
さて本日は、コバヤシテツヤ先生の(成人向け)初単行本『牝豚、ぶち犯す!!』(クロエ出版)のへたレビューです。ほのぼのとした雰囲気の『まんがタイムきらら』系列の四コマ漫画作品を描いておられた作家さんなのですが、何がどうしてこうなった感は正直あります。
それはともかく、悪意と狂気が支配する中でヒロイン達が苛烈な性的行為とバットエンドに沈み込んでいくハードな凌辱・寝取られエロとなっています。

描き下ろし作品を除き、1話・作当りのページ数は20~34P(平均28P強)と平均値としては標準を上回るボリュームで推移。シナリオワークとエロとが絡み合った上でストーリーとしてもエロ描写としても強烈なインパクトを叩き出しているのは間違いありません。
【ヒロインの幸福と尊厳を踏み躙る無慈悲な凌辱展開】
表紙絵と単行本タイトルから察することが出来る通りに、明確な凌辱エロであって、ソリッドな欲望や悪意がヒロインをどん底に突き落としていくダーク&ヘビィな作劇が連発されており、この路線で貫き通した著者の胆力を先ずは称賛すべきと感じます。
荒れた生活から救い出してくれた旦那と幸福に生きていくことを誓った女性が、過去の男に玩具にされ、幸福な関係をズタボロにされ、凄惨な結末を迎えることになる凌辱&寝取られ作品である中編シリーズを筆頭として、単に性的欲望によって身体が蹂躙されるだけでなく、ヒロイン達のアイデンティティや登場人物の善意が損壊させられる故の胸糞悪さが充満しています。

ストーリー序盤でコミカルな雰囲気を打ち出すこともあるのですが、そこからの地獄絵図への転落に対するある種の前フリであって、ストーリー展開における前フリとしてのタメには欠けますが、“上げて落とす”的な効果は相応に発揮されています。
いずれも明確に将来への禍根と惨禍の継続を示すバットエンドで閉められており、当人たちだけであればまだしも善良な人間や次世代にも悪影響を残す故の後味の悪さは非常に強く、凌辱系の作品に耐性がある諸氏も精神的に不良な時には読まない方がよいでしょう。
【美から醜へと変容していくスレンダー巨乳ボディ】
登場人物の年齢層としては20代半ば~後半クラスの綺麗なお姉さんタイプと、概ねハイティーン級と思しき美少女さんとに分けられ、それほど明瞭な年齢的描き分けはないものの、前者は落ち着いた色気感を、後者は若者らしい華やかさを持たせたキャラデザインとなっています。
過去を断ち切って新たな幸福をつかもうとする女性、愛する旦那の赤ちゃんを欲するあまりに変態チックなプレイに挑戦な兄嫁、お兄ちゃんラブな妹ヒロインに巫女さんに憧れるピュアな美少女と、ヒロイン陣はそれぞれ善良さを感じさせるタイプで、それが序盤ではコミカルな雰囲気にもつながることもありますが、基本的には前述した極悪人達には良い餌食とされてしまいます。
すらりと伸びた美脚もあって等身高めのスレンダーボディに巨乳&桃尻&比較的濃いめに陰毛の茂る股間を組み合わせた女体設計が基本であり、しなやかな印象が先行するもののボディの凹凸が比較的ハッキリしている分、バランスを整えるというより各体パーツの主張を目立たせるタイプと感じます。

比較的角度をつけたシャープな描線で独特の萌えっぽさとデフォルメ感を形成する絵柄は、なるほど00年代にきらら系列で活躍した作家さんらしいと感じるタイプのものですが、そこに適度な重さ・濃さを重ねることでTI/クロエ系らしい絵柄になっていますし、全体的に重苦しい作劇の雰囲気ともよくマッチしています。
ただし、表紙絵のフルカラー絵と中身の絵柄には一定の差異を感じますので、店頭であれば裏表紙を確認することをお勧めします。
【凶悪なレベルで塗り込められるハードな演出と行為】
明確にエロメインの構築であり、またエロシーンの進展や行為の過激化そのものがストーリーラインを形成していることもあって、作劇との相乗効果で性描写のインパクトを高めることに成功した構築となっています。
凌辱エロとして一貫させつつ中編シリーズや連作など寝取られ系のエロシチュを組み合わせた作品が目立っており、ストレートな欲望の炸裂以上に、ヒロイン達の女性としての、また人間としての尊厳を踏み躙るような構図が目立っており、後述するプレイ内容の過激さを相まって、読み手を強く篩分けするタイプのエロシーンと言えます。
輪姦、イラマチオ、首絞めセックス、異物挿入によるアナルや性器の拡張、女体への噛みつき、出産ショーや脱膣などなど、プレイ内容としてもかなりハードなものが揃っており、苦痛と快楽とが混じり合った上で、両者が判別不能なただただ強烈な感覚がヒロイン達の身体を猛然と駆け抜けていくアグレッションで濡れ場をゴリゴリと推し進めています。

兎角、勢いで押しまくる分、エロシーンとしての緩急や抜き所へのタメの確保といった部分で不足を感じることはあるものの、過激で過剰なエロ演出を伴う、激しい行為が否応もなく継続されていくシークエンスには猛烈な勢いがあるのは間違いなく、実用性の高低は読み手の嗜好に依るとしても、ヒロイン達を待つ苛烈な末路が如何なるものなのかという不安・哀悼によって読み手の意識を引き付け続けるエロシーンになっていると評し得ます。
中出しフィニッシュでのオーソドックスな畳み方とは異なり、様々な形式で狂気や憎悪、悪意が噴出するラストとなっており、この点も読者によって評価が割れる点だとは思いますが、ともかく強烈な感覚にヒロイン達が支配され、悶絶しながら精液を内に外に浴びる無様な様子を提示して、過酷な展開の一応の〆としています。
かなり読み手を選ぶタイプの作品揃いで、例えばhal先生などに近いタイプの狂気性・苛烈さを感じる作劇・エロシーンでした。
個人的には、実用的読書に使いやすいとは思えなかったのですが、とはいえ、寝取られエロと凌辱エロのハイブリッドにして、当然そうあるべきの破綻が最終盤で凶悪に炸裂する中編シリーズに度肝を抜かれました。