TimeForCopulation  ヤマザキマリ先生&とり・みき先生の『プリニウス』第7巻(新潮社)を読みました。本作で描かれる皇帝ネロ、“愚か”なのかもしれませんが極めて“人間的”であって、彼の狂騒には同情の念も湧いてきます。
一方、プリニウス一行はピラミッドで『インディ・ジョーンズ』ばりの大立ち回りでございました。

  さて本日は、駄菓子先生の『交尾の時間』(ワニマガジン社)のへたレビューです。なお、先生の前単行本『契りの家』(同社刊)のへたレビュー等もよろしければ併せてご参照下さい。
淫液に塗れながらひたすらに快楽を貪る激しいセックスを非常に濃密な描写&演出で描き出す強力な抜きツールとなっています。

TimeForCopulation1  収録作は、付き合い始めて数か月のピュアな少年少女のカップルが秘密基地で初めてのセックスに挑戦して互いにすっかり夢中となるタイトル短編「交尾の時間」(←参照 ドキドキ初エッチ 同短編より)+描き下ろし後日談(1P)、その他読み切り形式の短編10作。なお、短編「ベールの奥は」「Golden Days」「マンキツ」については、描き下ろしの後日談イラストが1~2P付属。
描き下ろし作品を除き、1作当りのページ数は8~22P(平均18P強)と、書店売り誌である『X-EROS』に移籍後もコンビニ誌掲載作並のボリュームで推移。作劇自体の存在感は希薄ですが、話とセックスの流れの中で形成される雰囲気の濃密さと、エロ描写の質的な満腹感の圧倒的な高さで満腹感の強い仕上がりとなっています。

【堰を切って溢れ出す性欲の奔流に飲み込まれる作劇】
  今回も強烈にインモラルな香りを放つ表紙絵ですが、エロシチュとして一定の背徳感やスリルを感じさせるものはありつつ、カテゴライズとしてはラブエロ系や棚ボタ的なエロ展開などが目立つスタイル。
その一方で、恋愛ストーリーとしての甘ったるい幸福感や青春コメディ的な楽しさをメインとした作劇ではなく、好き合う者同士の平穏な日常から、双方が欲望を解放した時に快楽を求める貪欲さが全てを飲み込む濁流の如く走り出す変化が、性的欲望の根源的な強烈さを感じさせ、また非日常に包み込まれていく妖しさ・背徳感を打ち出すことで、アモラルな様相を呈しているのも確か
TimeForCopulation2この日常から非日常へと移り変わる時の、登場人物たちの“スイッチ”が入った描写は相変わらず秀逸で、そこまで微笑ましい睦み合いや穏やかな会話をしていた男女が、一気に性的な存在へと豹変する様な切り替え方は(←参照 久しぶりに会った遠距離恋愛のカップルが 短編「ミルキィウェイ」より)、ある種読み手の意表を突くものであって、後述する濃密なセックス描写へと問答無用で牽引してくるパワーとテクニックがあります。
  ドスケベなサキュバスさんとのエロ的攻防を描く短編「夢ごこち」、童貞を喰ってくれた先輩美人の本性が明らかになる短編「フォーリンエンジェル」など、ラブエロ系よりインモラル系の性質が強い作品もありますが、“ダークさ”はないタイプの作品であり、平和なまとめ方のラブエロ系と印象の差異はあまり感じません。
  ページ数の関係もあって、ストーリーの展開の面白さやドラマ性には明確に欠けますが、“目前の性的快楽に無我夢中になる男女”という単純なようで、作劇としてそのシンプルさを突き詰めるのは意外に難しい様相を、普段の姿とはまるで異なる、男女の淫猥な姿と激しい絡みで視覚的に表現しきった作劇であると評したい所存。

【一定の生々しい官能性のある美少女&美女の女体表現】
  女子校生級の美少女さん複数名に加え、女子大生クラスの綺麗なお姉さんや20代半ば~後半程度のアダルト美人なども登場しており、瑞々しい思春期ガールズと成熟した色香のある美人ヒロインには一定の描き分けがあります。
  男嫌いな清楚でお堅いお嬢様、内気で大人しい地味な目隠れ女子、喧嘩をすることもあるが旦那さんラブな人妻美人に地味な容姿の女教師、初々しいカップルの制服女子などなど、美人や美少女ではありつつ、どちらかと言えば派手さや華やかさがないタイプの女性が、エロシーンでは一気に根源的な欲望・淫猥な本質を曝け出すというキャラメイクが真骨頂と評し得るでしょう。
前述した様にシナリオパート自体が短いため、キャラの掘り下げという意味では不足も感じますが、この“変容”のインパクトをごく短い尺で表現して見せる技量は間違いなくキャラクター描写の巧さと言えます。
  年齢層に幅があることもあって、並乳クラスのキュートボディなJKヒロインもいれば、爆乳クラスの豊満バストをお持ちなグラマラス美女までボディデザインには一定のバリエーションがあり、いずれもバスト&ヒップを中心としたもっちりとした柔らかさが女体のエロさを増幅。
TimeForCopulation3また、肢体全体のバランスを保ちつつも“綺麗な女体”に収めるのではなく、ヌルヌルとした淫液とそれが絡み付く柔肌の質感、柔らかさ故にだらしなくたわむ乳房や尻肉の表現や、毛の一本まで丁寧に描く容易な淫猥な陰毛描写に、一定の生臭みを感じさせるような性器描写など(←参照 短編「記念日情事」より)、オスの興奮を誘うプリミティブなエロさを丹念に練り込んだ“メスの体”として形成していると評したいところ
  後述する各種エロ演出も含め、非常に作画密度は高く、また黒やそれに近い色の重みが効いたモノクロ絵であり、それらの暗さの中で浮かび上がる柔肌の白さの淫靡さや、髪や瞳の艶やかさなど、陰陽のコントラストで魅せる精緻な絵作りは、表紙絵に示される以上のクオリティを以て、単行本を通して安定しています。

【濃密なエロ演出で彩る汁だく貪欲セックス】
  ページ数の都合上、たっぷり長尺とは言い難い分量の濡れ場ではありますが、前述した様に一度エロシーンへと雪崩れ込めば、快楽に飲み込まれ、更なる快楽を求めて悶え乱れ、体中を濡らす淫液を介して両者の体が溶け合うかのような濃密で貪欲なセックスが怒涛の勢いで展開されることで、非常にハイカロリーなセックス描写となっています。
  学校の教室や漫画喫茶での羞恥セックス、配信用のエロ動画撮影をしながらドスケベお姉さんに搾られるシチュ、乱交セックスなど、インモラルな要素を含むシチュエーションもありつつ、恋愛セックスも含め、それらの状況やら建前など関係なく、目前の肢体と快楽にこそ夢中になっているというエネルギー感が身上
  前述した淫猥な液汁描写と粘膜描写の組み合わせは前戯パートで強力な武器となっており、美少女&美人が淫猥な表情でちんこにむしゃぶりつき、下品な水音を立て、白濁液を顔面に浴びるシークエンスや、ねっとりとした愛液を溢れ出す秘所へのクンニや手マン、そして艶っぽい唇と舌を密着させるキス描写などの濃厚さで盛り上がりを図ります。
  この前戯パートも含め、やや駆け足という印象はありますが、小ゴマや視点を引いた構図を含めて、効果的な配置と連続描写で視点を引き付け、かつページ単位での情報量を常に多く見せる構成とで十分なタメを作れるのは間違いなく美点であって、既にぐしょぬれの秘所に挿入して激しく腰を使い合う抽挿パートもページ数以上に長く感じさせます。
TimeForCopulation4瞳の焦点を失ったアヘ顔チックな表情付けに、涙や涎でぐしゃぐしゃになり蕩けきった表情、体中を濡らす汗や精液、秘所から漏れ出す黄金水、もはや言葉にならないまま連呼されるハートマーク付きの嬌声に勢いのあるピストン描写と、“静”として魅せる描写の濃厚さと“動”として魅せる勢いやアタックの強さを両立させたエロ演出も圧巻の出来(←参照 短編「マンキツ」より)。
  前述した潮吹き描写や前戯パートにおけるぶっかけ描写なども含めて複数ラウンド制とすることが多く、ゴム付きセックス&フィニッシュもあることには好みも分かれるでしょうが、性的欲望を解放しきった強烈な絶頂に震えるヒロインのハードな痴態と汁塗れで精液を受け止める秘所を見せつける大ゴマを投入すると共に、それでもまだ終わらずにがっつき続けるような欲望の底なし感も示して〆ています。

  高い技量と丹念な描き込みによって保証される実用性の高さに加え、その剥き出しでストレートな性的欲望の奔流をスムーズに、そして有無を言わせぬパワフルさで読み手に浴びせるキャラメイク・シナリオワークも明確な美点と評したいところ。
どれもお気に入りなので選ぶのは難しいですが、強いて1作だけを選ぶのであれば、男嫌いで堅物だったお嬢様生徒会長が、彼氏が出来てドスケベ痴態を進んで曝け出す短編「ベールの奥は」を挙げたいところ。お勧め!