SexZoneOfUninhabitatedArea 福本伸行先生の『アカギ 闇に降り立った天才』第34巻(竹書房)を読みました。勝負前、“若者が長生きするのが許せない”と言っていたワシズが、アカギという才能を殺してしまうことに“己の一部を失う絶望”を感じさせるという心情描写は長い長い勝負(色々な意味で)の果てにたどり着いた心境として、グッとくるものがありましたね。
魔物の様なワシズもまた、人であったのだなと感じるものもあります。

  さて本日は、オイスター先生の『肉穴苦界』(メディアックス)のへたレビューです。先生の前単行本『家畜乃団欒』(同社刊)のへたレビュー等もよろしければ併せてご参照下さい。
狂気と暴力が支配する謎めいた街で壊れていく少女達の運命が一瞬交錯し、再び地獄へと沈んでいくヘビィな1冊となっています。

SexZoneOfUninhabitatedArea1  収録作は、そびえ建つ怪しげな秘宝館の周りに広がる廃墟だらけの汚い街に足を踏み込んだ者達が、その街を支配する狂気と暴力に蹂躙され、決して出ることの叶わない街に囚われていくそれぞれの顛末を描き出すシリーズ作全9作(←参照 突如として噴出する狂気と暴力 シリーズ第1話「路地裏回廊」より)。
1作当りのページ数は22~26P(平均23P弱)と標準的な水準にありますが、極めて重苦しい読書感と読み手を仰け反らせる強烈なエロ描写の連続により、一気に読み切るのが辛い印象すらあります。

【逃れることの出来ない狂気と暴力の世界】
  無慈悲なまでにストレートな凌辱エロにホラー要素を加えるのも得意な作家さんであり、一度足を踏み入れれば、渦巻く暴力と狂気に捕えられ、心と体を壊されながら二度と“正常な”世界へと帰ることが出来ないという街を舞台にした本作もホラー的な要素を有しています。
廃墟探検に彼氏と訪れた少女、父親と共に迷い込んだ少女、娼婦にされた大切な友人を取り返しに来た不良少女など、それぞれの理由で街に入り込んだ少女達が狂人や悪人に捕えられ、その妄想を押し付けられたり無慈悲な凌辱を加えられたりすることで壊れていく様子を、冒頭ではオムニバス形式で描きつつ、長編シリーズの中で登場人物達の運命が一瞬の交錯を示し、それぞれの救済を求める願いがより不幸な形で踏みつぶされる構成力はやはり見事。
SexZoneOfUninhabitatedArea2  幸福な家族や恋人といった妄想に取り憑かれた狂人に本当の家族や恋人との関係性を踏み躙られる展開や、固く優しい友情で結ばれていた少女が互いを思いやりながら暴力に打ちのめされていく中、自らの保身に走ろうとする展開は(←参照 助けようとした友に助けを求める シリーズ第6作「花冷え」より)、オイスター作品では定番のものであり、人の善徳が狂気や悪徳に屈していく絶望感や無情感を読み手に叩き込んでいます。
自らが苦しんでも大切な家族や恋人を守りたいという愛、絶え間ない苦痛の中にあっても決して断ち切られることのない友情、地獄の中でも見ず知らずの他者を救いたいと願う義心といった人の善徳に、暗く淀んだ廃墟の地獄の中で一瞬の輝きを放たせる分、どうかそれらの善徳が報われて欲しい、狂気と暴力に勝利して欲しいという願いを読み手に抱かせつつ、それをやはり作者自らの手で無慈悲に粉砕し、誰もが何も救えない流れは、バットエンドしかないと嫌と言うほど分かっていても非常に辛い気持ちにさせられます。
  また、ホラー作品として見れば、廃墟探検や物見遊山で迷いこんだ者が、狂気と暴力の世界に囚われ、自らもそれらを再生産する見世物に堕ちていくという流れは、恐怖や狂気を徒に覗き込もうとする者が迎える末路という意味で正統派なものであり、また狂気と暴力を剥き身で描く本作を読む者へのメタ的な警句と解釈することも可能でしょう。
ストーリー展開や凌辱行為に創作物としての非現実感は勿論ありつつ、地獄とは人が作り出す物である、狂気や暴力は日常の中に潜むものであるという一貫したスタンスは冷酷なまでに「現実的」であり、それ故に美徳の敗北の悲しさが読み手に苦く重い読後感を抱かせ続けると評したい所存。

【心身を無惨に変容されていくスレンダー美少女達】
  概ねミドル~ハイティーン程度と思しき美少女さん達で占められたヒロイン陣であり、今回は珍しく年増ヒロインは登場していません。なお、最終話「暗闇秘宝館」では最近メディアックスから新装版が出た『少女対組織暴力』(日本出版社)より空手ガール・由佳ちゃんが12年ぶりくらいに再登場しており、ファンには嬉しい?ところ。
ちょっとツンツンした強気ガールに、家族思いの優しい女の子、どんくさくてイジメられがちだった少女と彼女のことを大切に思うヤンキー娘に、狂人が作り上げた妄想世界から逃れ、街から脱出しようとする少女と、個々に事情が異なるヒロイン達ですが、家族や友達、過去の思い出など何かしらの“大切なもの”を有していること、そしてそれらが無残に失われていくことが共通しています。
なお、ヒロインの彼氏や父親など、街に入った男性キャラクターも惨劇の犠牲になっており、時に凌辱に加担させられたり、薬物で精神を破壊されたりする中で心身を壊されていく一方、街に巣食う男達は他者に妄想や欲望を押し付ける異常者であったり、女性を商品として弄ぶ極悪人であったりと、ある意味では既に何かが既に壊れている者達。
SexZoneOfUninhabitatedArea3  ヒロイン陣のボディデザインについては、全体的にスレンダーな肢体に、たっぷりサイズの柔らかバストから、小さ目の膨らみの貧乳までバリエーションのあるバストを組み合わせたデザインであり(←参照 後者のタイプ シリーズ第8話「死滅回遊」より) 、肉感の強さよりはしなやかで均整の取れた印象を重んじたタイプ。
シンプル寄りではありながら、柔肌のスベスベ感やバスト&ヒップの柔らかさなども十分に打ち出す女体描写はそれ単体で魅力的ですが、暴力的な性行為によって性器や肛門を拡張されたり、乳首や性器にピアッシングされたり、焼印を押されたり、何回も薬物を注射された跡が残ったりと、そういった端正な肢体が一般的な美しさを損ない、惨たらしい変容を遂げていくことが大きな特徴と言えるでしょう。
  長いキャリアの中で、絵柄の改善やある程度流行の絵柄に近づける努力を続けてきた作家さんであり、シンプルではありながら美少女ヒロインの凛々しさや可愛らしさを漫画チックに表現するスキルや徐々に高めてきた描き込み密度の高さ、勢いを感じさせつつコントロールされた描線など、絵柄そのものは幅広い層にとって受け入れやすいものと感じます。

【暴力と絶望が支配する破滅的で狂気的な凌辱エロ】
  本作で切れ目なく叩き出され続ける狂気や悪意、歪んだ欲望はいずれも性的な暴力の形態をとっており、無慈悲に続く凌辱や調教の中、精液や汚物に汚されながら苦痛の悲鳴や絶望の吐露、救いを求める叫びを上げていくヒロイン達の痴態をこれでもかというボリュームと凄味のある筆致で描き出しています。
  ヒロインを性的な快楽で圧倒するという側面は明確にあるものの、安直でお気楽な男根主義とはある種無縁であり、狂気や妄想、冷酷さを伴った欲望がヒロイン、およびそれに関係する男性キャラクターすらも蹂躙していく無慈悲さの前には、男女別無く、“人”としてのアイデンティティが脅かされる恐怖感を覚えます。
SexZoneOfUninhabitatedArea4巨大なち○こやバイブによって性器やアナルを押し広げるのは勿論のこと、大量の性具や薬物の使用、フィストファックや浣腸、FC2の規約上ここでは書けない各種プレイなど、攻撃的で過激な性行為が多数行われており、それらに対するヒロインの恐怖や苦痛をご都合主義で蓋をすることなく、ハッキリと描く分、圧倒的な凶悪さを感じさせます(←参照 シリーズ第5話「真心歓待」より)。
また、それら狂気的で暴力的な性行為の果てに、ヒロインが快感を覚えてそれらに中毒することはありつつ、決して幸福感などはなく、破滅的なものであり、狂気が彼女達にも宿ってしまった結果として描かれているのは、オイスター作品での一貫したスタンス。
  体をガクガクと震えさせ、絶叫を上げながらのアへ顔チックな苦悶と快感の入り混じる表情、濁音メインの攻撃的な擬音の連発、涙や涎、黄金水、中出しされた精液が上下の口から噴出する液汁描写、下腹部を内側から突き上げる“ボコォ”描写など、ハードなエロ演出を連続させつつ、エロシーンの流れの中で演出を効果的に用い、かつ個々の威力が十分過ぎる程高いこともあって、過剰に演出を重ねずにシンプル&ストレートに演出を見せる技量も評価したいポイント。
ある意味ではエンドレスに続いていくことが狂気性を高めていることもあってフィニッシュシーンに演出や配置の重点を置くスタイルではないのですが、描写としての強烈さは射精シーンも含めて強固に維持されており、本作で実用的読書が可能な諸氏にとっては、何処でも抜き所になりえるエロシーンと言えるでしょう。

  極めて読み手を選ぶ作品であり、作中に含まされた警句の通り、安易に手を出すことは避けるべき内容ではありますが、孤高の凌辱エロ作家・オイスター先生が有する類稀な魅力を十分に備えた最新作であり、衰えることの無い構成力にも唸らされました。
特に、最終話のラストページで示された世界観にも震えましたね。