MyWorldStartsBrilliantly  三上小又先生の『ゆゆ式』第10巻(芳文社)を読みました。昨年末に10周年で、そして今巻で10巻目。時間の経つのは早いなぁとは思いつつ、作品の中では常に変わることなくゆったりと優しく流れているのが本当に素敵な作品だなぁとしみじみ感じます。
“脳”の話は、これに限らずいつものことですが、ぶっ飛んでいて面白かったです。

  さて本日は、美矢火先生の『色めき出す世界』(文苑堂)のへたレビューです。先生の前単行本『純愛リリシズム』(同社刊)のへたレビューもよろしければ併せてご参照下さい。
しなやかボディの美少女さん達とのピュアラブストーリー&熱情的で貪欲な恋愛セックスが味わえる作品集となっています。

MyWorldStartsBrilliantly1  収録作は、仕事に追われる会社員の主人公はかつて援助交際の仲であった少女と街中でたまたま再開し、彼女に自分を誘拐するように言われ、彼女を車に乗せて海へと向かうのだが・・・な連作「逃避行」前後編(←参照 沈んだ顔の彼女だが・・・? 同連作前編より)、および読み切り形式の短編4作。
収録本数こそ多くないものの、1話・作当りのページ数は14~58P(平均33P弱)と幅はありつつ平均値としてはかなりの大ボリューム。特に連作は計90Pもあって実質中編作クラスの作品です。ストーリーとしては小粒でありつつもしっかりと読ませる作りである分、シナリオに存在感があり、エロシーンも十分な量的充実感と高揚感の演出による質的な満腹感が同時に図られています

【素直な感情や欲望の表出が魅力のラブストーリー】
  いずれの作品も制服ガールとのピュアな気持ちと素直な性欲に駆動された恋愛模様を描き出す作品ですが、お話としての軽重やこの作家さんらしいリリカルさの濃淡などは作品によって様々です。
彼氏に昔のセーラー服を着てHをしようと言われてそのまま押し切られちゃうカップルのセックス模様を描く短編「セーラー服着ろってバカなの?」のように、ほぼストーリー性がないものもあれば、現実に疲れている男性と少女の逃避行と相互の救済を描く連作のようにシリアスさや叙情感が強い作品も存在。
また、明るく強くちょっとドジなカンフー娘さんとのエッチなバトルな短編「勝負のゆくえ!」や、自分に自信が持てない中年男性と気になっている女の子に催眠術を掛けようとするが意外な結果になっていく短編「ブサメンがカワイイ彼女をゲットする方法」など、ラブコメ的な明るい軽快さのあるタイプの作品も魅力的です。
  いずれにしても、彼ら彼女らの関係性を形成していく素直な恋心や瑞々しい性的欲望、相互認証の安心感などがストーリーの中で描き出されていることが、恋愛ストーリーとしての王道的な魅力となっており、また読み口を良くしている要因でしょう。
MyWorldStartsBrilliantly2作品それぞれの方向性に合わせて、コミカルであったり、読み手の嗜好によってはやや過剰と感じる可能性がある程、リリカル&ポエティックであったりと雰囲気は明確に分けつつも、それらの心理描写や重要な会話シーンなども含め、印象的なシーンを印象的に見せる台詞表現・視覚表現が為されていることも作劇の評価を押し上げる要因と評し得ます(←参照 “色めく世界” 連作「逃避行」後編より)。
  いずれも微笑ましさを感じさせるハッピーエンドでまとめつつ、ヒロイン側の行動のネタ晴らし的な展開や(短編「発情ラプソディ」)、安心できるほのぼの感を打ち出すラストなど(短編「ブサメンがカワイイ彼女をゲットする方法」)など、ちょっとした仕掛けをラストに含ませているのも、作劇上での一種の技巧として評価できるポイントです。

【しなやかなスレンダーボディの美少女ヒロインズ】
  女子大生クラスと思われるも彼氏君のおねだりでセーラー服を着用してエッチすることになる短編「セーラー服着ろってバカなの?」のヒロインを除き、いずれも女子校生級の美少女さんで統一。
クール系の美貌とフレンドリーな性格のギャル系クラスメイト、明るく元気なカンフー娘、不器用な形ではありながら一生懸命恋路を叶えるために奮闘する健気ガールに、現実の辛さを抱えながらそこから何とか抜け出ようともがいていた援交JKと、漫画チックの楽しいタイプのキャラクターから、連作の様にある種現実的なシリアスさを備えたキャラクターまで、明確に印象を分けながら多彩に用意されています。
  前述した様に感情や欲望の表出に作劇面での意味を持たせつつ、ヒロイン達のキャラクターの魅力にも勿論つなげており、自分にとっては縁遠いと思っていた存在が示す性欲、大人しそうな女の子のここぞという時の勇気、暗く沈んでいた表情から明るく解放的な表情への変化など、秘められていたり抑圧されていたりしたヒロイン達の“本当の魅力”が主人公に対して開示されるという点が明確なポイント。
MyWorldStartsBrilliantly3設定に合わせてキャラデザインにも多彩さがあり、またバストサイズ等に一定のバリエーションもありますが、すらりと伸びる美脚も含めてスレンダーな肢体の持ち主がメインであって、締まったウェストなどで華奢さも感じさせつつ、程好いボリューム感の並乳~巨乳の肉感も適度にあって、均整のとれた美しい女体として仕上げていると感じます(←参照 チャイナドレスのカンフーガール 短編「勝負のゆくえ!」より)。
  なお、どことなく女性向けっぽさも感じさせるイケメン的な男性主人公達のキャラデザはこの作家さんの特徴で、あか抜けないおじさんといったキャラも用意しつつ(短編「ブサメンがカワイイ彼女をゲットする方法」)、少しチャラい感じの彼氏君や真面目メガネボーイ、少し陰気をまとうところがセクシーでもあるイケおじサラリマンなどをご用意。一方で、イケメンキャラとしてのクドさは無いので男性諸氏にもすんなり受容できるタイプのキャラ造形と言えます。
 コミカルな表現からシリアスなものまで、激しい動きから繊細な表現まで自在な筆致を示しており、十分な作画密度を保ちながら重さや濃さはむしろ排除して、健康的な色香や爽やかな印象を持たせる絵柄は、アニメ/エロゲー絵柄的なキャッチーさよりも、創作系寄りの独自性や美しさが印象として目立つタイプ。

【演出・構図の技巧で魅せつつ欲望の前のめりな勢いも強み】
  エピソードによるページ数の違いが大きいこともあって、濡れ場のボリューム感にも差異はありますが、いずれも十分な尺の濡れ場であり、また1話単位のページ数が多い連作ではストーリー展開や回想を絡めてエロシーンを多少分割しながらも、濡れ場としての流れを阻害しない組み立てにしているなど、エロシーンの組み込み方には工夫が認められます。
 男女の関係性において、一定の複雑な過程を踏んだり、ドタバタ模様を繰り広げてしまったりしつつも、そのセックスにおいては相手を強く求め、心が通うことを期待する様に体を密着させ、与え合う快楽を更に強めようとするストレートな欲望が発揮される情熱的な和姦として描き出しており、エロシチュやプレイで奇をてらうことなく、真っ直ぐなアグレッシブさで勝負するスタイル。
MyWorldStartsBrilliantly4このスタイルはエロ描写においても良く表現されており、男女双方が余裕を失い熱っぽい表情でセックスに夢中になっている様子や、男女の肢体の密着感や性器や舌が密着する表現、双方の荒い息や言葉にならない嬌声に無我夢中の台詞回しなど(←参照 短編「発情ラプソディ」より)、ヒロインの痴態描写を主軸としながらも、男女双方が熱情的に交わる様子を強くアピールする描き方となっています。
  比較的シンプルなコマ割りのようで、コマぶち抜きの女体でコマを割ったり、行為の動きの流れを連続コマで魅せたりときっちりとした技巧の上での画面配置、エロ演出自体は決して過激なものではなく量的な飽和感も抑えつつ、演出を完全に抑えたシーンと量的に加速させるシーンでの演出の緩急や、肢体の動きの躍動感と組み合わせることで十二分なアタックを打ち出す相乗効果など、シンプルでありながら効果的な見せ方が出来ているのは、明確に技巧的な魅力。
加えて、その技巧に寄りかかり過ぎずに、ストレートな結合部見せつけ構図なり、大ゴマの投入なりとストレートなエロさもテンポよく織り込んでくるのも実用性につながっており、絵柄の性質を生かしながらも前のめりな勢いを感じさせます。
  前戯シーンにも十分な尺を設けることが多いエロシーンは、意外に1回戦仕様でまとめることが多く、前戯パートでのおあずけなども含めてタメにタメた後での強烈な解放感のあるフィニッシュに仕上げていますし、この後にお掃除フェラ的な追加要素を加えることもしばしばありますが、抜き所の豊富さを求める諸氏は留意されたし。

  ストーリーもエロも決して奇抜さや新味があるタイプではないのですが、どちらも丁寧な仕事で繊細さを形成していることがよく伝わって、複雑さと単純さを併せ持つ登場人物達の関係性や熱情的な性愛の解放感と貪欲さなどが両立されているのが大変に魅力的。
個人的には、フレンドリーなクール系ギャル美少女と真面目なメガネボーイのピュアラブストーリーな短編「発情ラプソディ」が大変お気に入りでございます。