InsideTheSexualPlay  吉田基已先生の『官能先生』第2巻(講談社)を読みました。“ハートの勃起としてのパッション”“他愛無い会話の中の清らかな愛情の交流”など、おっと思わせる言い回しで鮮やかに切り込んでくる筆致は見事。雪乃さんとの恋路も大変すばらしいですが、若い津永氏に「わかるよ!」と言葉にした鳴海先生の姿にぐっときましたね。

  さて本日は、kanbe先生の『痴戯のナカ』(ワニマガジン社)のへたレビューです。これが2冊目となる作家さんで、管理人は初単行本『いじりもん』(同社刊)は既読なもののレビューを書けていなかったのですが、今回は絶対に評を書かねばと思わせてくれました。
劇薬としての性的快楽に駆動される衝動的な展開と陰陽入り混じる生々しい官能性に浸されたエロシーンとが楽しめる作品集となっています。

InsideTheSexualPlay1  収録作は、ある少年と少女が茂みの中から性行為中の男女を興味本位で覗き見していたところ、覗きが彼らに露見してしまい、代償として彼らの目前でセックスをするように要求されるのだが、そのことを決心できなかった二人を待つ運命と、彼らを介して強烈なセックスへの耽溺・渇望が次第に他者へと感染していく中編「茂み、繁み」シリーズ全4話(←参照 過去にあるものを奪われ、あるものを植え付けられた少年の渇望は続く 同シリーズ第2話「茂みの囀り」より)、および読み切り形式の短編6作。短編群の一部の作品は舞台設定が共通しているようですが、話としては独立しています。
フルカラー作品である短編「ないないこそこそ」(8P)を除き、1話・作当りのページ数は16~24P(平均21P弱)とコンビニ誌初出としては平均を上回るボリュームで推移。短編作中心ながら、サクサクと軽いタイプのものからずしりとした重たさを感じさせるタイプまで読書感の軽重には幅があり、その上で十分な濃度を持たせたエロシーンを適度な満腹感の分量で提供しています。

【得体のしれないものとしての性的快楽のドラマ】
  前単行本でも微ダーク系であったりアモラルな香りがあったりな作品は明確に存在していたものの、全体的に雰囲気は軽めではあり、今単行本で言えば心底世話焼きな幼馴染さんによってダメな夢追い人が更生?する短編「夢肥える」やほのぼのとした上下関係や少年のエロ的逆襲を描く短編「狛子がまいった」といった軽い読み口のラブコメ系がメインという印象ではありました。
ダーク&インモラル系の作品でも、ラブコメ系でも起承転結のまとまりの良さや、話のオチの付け方・コメディとしての転がし方の上手さなど、作劇面での安定感は初単行本からあって今単行本のラブコメ系も含めて、小粒ながらウェルメイドでありながら、悪く言えば、それ程強い印象を残すタイプではないとも個人的には感じていました。
InsideTheSexualPlay2  今回は、ウェルメイドと感じさせる作劇の安定感は保ちつつ、要所要所で読み手の胸中へ鋭く突き込むような暗く重いエモーショナルさを備えた作劇が強い印象を残しており、性的快楽というものを、人を変容させる劇薬であり、一度その味を覚えれば抗すること能わず求めてしまう麻薬であり、人から人へとその酩酊が伝播していくものとして、ある種の凄味を伴った筆致で描き出しています(←参照 短編「情欲症候群」より)。
殊に「茂み、繁み」シリーズはこの路線において出色の出来栄えと言え、たまたま他人の青姦を覗き見たために、性愛の深淵に少年と少女が飲み込まれ、それがその周囲の人間にも伝染して、自らの欲望を曝け出して貪欲に貪り絡まり合う姿へと変容していく流れは、登場人物達の充足への渇望とその衝動性が場を支配していく流れに唸らされます
個々の作品を短編として見ても十分な出来ですが、これらの状況が連鎖していくシリーズ作としたことで、性的快楽というものの強烈さと理不尽さ、そしてそれと密接に関連する人間の在り方のままならなさを表現できていると個人的には感じます。
  ラスト1~2Pで話全体の印象をガラッと変えてくる短編「情欲症候群」「私をおして」やラブコメ系のハッピーエンドも含め、話のまとめ方の仕掛け方もうまく、単純なハッピーエンドでもバットエンドでもない「茂み、繁み」シリーズ各話のラストを含め、読後に残るもやもやとした感情にこそ魅力がある作劇と評したい所存。

【表現力豊かな絵柄で描かれる多彩な美少女キャラクター】

  「茂み、繁み」シリーズ第1話のヒロインであるローティーン級と思しき少女や、短編「夢肥える」に登場する20代後半~30歳前後と思しき美人さんなど上下に例外を有しつつ、基本的には女子校生級の美少女さん達がヒロイン陣の主力となっています。
  強気で主人公をからかう幼馴染ヒロインや世話焼き系幼馴染さんなど、ラブコメ系における棚ボタ的な展開を担うキャッチーな造形のヒロインに加え、インモラル系の作品でもやはり幼馴染ヒロインや優等生なメガネっ子、ギャル系美少女さんなど、相応にキャッチーさのある造形・性格付けのヒロイン設定が揃っています。
そういった魅力的な女の子達がエッチな本性・本音を曝け出して~というのは、棚ボタ的な展開を可能にするエロ漫画的にオーソドックスな要素ではあるのですが、今単行本では、性愛の解放感と同時に、性愛に魅入られた者の“得体の知れなさ”も同時に醸し出されているように思え、その理解不能性に魅了されて飲み込まれていくような印象があります。
InsideTheSexualPlay3  ロー~ミドルティーン級の様に思えるヒロインでは、肢体の小ささや華奢さに加えて、バスト&ヒップのボリュームを抑えて全体的に未成熟感を打ち出していますが、基本的にはむちっと柔らか弾力の巨乳に安産型ヒップ(←参照 短編「オトナ合格」より)、太股などの各体パーツのマッスがたっぷりな肉感ボディがメイン。
絵柄の幅に伴うキャラデザインの幅もあって、体パーツ描写の淫猥さなどにも作品間で差異がありますが、おっぱい関連の描写は乳首・乳輪の主張控えめな美巨乳としてまとめつつ、もじゃっとした陰毛描写や髪の毛の乱れの丁寧な描写、淫液に濡れる舌や秘所の生々しさなど、程好く濃口の淫猥さを感じさせる女体としてまとめることが多い印象。
  細めの描線でキャッチーなアニメ/エロゲー絵柄系でまとめることもあれば、描線に荒々しさを感じさせる絵柄であったり、繊細さと勢いが両立し、描き込み密度の高い絵柄もあったりと、同一の作家さんが比較的短いスパンの間で描いたものとは感じにくい程、絵柄の印象は様々。絵柄の統一感を求める諸氏には不向きかもしれませんが、いずれの画風も作品の雰囲気と大変にマッチしており、むしろ絵柄の使い分けとして個人的には高く評価したいポイントです。

【快楽への強烈な渇望で没入する快楽の沼】

  作品によって、セックスに至る流れのタメを重視するケースもあれば、衝動的な流れや意外な急展開によって濡れ場へと即座に突入するケースもありますが、概ね濡れ場には十分な尺を有しており、抜きツールとしての満腹感のベースを形成。
  寝取られ要素であったり、支配-被支配の調教的な関係性であったり、凌辱的な要素があったりするエロシチュが多いのは、前述したダーク&インモラル系の作劇に合わせてのものですが、単に性的欲望がストレートに発揮されるというよりも、自身の目前の相手を、それとの性交による快楽を得なければ、自身というものが消え失せてしまうかのような切迫した渇望が強烈な衝動性を以て場を支配しているように感じさせる気迫があって、レゾンデートルとしての“生としての性”を、緊張感を以て漲らせているように感じます。
  シックスナインに脇舐め、パイズリにねっとりディープキス、乳揉みにオナニーショーなど、多彩なプレイ内容を有する前戯パートは、状況・設定に合わせたプレイをチョイスしつつ、抽挿パートへの移行としての役割も含めて、興奮・快楽のエスカレートとしての流れをしっかりと形成。
InsideTheSexualPlay4そこからの挿入および抽挿によって、体と体がつながることによって、強烈な快楽とそれが生み出す何らかの特殊な関係性と充足が、他を以て替えがたい強烈な快楽と価値を生むというスタンスによって、抽挿パートの男女の熱狂に読み手を有無を言わさずに引き込む熱量を含ませていると評し得るでしょう(←参照 中編シリーズ第1話「茂みを覗いて」より)。
  比較的小コマが多く、個々のコマ単体での強烈なアピールがあるタイプの画面構成ではないものの、絵柄の方向性の如何を問わず、生々しさを伴った表情付け液汁に濡れる女体や結合部の描写、絡み合う男女の肢体の密着感といった要素でじっくりと煽情性を練り上げていくスタイルで、演出そのものより構成でアタックを高めていくタイプ。
殊更にフィッシュシーンでの盛り上げを図るタイプではなく、縦長コマや小ゴマなどの変則的なコマで中出しフィニッシュを描くことも多いですが、高めに高めた性的快楽が絶頂によって一気に放出されるような感覚がある分、抜き所としての鮮烈さを十分に有した終盤展開と評し得るでしょう。

  前単行本でもその才気の片鱗を示しつつ、今単行本ではそれを十全に花開かせたと感じさせる内容で非常に頼もしく感じた次第。感情と欲望の奥深さが、ストーリーとしても、また抜きツールとしての実用性にも、大きく貢献しています。
個人的には、「茂み、繁み」シリーズの「茂み」2作、ラスト1Pの仕掛けに思わずため息を漏らした短編「情欲症候群」が特にお気に入り。読ませるエロ漫画をお求めな諸氏にお勧め!