Pigsty  野田サトル先生の『ゴールデンカムイ』第16巻(集英社)を読みました。鯉登少尉、軽業師としての意外な才能を発揮していましたが、杉本への仕返しとして手品用の刀を真剣にすり替えるというトンデモをさらっとやらかしていて、やっぱりこの人もヤバイと思いましたね。
あと、なんか変な方向に情熱が行っていた谷垣の姿には笑いました。

  さて本日は、オイスター先生の『豚小屋』(メディアックス)のへたレビューです。なお、先生の前単行本『肉穴苦界』(同社刊)のへたレビュー等もよろしければ併せてご参照下さい。
絶望的な狂気に飲み込まれていく破滅のストーリーと凄惨さを感じさせる凌辱描写が強烈な印象を残す長編作となっています。

Pigsty1  収録作は、彼氏と旅先で山中を散策していたヒロイン・珠緒は、言動がおかしい少女とそれを追ってきた男達に出会い、その男達に凌辱されると共に“病人”を収容し、“治療”を行っているという廃病院へと監禁され、彼らが“治療”と呼ぶ調教や肉体改造をされてしまうことになる長編「愚者の石」全9話(←参照 医院長先生です 同長編第2話より)。
1話当りのページ数は20~24P(平均22P)と標準的なボリュームで推移。内容の性質もあって非常に重い読書感の長編であり、量的にも十分でありつつ、質的な面でも強烈な存在感のある性描写と合わさって、読み進めること自体に良くも悪くもしんどさを感じさせる構築となっています。

【理性が狂気に押し潰される恐怖と理不尽】
  突如として狂気と暴力の閉鎖空間に囚われてしまう理不尽さは、この作家さんお得意の要素であり、廃病院という舞台設定なども含めてホラー作品としての魅力を有したタイプ。
暴力的な描写やゴアめいた描写でも狂気や恐怖を感じさせますが、凌辱行為を“治療”と信じ、監禁された者達の生殺与奪を握る者達が、言葉は通じるが意思疎通は全く出来ない存在であり、彼ら彼女らに囲まれ、狂気を一方的に叩きつけられ続けるという構図で恐怖感や絶望感を生み出しているのが特徴です。
Pigsty2当初は周囲の異常な言動や理不尽な監禁に対して、抵抗し拒絶し嫌悪していたヒロインが、徐々に正気を保てなくなっていくことをモノローグや言動で表現し、最終的に自分が“病気”であり“治療”が必要なことを受け入れてしまうという(←参照 “私は本当に病気になってしまったんだ” 長編第9話より)、自分の精神を保つために“自分が自分でなくなる”という恐怖や理不尽がストーリー全体として形成されています。
  作劇全体の骨組みはヒロインの変容でありつつ、彼女が何回かの失敗の後に成功させる監禁からの逃亡とそこからの展開によって話としての起承転結が為されていますし、全てを主導する監護長(誤字ではない)が絡むエピソードなども、読書感を一本調子にしないことにつながっています
その一方で、監護長や新しく医院長となる少女・みなも、彼女達に従う男達など、ヒロイン以外のキャラクターの大半は狂人であって、ヒロインにとっても読者にとっても理解不能なロジックを振り回し、患者の笑顔や病気の治療といった目的を真に信じながら、暴力と薬物をまき散らしていく支離滅裂な姿に、得体のしれない存在への恐怖があって、スムーズには読ませてくれない話運びとも感じます。
  凌辱エロとしてのハードさに加えて、この理不尽な狂気に押し潰されていく圧迫感や恐怖感があるため、精神的に不調な時には読まないことをお勧めしますが、当然のバットエンドへと向かって、丁寧に理不尽さを突き詰めた作劇にはこの作家さんらしい凄味があると評したいところ。

【狂気の表現に凄味のある登場人物達の描写】
  最初に出会った少女を含め、多数のモブヒロイン達もハードな凌辱をされ続けて地獄絵図な風景を形成していますが、基本的には珠緒をメインヒロインとして主軸にしつつ、前述した監護長やみなもがサブヒロインとしてエロシーンも用意されています。
何の落ち度も無いのに突如として地獄に叩き込まれ、狂気と快楽に染め上げられていく珠緒が理不尽に晒されるという点で当初は読者側に近い立ち位置であるのに対し、登場時点で既に常識的な思考を持たない監護長とみなもは読者の理解を拒む立ち位置であって、双方の会話の成立のしなさ加減も、ホラー的な怖さにつながっています。
  なお、オイスター作品ではカップルの彼氏君は大抵酷いことになってしまうのが常ですが、本作でも暴力を振われ、薬物を使われてセックス中毒にされた上で、ヒロインの精神崩壊の引き金になる立ち位置でかなり凄惨な末路を迎えますが、他のキャラクターのキャラが立ち過ぎていることもあって意外に目立ちません。
また、その他の男性キャラクターは異常な言動な狂人タイプか、息をするように暴力を振える悪人タイプしか登場せず、この連中の言動を追うだけでも嫌悪感や恐怖感を読み手に抱かせる仕組み。
Pigsty3  元々スレンダー並乳ボディであった珠緒ちゃんは、物語中盤で母乳も出る爆乳ボディへと肉体改造されてしまいますが、監護長とみなもちゃんについては二人ともスレンダー貧乳ボディであり、それぞれ清楚な大人ボディと華奢なロリボディとして表現(←参照 監護長による医院長としての資格試験 長編第6話より)。
  ハードな演出を伴う凶悪な絵面が多いこともあって、一種のアングラ感が強い画風とも感じますが、十分な作画密度を保つ絵柄そのものは、黒髪美少女&美人の清楚な色気感を打ち出せるなど、比較的シンプルな筆致で美しさ・可愛さを表現するスタイルとも感じます。

【過激なエロ演出&ハードな行為を叩き付け続ける凌辱エロ】
  エロシーンの占める割合が十二分に高いことに加え、強烈な演出や過激な行為が描かれている為に性描写にはページ数以上の質的なボリュームを感じますし、ある意味では“目前の恐ろしい光景が早く終わって欲しい”と読者に感じさせるような濡れ場でもあります。
冷静な様で一番狂っている監護長さんがお気に入りの玩具である医院長に薬物を打ってセックス強要というパターンもありつつ、メインヒロインを中心として女性キャラに対するハードな凌辱が繰り返されており、理性や良心が働いていない存在に蹂躙される恐怖感や絶望感を基調とするタイプ。
  上下前後の肉穴を好き勝手に蹂躙するハードなピストンに強烈な勢いを持たせた上で、爆乳化や陰核の肥大化、ピアッシングといった肉体改造、性器や肛門のむごたらしい拡張、異常なサイズの巨根や性玩具などの挿入にフィストファック、薬物の投与など、アブノーマルでハードなプレイが多く、またゴア的な要素やスカトロ要素が絡む描写もしばしば投入。
Pigsty4複数の男にもみくちゃにされ、母乳や精液、涎に尿など各種液体で汚れていく肢体の存在感、快感と痛覚が入り混じる強烈な感覚に悶絶し、白目を剥く表情付け、言葉にならない絶叫や精神の均衡が崩れての笑い声(←参照 長編第5話より)、剛直が最奥まで無理矢理侵入することを強調する断面図など、過激で強烈なエロ演出を重ねており、常にインパクトのある画面が続いていきます。
  そのようなハードな性行為にもヒロインが性的感覚を覚え、そのような行為でないと満足できなくなっていく様子は、堕ちモノ系としての王道的要素ではありますが、ヒロインにとって性行為とその感覚が、悪い意味で心の拠り所となっていく流れもあって、性的充足の高揚感・解放感などはむしろ希薄。
一貫して凶悪なエロ描写を連続している分、フィニッシュで特段の盛り上げを図る必要がない構築ですが、狂気を感じさせる台詞や一方的な侮蔑を投げかけられながら、強烈な感覚に脳髄を支配されたアクメフェイス&絶叫を晒して白濁液を注がれるヒロインの痴態には、〆としての強烈な存在感があります。

  ホラー的要素の強い作品を得意とするオイスター先生らしい長編であり、繰り返しになりますが、理不尽である故の怖さはホラーならではの醍醐味。
作劇・エロの趣向共に好みが激しく分かれるタイプですし、濃密な狂気の波状攻撃は読者側もメンタルに注意して読むべきと感じますが、同時にそのことが確たる魅力でもあると言えるでしょう。