AllWomenAreVenus とよ田みのる先生の『金剛寺さんは面倒臭い』第3巻(小学館)を読みました。チッス(キス)がミサイルを止める話、漫画チックにトンデモなピタゴ○スイッチで笑いましたが、それでも思春期ラブの素敵な全能感が溢れんばかりですし、畳み掛ける様な言葉遣いが見事なんですよね。あと、お父さんめっちゃ人相が変わっていて、最初全く気が付かなかったです。

  さて本日は、南北先生の『女の子はヴィーナス』(ワニマガジン社)の越年へたレビューです。先生の前々単行本(初単行本)『恋人ルール』(同社刊)のへたレビューもよろしければ併せてご参照下さい。
程良い味わい深さで魅せる陰陽様々なショートストーリーと柔らか女体が快楽に染まる陶酔描写で魅せる作品集となっています。

  収録作は、いずれも読み切り形式の短編10作+フルカラーイラストギャラリー(3P)。1作当りのページ数は16~20P(平均18P弱)と控えめながらコンビニ誌初出としては標準的な部類。短編作ながら展開やキャラの魅力で適度に読ませる作りであり、その上で軽過ぎず重過ぎずなエロシーンを用意した構築はコンパクトでありつつ、エロ・シナリオ共に味わいがしっかりとあると評し得ます。

【展開としてのフックがちゃんとある多彩な方向性の作劇】
  コンビニ誌としての制約がある中で作劇の引き出しの多い作家さんであり、今単行本でも快活な青春ラブコメもあれば、不器用な大人の優しい恋物語、ファンタジー要素の絡むコメディや少し不思議なハートウォームなお話、それに妖しい魅力を有する異性に背徳の世界に引きずり込まれるアモラルなストーリーと様々な趣向の作品が揃っています。
AllWomenAreVenus1  作劇の方向性においてメインの一翼を形成するのは、自分の気持ちや欲望を素直に表出して、それらが相互に受容される性愛の善なる価値をベースとするタイプで、同性からもカッコいい存在として認識されている女の子が、可愛い存在として扱われて嬉しくなり、そのことに邪な思惑であった男性も惚れてしまう短編「王子のたまごは雛に孵る」(←参照 カワイイ! 同短編より)、お互いに少し不器用で大人しい性格の男女が勇気を出した告白で結ばれてエッチも激しく求めあう短編「花結び」などが好例。
話のオチの付け方なども含めてコミカルさや微笑ましさの度合いは異なりつつも、エッチに至るまでの駆け引きやドタバタ模様などが作劇の面白さにつながっているのは共通しており、絵柄の性質もあってお馬鹿な展開でも何処か上品さを感じさせる雰囲気になっているのも一つの魅力でしょう。
  これに対して、もう一つの作劇のメインは、倒錯的な性愛や他者を惹きつける妖しい魅力を持った存在の虜になってしまうインモラル系であり、モテモテなイケメンボーイがドSな本性を発揮した地味系メガネガールの玩具にされてしまう短編「青春の隣に」、女遊びをしまくる男性社員に処女を奪われた地味系アラサー女子が彼をモノにするために密かに策を巡らす短編「はじめてのひと」などはこのタイプ。
AllWomenAreVenus2ヒロインまたは美少年の“本性”に気が付いたり、男性主人公のそれまでの考えや在り方が真逆なものに変容させられたりな瞬間の、読み手をぞわりとさせる表現は見事で、痴漢から助けた美少年の妖しい魅力に溺れていくお姉さんを描く短編「運命の電車」では(←参照 縋る様な瞳の美少年だが・・・? 同短編より)、彼の本性が明らかになる最終盤の展開を序盤とリンクさせた上で鋭く提示しており、唸らされました。
  いずれにしても短編作としてコンパクトにまとめつつ、印象的な展開が為されていることで、多彩な方向性それぞれの話としての魅力が打ち出されていて、それと密接にリンクするキャラクターやエロの魅力が高まっていると総括したい所存。

【お洒落感のある絵柄で描かれる多彩なキャラデザイン】
  女子校生級から子連れ未亡人な美熟女さんまで年齢層は広く、設定面の多彩さも併せてキャラによる描き分けも丁寧に為されています。
周囲の女子からカッコいい王子様扱いされながら可愛い服装にも興味津々の凛々しい系美人、溢れ出る母性と柔らかボディで普段は攻めまくる中年男性をバブらせてしまう未亡人さん、少し不器用で気が弱いがとっても優しくてピュアな女性、はたまたドSな様で隠れドMなインストラクターさんや、地味系処女ながらセックスに目覚めて男性を絡め取る魔性と妄執を身に付けたアラサー女子などなど、多彩なヒロインを擁しており、コミカルな作品でもダークなインモラルさを持つ作品でも、ヒロインの情動やリアクションが話の雰囲気を形成していることは共通。
決して凝ったキャラ造形やエキセントリックな性格付けをしているのではなく、喜怒哀楽、陰陽の感情に普遍性を持たせた上で、それらで駆動されていく展開の滑らかさや、逆に印象的な切り返し方でキャラの魅力を形成していくスタイルと感じます。
AllWomenAreVenus3  多彩なヒロインが登場することもあって、肉付き弱めでちんまりバストな口リ寄りのボディデザインもあれば、モンゴロイド的な健康的なムチムチボディ、スレンダー巨乳タイプにふわふわと柔らかな美熟女ボディ、適度に締まったスポーツ美人ボディなど(←参照 太股のむちむち感 短編「イニシアティブ」より)、体型には多彩な設定に由来するバリエーションがあります。
スベスベと柔らかさを感じさせる肌の質感や、適度に大粒な乳首やちんこに絡み付く秘所の媚肉の表現など、体パーツ描写にも十分な淫猥さを持たせつつ、クドさは無く、また雄弁に感情を語り出す瞳の表情付けの上手さはエロ・シナリオの双方に寄与しています。
  活動期間は長い一方でこれが3冊目であることから分かる通りにかなり遅筆な作家さんであり、初出時期は最大3年程度の開きがあるため、描線の強弱や修飾性の濃淡などには一定のバリエーションを感じます。とは言え、キャッチーさとお洒落感のバランスの良さ、陰陽の雰囲気を丁寧に浮かび上がらせる視覚的表現など絵柄単体で十二分な訴求力を有していることは共通しています。

【上品な絵柄とのギャップを形成するストレートな淫猥さ】
  作劇面に存在感を持たせつつ、導入パートは適切に整理されているため、エロシーンの占める割合は相応に高い一方で、全体のページ数がそもそも多くは無く、またエロシーン序盤の徐々に性的感情や行為やエスカレートしていく流れを重視した構築であるために、コアな濡れ場の尺はそれ程長くは無いため、抜きツールとして多少量的な物足りなさを感じる可能性はあります。
とは言え、この序盤でじっくりと興奮や性行為への没入を高めていくことで、終盤での勢いのあるピストン描写からフィニッシュへと一気に加速していく流れの威力を形成しているのも確かであり、和姦エロで共通しつつ、陰陽様々な感情のストレートな性欲がぐいぐい駆動していくパワフルさは特にフィニッシュシーン周りでの実用性を高めていると評し得ます。
  前述した様に瞳の表情付けの良さは、顔全体の表情の付け方とリンクしてエロシーンの雰囲気作りに大きく貢献しており、熱っぽく蕩けた表情付けやピュアさを感じさせる恥ずかしそうな表情、妖しく男性を惹きつける愉悦の笑みなどなど、行われている事とヒロインの立ち位置を関連付けて興奮を高めています。
AllWomenAreVenus4上品さを感じさせる洒落た絵柄でありつつ、露骨な結合部見せつけ構図や断面図、透過図などで挿入感を強く打ち出す上に、それらの描写を小ゴマやカットインなどで連続させたり、濁音メインの攻撃的な抽挿音と組み合わせたりと(←参照 ドチュッ❤ドチュッ❤ 短編「めおとくす」より)、性器表現やピストン運動の力強さを直球で打ち出す描写が多いのは、一つのギャップとして実用性に貢献。
  これらの結合部アップの小ゴマなども含め、ページ数が物理的にあまり多くないことを補うためか、比較的詰め込んだ画面構成になっていて、単行本になると特に小ゴマの見づらさが目立つことはあるものの、情報量の高さもありますし、肢体全体の表現やち○このカットイン、表情のアップなどが演出上の明確な意図を以て重なっていく画面構成には、しっかりとした技巧を感じます。
敢えて解像度を下げたような、描線が荒く太くなり、激しく乱れた痴態を表現するフィニッシュは、表情付けや台詞回しを含めて十分な密度をアタックを以て、中出しされながらアクメを迎えるヒロイン達の姿を中ゴマ~1Pフルで描いており、ややあっさりめの前戯パートでの射精シーンに対し、オーラスらしい盛り上がりが図られています。

  抜きツールとしての量的な物足りなさは多少ありますが、多彩な作劇それぞれの良さと、ヒロインのキャラデザ・キャラ立ちの良さ、程好い濃厚感と情報量の多さで魅せるエロと三拍子揃った作品揃いで、特に雑食派の諸氏には強くお勧めしたいところ。
個人的には、メインヒロインの魅力で青春ラブコメとして楽しませてくれる短編「王子のたまごは雛に孵る」と、ラストで唸らされたインモラル系の短編「運命の電車」が特にお気に入りでございます。