
タイターニアの言うカジワンが持つ“とても危険な思想”とは何なのか気になる展開になってきました。
さて本日は、カエデミノル先生の初単行本『コットンひゃくぱーせんと』(ティーアイネット)のへたレビューです。全く性的でないはずの言葉が特定の層にとってのエロさを醸し出すというナイスアイディアな単行本タイトルですね。
それはともかく、愛らしい方言ガールズ達との甘く優しく、そして何処か郷愁を掻き立てるラブ&セックスが詰まった作品集となっています。
収録作はいずれも読み切り形式の短編で計7作。1作当りのページ数は24~36P(平均29P強)と標準を上回るボリュームで推移。短編群ながら個々に十分読ませる雰囲気作りの上手さがあり、その上で十分な分量のエロシーンを搭載した構築となっています。
【美しい日本の風景と思春期の恋の情動のリンク】
大雑把にまとめてしまえば、キュートなアリス達との甘く優しいラブエロ模様なハッピーロリータ系とも言えるのですが、その表層からより奥行きのある作品であり、主人公の男性達の過去をめぐる感情や、思春期入りたてな少女達の成長や純粋な恋愛感情などが丁寧に折り重なっていく様子を描き出しています。

カバー裏の作品解説に多数並べられた、着想元の映画・小説作品の数々のお洒落感に圧倒される部分はあり、作品にもそれらのエッセンスが感じるものの、その一方で小難しさやテーマ性への偏重という印象はなく、登場人物たちの心の動きを語り過ぎない筆致で、優しく紡ぎ上げていく心地よさは幅広い層にとって好ましく感じる点でしょう。
後述する様に、ヒロイン達はその土地々々の方言を話しているのですが、これが単に属性付け・萌え要素的なものではなく、それぞれの土地に生きる者としての表現につながっており、少女達との性愛におけるつながりが、ある意味では産土という大きな物語の中で承認されるものとして、少女性愛の禁忌を超越した普遍的な幸福をもたらすものとして描かれていると評しても過言ではないと感じます。

【ピュアな心と未成熟な肢体の成長中方言ガールズ】
岩手の民宿に現れた座敷わらすの女の子を例外としつつ、彼女の見た目も含めて小○校高学年~中○生クラスのローティーン級ガールズ達で統一されたヒロイン陣。
前述した通り、各地の方言をしゃべる女の子達であり、人によっては“故郷の訛り懐かし”的な魅力も勿論あるでしょうが、前述した様に、シナリオワークの中でそれぞれの土地に根差して生きる存在としての精気と、それに寄り添うことのできる安心感が醸し出される要素として方言が生きている印象があります。
その方言要素も含めて、ある種理想化された少女像であるのは漫画として確かなことですが、とはいえ、喜怒哀楽のチアフルさ、大人からの“子供”としての定義から抜け出そうとしている年頃の心持ちは彼女達に伸び伸びとした人間性を感じさせることに貢献しており、ヒロインをあくまで確固たる“個”として扱う姿勢は明瞭と感じます。
ぺたんこ~膨らみかけバストに、薄目の尻たぶだけに柔肉が載った尻、パイパン仕様で一本筋が走る股間が組み合わされた体幹も四肢もほっそりとした印象の女体は、ある種の儚さを持って、その時にしか存在し得ないバランスの女体を形成。

初出時期の開きが最大6年もあるため、細かい部分での絵柄の変化はあるものの、初期から既に完成された絵柄と評してもよく、表紙絵ではやや描線が綺麗にまとまり過ぎという印象はありつつも、フルカラー以上の情報量や表現力のあるモノクロ絵で、ヒロイン達のエロ可愛さを存分に引き出し、かつ風景描写も含めた高い作画密度で安定していると言えるでしょう。
【小さな肢体が熱っぽく蕩けて濡れるエロシーン】
各話に十分なページ数があることもあって、エロ描写の総量は相応に多く、前戯パートもしくはコアな濡れ場の前振り的なエロ描写にも適度な尺を割り振った上で、互いの感情が迸るエロシーンにエモーショナルな勢いをつける構成となっています。
状況こそ各ヒロインで異なりつつも、彼女達が恥ずかしがりながら勇気を出して初めてのエッチに挑戦する前向きさは共通しており、その上で安直な棚ボタシチュエーションではなく、相互の気持ちが通じることで得られる境地・快感があるというある種健康的なスタンスが、少女性愛の背徳感と合わさって、ユニークな雰囲気を形成しているのが全体としての大きな特色と感じます。
少女たちの羞恥と快感を同時に引き出しながら、華奢なボディへの愛撫や無垢な表情付けのままのご奉仕プレイなどが味わえる前戯パートは、十分に長尺ながらもここで抜き所を設けるというよりかはむしろ抽挿パートへと次第に興奮が高まっていくことに注力した展開。
導入パートも含めて非常に技巧的なコマ使いをするスタイルであり、エロシーンにおいても中~大ゴマの威力を生かしつつ、結合部や表情のアップなど付随する小コマを多数用いて密度を打ち出すスタイルで、ページ数以上の情報量を打ち出していきます。

大ゴマ~2P見開きで提供する中出しフィニッシュは、演出面でヒロインの痴態に適度な盛り上げを図りつつも過剰さを排したスタイルであり、セックスが終わった後の二人の睦みあいにスムーズにつなげる流れに、独特のカタルシスと安堵の両立があるタイプと評したい所存。
エロシーンも含めて、登場人物達が自身の存在を認証されようとする普遍的な欲望が自然と表出する流れに魅力があって、それがそれぞれの土地に息づく郷愁と相まって、読み手を作中に引き込む力がある作品揃いだと評したいところ。
個人的には、作中では“姉”の存在を匂わせながら明確な記述を避けつつ、星の光と村の今後を組み合わせつつ、日本の夏の情景を描き出した短編「天の川ドップラー」に痺れました。お勧め!