ForkInTheRoad  三部けい先生の『夢で見たあの子のために』第2巻(角川書店)を読みました。恵南の言う“恥じることのない生き方”に、復讐がゴールの千里が回帰できるのかはまだ分からないですね。一登が生きていたとして、復讐のゴールは無くなるのでしょうか?また、加東の言う“足りないもの”と恵南の言うそれとが同じとも思えないですが、はたして・・・?

  さて本日は、猿駕アキ先生の『FORK IN THE ROAD』(ヒット出版社)の遅延気味へたレビューです。阿吽で読んだ覚えがなかったのですが、本作は同人誌を初出としたリニューアル版となっております。
若い男女の純粋な恋愛が歪んだ遊戯の毒に染められ、ヒロインが背徳の快楽に溺れる寝取られ長編となっています。

ForkInTheRoad1  収録作は、カメラマンとしての夢を叶えるために東京から大阪で職を得て地道な努力を重ねる彼氏・涼太と大学時代から交際をしていたヒロイン・フミは彼との遠距離恋愛に寂しさを感じながらも彼の夢を心から応援していたのであったが、勤め先の同僚・岡屋に言い寄られ、無理矢理された挙句関係を続けてしまうのだが・・・なタイトル長編全2話(←参照 岡屋の毒が回り始める 同長編第1話より)+描き下ろしプロローグ(4P)。
便宜上全2話と表記しますが、第2話だけでもギリギリ単行本1冊分に相当する水準の分量があります。長編作として十二分な読み応えを有しており、濡れ場のボリューム感も標準かそれ以上と感じます。

【男性キャラの対比が強い印象を持つ寝取られエロ】
  ヒロインの言葉と恋心をモチベーションとして自らの夢を追う純粋な青年・涼太と、ヒロインを彼自身の“ゲーム”の対象として弄び、二人の関係に土足で踏み入ってくる岡屋との板挟みの中で、ヒロインが彼氏への裏切りに対する後悔や絶望感、そしてそれを上回る快楽と彼女として強く求められる喜びに翻弄される流れが本作の屋台骨。
  キャラクターとして対照的な男性二人を用意した上で、岡屋も表面上は決して悪人ではなく、仕事は有能で、女性に対して気配りができ、セックスは非常に上手い人物として描かれており、愛する人と離れ、寂しい想いをしていたヒロインが、彼になびいてしまうのは理解できるところでしょう。
また、善良ではあり、彼女との恋愛関係を大切にする余り、彼女と空間的に離れてでも夢を追い、また相手を尊重する故に事態を打開できたかもしれないヒロインの申し出を断る涼太の不器用さは、特に男性読者の親近感を呼ぶものであると同時に、“そこでそうしておけばよかったのに!”的なもどかしさを生み出し、寝取られエロのスリリングさを増しています。
ForkInTheRoad2  ズルズルと背徳の関係に絡め取られ、決して言ってはいけない涼太への裏切りの言葉を口にさせられるヒロイン、ようやく彼女の異変に気付き、決意の元にある行動をとって真実を知ってしまう涼太、そしてそれらの絶望も悲嘆も意に介することなく、正しく“勝ち逃げ”をする岡屋の三者三様の姿が交錯する終盤は緊張感のあるドラマとして仕上げられています(←参照 長編第2話より)。
  純粋な恋愛で結ばれていた二人がどうなるのかはご自分の目で確かめて頂くとして、本作は寝取られエロでありつつ、快楽堕ちバットエンド系ではなく、最終的には誠実な恋愛感情が「勝利」します。とは言え、清水を湛えた甕に泥団子を落とし、後にその泥だけを取り出しても、決して水はもとの清水には戻ることはない、そういった後味の悪さや後悔がじくじくと胸を刺激し続ける作品とも評し得るでしょう。
  商業作ではなく、同人作である故に、1話当りのページ数が多く、ヒロインの感情描写をじっくりと描き出すことが出来たのも、作品全体の読み応えを強くしています。

【揺れ動く心と健康的な色香のボディ】
  20代半ば程度と思われる美人会社員・フミさんの一人ヒロイン制であり、三者それぞれの視点を描きつつ、基本的にはヒロインの心理描写で紡いでいく作品と言えます。
彼氏との思い出を大切にし、彼の夢を応援する優しさ・誠実さ、岡屋が与える肉体的快楽に屈しない姿勢を見せるクールさや芯の強さを示しつつ、愛する者と時間を共有できない寂しさ、女性の扱いに長けた男のもてなしとセックスに絡め取られる弱さなども描くことで、二人の男に挟まれて翻弄されるヒロインの感情の揺れ動きを丁寧に描写しています。
ForkInTheRoad3  人物像は両極端に異なる二人の男性キャラクターですが、寝取り側である岡屋の存在感は非常に強く(←参照 いともたやすく嘘を吐き 長編第2話より)、仕事でもセックスでも恋愛でも極めて優秀な岡屋がヒロインを翻弄し、性的に開発し、彼のゲームに完勝していく様と、真面目な青年が手に出来たかもしれない幸福を根こそぎ奪われる様は非常に強烈な対比であって、寝取られエロとしての重苦しさを寝取られる側の男性および男性読者に対しても強く叩きつけることにつながっています。
  ヒロインのボディデザインについては、健康的な肉付きの体幹に、これまた程好いボリューム感の巨乳&安産型ヒップを組み合わせたものであり、強い特徴があるわけではないものの、幅広い層にとって相応のセックスアピールのあるタイプ。
  創作系もしくは女性向けの印象もあるアナログ絵柄で、全体的に淡さを漂わせた絵柄はヒロインの揺れ動く繊細な感情描写などとの相性は大変によいと感じます。一方で、デジタル彩色で仕上げた表紙との印象の差はある程度感じるため、店頭では裏表紙の帯に掲載された中身のサンプルを確認することをお勧めします。

【じっくりと背徳を積み重ねていく侵犯のセックス】
  前述した様に、エロ描写の総量としては十分なものがあり、ストーリー展開と不倫セックスのエスカレートを結び付けているため、エロシーンには明確な存在感がありますが、一定のボリュームの中でフィニッシュシーンに向けて盛り上がりを強め、煽情性をテンポよく高めていく商業エロでの構築とは異なり、悪く言えばやや間延びした構築であるため、エロ描写の分量の多さが実用面でのボリューム感と直結するとは言い難いとも感じます。
  彼氏である涼太との純愛セックスも描かれますが、完全にち○こパワーで岡屋に劣る涼太君であるため、岡屋のテクニックで開発されたヒロインを性的に満足させるが出来ないことを示すための対比でしかなく、ベットの上では獣ぶりを発揮する岡屋のやや嗜虐的な攻めとアナルセックスも含めたヒロインの性的な開発がエロシチュエーションのメイン。
彼氏と電話しながらのセックス、彼氏と出会う予定の自室でその異物としての存在を沁みつかせるようなセックスに、ヒロインの羞恥心や背徳感を高める台詞回しなど、寝取られエロにおけるベーシックなプレイ・シチュを完備させつつ、決して過激な行為はせず、押すところと引くところを弁えた攻略でヒロインの心身を手玉に取っていく流れそのものに凄味があるとも評し得るでしょう。
ForkInTheRoad4  また、ストーリー面で読みを牽引するヒロイン側の心理描写をエロシーンにおいても読み手に強く意識させる描写となっており、強烈な快楽に堪えきれず、喜悦の声を上げビクビクと反応してしまう肢体と、それに抗いながらも困惑し、快楽を認めてしまうことに罪悪を感じる精神の描写を組み合わせて、寝取られていくヒロインの痴態を表現(←参照 長編第2話より)。
  肢体の存在感、特に寝取り側の岡屋との肌の接触を重視し、結合部見つけ構図やキスなども含めてその存在を感じさせられ、受け入れさせられてしまうヒロインの状態と密接に絡めますが、エロ演出としての強度や密度は全体的に抑えており、視覚的描写のストレートなアタックで押すというよりかは、官能小説のように状況の説明をじっくりと重ねて煽情性を生み出すスタイルと感じます。
フィニッシュシーン等でもエロ演出の盛り上がり等は小さく、前述した構成の特徴と併せて、やや抜き所を定めがたいとも個人的には感じていますが、前述した様に一途なヒロインが熱っぽく蕩けてしまう様そのものに十分な煽情性があると言えるでしょう。

  エロ漫画として寝取られエロのドラマを丁寧に構築しつつ、エロシーンも含めて抜き特化の構成とはまた異なる味わいのある作品と感じました。
じわりと悪意と歪みが広がり、小さな、そして取り返しのつかない破滅の訪れる劇終まで目の離せない作品であったと総括したいところ。