さんも居れば、デビュー作以来全ての単行本をレビューしているが、いずれも反応なしという作家さんも居ます。この辺りは、作家さんによって、読者側のリアクションについてレスポンスする価値があるか否かの判断基準が様々であり、かつ経時的に大きく変動しないものであることを示していると考えます。
12年間レビューを続けてきましたし、上述した様に運営方針を変えるつもりもないので、例えばこのレスポンスの発生率やレスポンス強度を高めるための直接的な努力をするつもりはありません。とは言え、客観性・公平性を保った上で、作家さんにも喜んで頂けるようなレビューが書けるように精進していきたいとは考えています。
ただ、私が心配するのは、レビューに対するレスポンスの低下は、特にこれからレビューサイトを始めるような人のモチベーションを削ぐことにならないかということです。エロ漫画ジャンルに留まらないことですが、SNSの普遍化によって、レビューサイトというものの存在感は薄れていってるようには感じます。この12年間で更新が止まったり、消えたりしたレビューサイトをいくつも見てきたこと故の感覚ではあるでしょう。
即応性や双方向性を有するSNS上での作品へのリアクションは、それはそれで大きな価値を持つものであると感じていますが、長文でどっしり構えた批評・評論の価値を信じているからこそこのサイトを続けているというのはあります。
そういったサイトがこれからも生じて欲しいなと思っているのですが、もしかしたら、これは私の感覚が時代遅れになっているのかもしれません。スタンスを変えないというのは哲学でもありますが、裏を返せば変化できない硬直性とも言えるでしょう。エロ漫画の歴史というものを含めた大きなスケールでこのジャンルを見ている稀見理都氏や、エロ漫画ジャンルにおける王道の評論を歩んでいる新鋭・新野 安氏の活躍を傍で見ていて、羨ましく思いますし、そういった新たな形でエロ漫画ジャンルの批評・評論を標榜する若い人が出てきて頂くことを期待しています。私にはもう無理そうですが。
であれば、このサイトの自分自身以外の方にとっての存在意義というのを今後如何に考えていくべきかというのは、今更ながら自分に課された宿題なのかもしれません。
余談が長くなりましたが、また明日からレビューを頑張ります。
へどばん拝