YourSong 桑原太矩先生の『空挺ドラゴンズ』第7巻(講談社)を読みました。真面目な苦労人キャラと思っていたリーさんですが、そんな意外な過去もあったんだなぁと思いましたね。片や使命感、片や伝説の料理食べたさと全く異なるモチベーションで難所を志す二人の登場人物ですが、いざその場でこの二人がどう関係するのかはハラハラ&ワクワクといった期待があります。

 さて本日は、藤丸先生の『ユアソング』(ワニマガジン社)の越年へたレビューです。先生の前単行本(初単行本)『ラブミーテンダー』(同社刊)のへたレビューもよろしければ併せてご参照下さい。
瑞々しい生と性への渇望を穏やかな雰囲気で描き出すストーリーテリングと柔らかボディが熱っぽく蕩けるセックス描写が味わえる作品集となっています。

 収録作は読み切り形式の短編で11作。しかしながら、これらの作品は独立して存在するものではなく、短編「夏待ちの日」から短編「8月の灯(了)」までの長い年月の中で起きる出来事を描く作品群であり、単行本1冊単位での味わいがある作り。
YourSong1また、本作の世界観は前単行本に収録の短編「8月の灯」と共通しており、主人公・ひろくんの書いた小説“8月の灯”はいずれの作品にも登場する重要なアイテムとなっていて(←参照 多くの人に読まれる本となったその役割とは 短編「終わりの電気羊」より)、前日譚である「夏待ちの日」、および全作品のフィナーレを飾る「8月の灯(了)」の魅力をフルに味わうためには当該作品の読了は必須でしょう。
 1話当りのページ数は10~24P(平均18P強)と幅は有りつつ平均値としては控えめな部類。個々のエピソードのストーリー性には幅があって軽めのものから味わい深さのあるものまで楽しめますが、世界観全体としての物語の存在感は十二分に強く、また熱量に満ちたエロシーンの存在感も程好い強さを有しています。

【多彩な筆致で描かれる“生としての性”の瑞々しさ・尊さ】
 本作の世界は地球規模の海面上昇が起き、土地が失われ、交通インフラや地方の町の消滅が進み、スポーツ(および部活動)が衰退し、不妊化が拡大していく中で選ばれた人間が大気圏外へそして火星へと移住していくという地球上における人類の終焉が進行していくというシリアスでハードな状況が進展していくものとなっています。
そうした深刻な状況の中で、それでも人はそれぞれの日常を生き、愛を育み、ストレートな性欲を発露していく有り様を、時にお馬鹿&コミカルに、時に切ない青春模様として、時に優しいファンタジーとして多彩な筆致で描き出しています。
衰退する都市と若者達、老人と少女、後悔と共に残った幽霊の少女と今を生きる少女等々、各作品においては作品世界に濃厚に漂うそれを含めた死や終焉と、登場人物達の生としての性およびそれがつなぎ合わされる継続性とが明瞭なコントラストを形成しており、言うまでも無く後者をこそ浮揚するストーリーに仕上げています。
YourSong2 背景の重苦しさを決して強く感じさせない一方で、生としての性を浮かび上がらせる役割は明瞭であって、大きな物語の中で“愛するものと共にありたい”“自分が活きた証を残したい”という登場人物達の普遍的な感情が美しく尊く、そして切実に感じられる人間の描写は優しく読み手の心を打ちます(←参照 “ちゃんと生きてたって思い出せるように” 短編「晴れ日の花束」より)。
性愛の高揚感、別れの切なさ・悲しさ、心温まるファンタジーと多彩な描き方を為しつつ、決してテーマ性を大上段に構えることなく、ほのぼのとしたコミカルさや快活なポジティブさでも楽しく読ませてくれますし、長編作としての強いドラマ性を示さずに個々に楽しめる短編集である一方で、カバー裏の年表を参照しながら、時系列を追いながら読み返すことで大きなストーリーの中にある個々の作品の魅力がより高まる構成力も見事。
 ひろくんの小説“8月の灯”がそれを読んだ各作品の登場人物を後押しし、彼ら彼女らをつなげていったように、それぞれの登場人物達の営みもまた後につながっていったこと、そして同名の短編「8月の灯」から始まったこの作品もまた、読み手の心の何かにつながっていくことを想起させ、また願わせる魅力的なストーリーと総括したいところ。

【健康的な色気感のある多彩な設定の巨乳ヒロインズ】
 女子校生級の女の子を主力としつつ、20代半ば~後半クラスと思しき研究員や喫茶店マスターの女性、はたまた人間になった乳牛ちゃんや長期間にわたって稼働している美人アンドロイドさんなど多彩な年齢層?&設定のヒロインが登場。
YourSong3 天真爛漫で御主人に恩返ししたいし種付けもされたい乳牛ちゃん(←参照 カワイイ! 短編「はるの牛飼い」より)、クール&毒舌でありつつ人間の生を見守り導く“シスター”としての役割を果たすアンドロイドさん、巨乳好き主人公君のためにおっぱいの成長を頑張る幼馴染お姉ちゃん、幽霊君とのセックスにハマるスケベなスポーツガール、感謝の気持ちや別離のさみしさを素直に表現できない不器用ガールなどなど、ヒロインのキャラクター性は様々。
漫画チックの楽しいキャラ付けも多いですし、それが快活な印象に大きく貢献しているのも確かですが、キャラ属性的な魅力よりもその素直な情動とその発露にこそ魅力があるタイプなのは作劇の方向性を決定づけていますし、またこの点は男性キャラクターにも共通しています。
 長身の高低によって、トランジスタ・グラマーなタイプからスレンダー巨乳タイプまでボディデザインには多少の幅はありますが、健康的な色気感を保ちつつ柔らか巨乳&桃尻の存在感をアピールする女体描写であって幅広い層にとって親しみ易さとエロさを併せて感じさせるタイプ。
粘膜描写を中心として、体パーツ描写はどちらかと言えば淫猥さを抑えたタイプではありますが、エロシーンの要所で濡れた舌や秘所に適度な煽情性を持たせていますし、絵柄とのバランスという意味では好ましい水準。
 派手さ・華やかさには多少欠けつつも素朴な可愛らしさや親しみやすい美しさのある絵柄は単行本を通して安定。丁寧な背景描写や表情、髪の毛の描写なども魅力でありつつ、作画を詰め過ぎることなく、絵としての緩急や間の取り方の良さを感じます。

【素直な情動が生むエネルギー感と演出の程好いアタック】
 ページ数に幅がある分、濡れ場の尺にも相応の幅がありますが、とは言え抜きツールとして程好いボリューム感のエロシーンを備えており、またセックスをしながらの会話や心の動きが作品全体のシナリオワークと密接に関係していてエロシーンの位置づけに無理が無いのも長所。
 登場人物のモチベーションはその背景によって異なりつつ、好きな相手と体を重ねたい、子供を為したいという人として根源的な情動と快楽欲求に駆動されたセックス描写であって、ストーリーの情緒と結びつくと共に、瑞々しい性欲の力強さにも満ちた印象を打ち出しています。
 短編「供花の庭」のようにエロシーンの分割構成を取るケースも含め、抽挿パートにページ数の比重を置いたタイプであって、そのシークエンスにおけるエロ描写としての勢いや各種の感情の迸りを表現する会話やモノローグの印象が強いスタイル。逆に言うと、前戯パートは抜き所を設けつつ、尺としては比較的短めで、後半の盛り上がりの助走に徹した印象ではあります。
 パワフルに腰を使って男女双方が興奮を高めていくピストン描写でありつつ、力押しにするのではなくて、両者の抱擁やキス、気持ちを打ち明ける会話など勢いを抑えて雰囲気を出すシーンも織り込んでいて、そこから更に高揚感が高まって~という風に描写の緩急の付け方は上手さを感じる点。
YourSong4親しみやすい絵柄の魅力をエロシーンでも損なわない範囲に収めつつ、熱っぽくふにゃふにゃに乱れたり、ほんのりアヘ顔チックになったりな表情付け、要所で淫猥さを増す濡れた粘膜の描写、ハートマーク乱舞で乱れたフォントの描き文字など、十分に強いアタックのエロ演出を適度な密度で施しています(←参照 蕩け顔で仰け反りアクメ! 短編「幸福期の隣人」より)。
 子を為してほしい、結婚したいという思いを込めての中出しもあれば、相手のことを考えて敢えて外に出すケースもありますが、描写としてのも感情の盛り上げとしても十分なタメから突入するフィニッシュシーンであって、中~大ゴマクラスのボリューム&程好い演出密度でオーラスの抜き所を形成しています。

 個々の話のゆるやかなつながりを、一つの作品を以て描き出すという物語の価値というものを多層的に感じさせる秀逸な短編集であり、抜きツールとしての満腹感や読み口の良さとその魅力と有機的に結合しているのも見事。
どの作品も素敵ですが、個人的にはクール&毒舌&ちょっとポンコツなアンドロイドさんと彼女と出会った男性の生の決意が魅力的な短編「終わりの電気羊」が最愛でございます。お勧め!