EveryonesUltramarine TVアニメ版『のんのんびより のんすとっぷ』第3話「昔からこうだった」を観ました。ひか姉、(本人の不器用な性格もあって)割と残念な扱いをされがちなキャラという認識だったのですが、今回のエピソードで夏海に翻弄されながらも友人として許してあげる、その“いい人さ”がよく伝わりましたね。
しかし、必殺確殺シュートの、このしょーもないネーミングセンス、れんちょんとはまた異なる味があります。

 さて本日は、荒井啓先生の『群青群像』(コアマガジン)のへたレビューです。先生の前単行本(初単行本)『放課後Initiation』(同社刊)のへたレビューもよろしければ併せてご参照下さい。
多彩なキャラデザインの思春期ガール&人妻ヒロインとの不器用な性愛模様を描く作品集となっています。

EveryonesUltramarine1 収録作は、家庭の貧困もあって学内の男子を相手に売りをやって荒稼ぎをしている先輩に現場の見張り役を頼まれている少年は、彼女が別の男達とセックスをする日々を共に過ごすことになるが…な連作「僕は彼女の名前も知らない」前後編(←参照 黙って近くにいるだけの存在である少年だが… 同連作前編より)、砲丸投げの選手で長身&筋肉質なヒロインは冴えない中年男性教師とセックスをする関係であったのだが、彼女に恋をしているクラスメイトの少年の告白を受け入れ…?な中編「砲丸彼女」前中後編、および読み切り形式の短編4作。
 描き下ろし短編「あひるとアカネ」を含め、1話・作当りのページ数は16~38P(平均26P強)と標準を上回るボリュームで推移。ストーリー面に適度な存在感を持たせて読ませる作りであり、その上で程好い分量と熱量の濡れ場が用意されています

【個々人の在り方を相互認証することでの救済を描く作劇】
 短編「お隣さんは恋わずらい」「奥様はセックスフレンド」の2作は人妻ヒロインものですが、その他の作品は思春期後半ボーイズ&ガールズの青春模様を描く作品。
 それらの作品は、売春をしている少女と彼女を買いながら侮蔑の感情を持つ男子達、その状況を傍で見守り続ける少年という連作「僕は彼女の名前も知らない」、優等生から“壊れて”しまった少女と彼女に“壊れる”ことに誘われる男性教師を描く短編「スクラップガール アンド ティーチャー」、女性としての魅力を認めてくれた男性教師と関係を持ちながら彼の性癖による要請もあって、幼馴染の告白を受け入れる少女を描く短編「砲丸彼女」と、快活な青春模様ではなく、歪みや不器用さを抱えた関係性を描く青春を描いています。
それらの歪さや不器用さが登場人物達の中に積もっていく様子に危うさを感じさせ、緊張感や不安感を生じさせる描き方になっていますが、本作の特徴は登場人物達の在り方を否定することはなく、その中で生じた素直な気持ちによって彼ら彼女らがその関係性において等身大に“救われる”ことを描いている点とも言えるでしょう。
EveryonesUltramarine2 セックスを含めて自身の気持ちや衝動性を解放すること(←参照 “壊れ”たがっている二人 短編「スクラップガール アンド ティーチャー」より)、そしてそれらが他者に受容されることによって善き関係性が構築されるという描き方は、「王道的」な恋愛ストーリーと実は変わらないとも評し得ます。
 また、夫の部下で元・セックスフレンドの男性と流されてセックスをしてしまう短編「奥様はセックスフレンド」はやや例外的ながら、一夜の不倫セックスを経て沈んでいた男性が活力を取り戻し、彼女と不倫ではない関係性となる短編「お隣さんは恋わずらい」も、不倫と言う歪さはありながら、セックスを経ての“救済”が描かれていると言えるでしょう。
全般的に、抗しがたい劣情やネガティブな感情が湧き出しながらも、それを抜出してくれることでポジティブな生き方への回帰があるシナリオワークとも言え、優しく穏やかな読後感となっています。

【多彩なキャラデザ&ボディデザインの巨乳ヒロインズ】
 上述した様に短編2作は人妻ヒロインで大よそ30代前半~半ば程度と思しき年増美人さんであり、その他の作品のヒロインは女子校生キャラ。
 ウリをしていたり、サセ子であったりな女の子(連作および短編「スクラップガール アンド ティーチャー」)、そばかす&眼鏡で自分の容姿に自信がない地味ガール(短編「あひるとアカネ」)、筋肉質で長身、がっちりした体格の砲丸投げ選手である女の子と(中編)、設定やキャラデザインについて、好みが分かれるであろうヒロインが多いのは確か。
また、人妻ヒロインについても、適度な年増感と真面目で地味な印象のある短編「お隣さんは恋わずらい」の眼鏡美人さんといったキャラデザを投入。このため、華やかでキュートな美少女キャラ的なものを期待するのは避けるべきなのですが、そういったヒロイン達の可愛らしさや性的な魅力、表面上とは異なる人としての魅力といったものが展開の中で明らかにされていく展開こそに価値があるキャラクター造形でもあって、そこへ共に踏み込めるかという点が作劇において重要になっています。
EveryonesUltramarine3 程好くだらしない肉付きを感じさせる年増美人の完熟巨乳ボディ、すらっとした美脚の伸びるスレンダー巨乳ボディ、垂れ気味の巨乳とお腹周りの肉が本人もコンプレックスな低等身気味ボディ、長身&筋肉質の日焼け巨乳ボディと各ヒロインの設定に合わせて女体造形は多彩(←参照 がっちりとした体躯の砲丸投げガール 中編「砲丸彼女」前編より)。
それぞれの女体の質感の描き分けが優れていますし、程好い濃さの陰毛や淡さも感じさせる乳首や乳輪の描写、適度な淫猥さもありつつマイルドにまとめた秘所描写など、エロさをストレートに押し出すというよりかは、過度に主張させないことでの生々しさがあるという独特の塩梅になっています。
 淡く繊細な筆致を丁寧に織り込みつつ、絵としての重さ・濃さを感じさせない画風であって、エロ漫画ジャンルの中で独特の立ち位置にあると感じます。5年ぶりの単行本ながら完成された絵柄であって、単行本を通して表紙絵の印象と一致して安定。また、エロシーンも含めて技巧的なコマ割りも特徴的で、特にコマとコマの間の使い方の上手さなども特筆すべき点でしょう。

【控えめな演出の中に宿る熱量&技巧的な画面構成】
 ストーリーの進展に合わせて濡れ場を分割するケースが多く、総量としては十分量を用意していますが、作品によっては、実用的読書において中核となるエロシーンの尺はそれほど長くない印象があります。
 いずれも合意の上でのセックスですが、ウリであったり、不倫セックスであったり、露出やプレイ変態な中年教師による調教チックな関係性の継続や寝取らせ?シチュであったりと、背徳感や不穏当さを感じさせるシチュエーションが多いのも特色。
そういったエロシチュは前述したヒロイン達の歪みや不器用さともつながっているのですが、ストーリーの終盤ではこれも上述した感情の解放感を伴うセックスへと移行することが多く、一方的なものから快楽の相互授受への変遷が描かれていると言えます。
EveryonesUltramarine4 あくまで“演技”としての痴態と、本当に快感を共有できる相手とのセックスでの表情や台詞とを区別して描くなど、状況に合わせて演出の強度や身中から込み出るエネルギー感には変化を付けていますが、絡み合い、腰をぶつける身体の動きのダイナミズムを一貫させつつ、演出としてはアタックを打ち出しつつも、密度は明確に抑えるスタイル(←参照 演技ではない彼女の乱れ模様 連作「僕は彼女の名前も知らない」後編より)。
汗や淫液に濡れる女体をがっつり見せつける大ゴマを軸としつつ、複数アングルや局所アップ描写を織り交ぜる1P全体を意識した画面構成や、2P見開きで激しく絡まり合う男女の様子を散りばめるような構成など、技巧的な配置、コマ割りも特徴的で、擬音や台詞表現などの音声表現を控えることで、満ちた熱量を感じ取らせる絵作りの上手さがあります。
 この描写の流れの中に中出しフィニッシュも入れ込んでいく構成であって、前戯パートでの射精シーンを含めて演出的な盛り上がりを強く図るタイプではありませんが、比較的強めの擬音や潮吹き描写、熱っぽい恋人つなぎなどの要素で両者の強い快感と没入感を表現しています。

 作劇・作画共に味わい深さがあり、キャラデザや作劇要素に関して必ずしも万人向けではないのですが、青春モノを中心とした控えめで優しい人間賛歌が非常に魅力的でした。
個人的には、飄々とした言動ながら虚無や孤独を抱える少女と無表情を貫きながらやはり孤独を抱える少年の不器用な関係性を描く連作「僕は彼女の名前も知らない」が最愛でございます。