Implicity TVアニメ版『けものフレンズ』第7話「じゃぱりとしょかん」を観ました。お話の折り返し地点で図書館に到着するとは思っていませんでしたが、自らが“ヒト”であることを知ったかばんちゃんに如何なる旅が待ち受けているのでしょうかね?
今回、かばんちゃんが火を熾しており、ヒトの歩んだ道を順調になぞっているなと感じますし、ヒトとそうでないものの比較を感じます。

  さて本日は、東山翔先生の『Implicity』(茜新社)のへたレビューです。なお、先生の前単行本『Nymphodelic』(同社刊)のへたレビュー等もよろしければ併せてご参照下さい。
性に関する特殊な技術が様々に実用化され、激しい貧富の差を有する近未来を舞台として性欲の対象としての存在である少女達を描く作品です。

Implicity1  収録作は、豊かで平和な“上”の世界がアンダーと呼ばれる下層を覆いつくし、性器改造や娼婦としてカスタマイズされた生体という存在が普遍化した未来。少女を凌辱し、それらを壊すことすら厭わない邪悪な集団が娼館で働く一人の少女を収奪しようとするのだが・・・というタイトル長編第0~4話(以下続刊)+幕間劇や前日譚3話(←参照 上の世界から流れ着いたものを見つけたアンダーの二人 同長編第1話「Youni and Ko」より)。
1話当りのページ数は5~56P(平均25P強)とエピソードによってページ数の振れ幅がかなり大きいものの、長編作としての読み応えは十二分にあり、またエロシーンの分量もたっぷり用意した構築となっています。

【少女性愛の欲望を巡るSF作品】
  精液の味すら変化させるなど高度な技術が発展し、肉体改造や薬品による“気持ち良く”“他者に苦痛を感じさせない”セックスが普遍化し、少女性愛者の性的欲望も“ドール”と呼称される娼婦の生体で発散させることが可能となった未来を舞台に、凶悪な犯罪者集団の暗躍とその手から逃れられなかった少女の恋人、そして新たな獲物となった一人の娼婦とその同僚にして友人を描く本作は、SFとしての要素を色濃く持つ作品。
Implicity2メインキャラクターであるシーナの出生の秘密とそれを知って彼女を狙うチバという男が率いる犯罪者集団、恋人を彼らに凌辱され壊れた少年の再登場とその思惑と、ストーリー面での伏線を張り巡らしており、それらの思惑の中で、二人の少女の関係性、そしてその逃避行がどのような結末を迎えるのかに期待をさせて以下続刊となっています(←参照 不安と決意と 長編第3話「Sheena」より)。
  ストーリーの全貌がまだ明らかになっていないこともあって、作劇面での評価をするのには時期尚早ではありますが、個人的には二つの面に着目して読もうと考えており、一つは“欲望の普遍性”であり、もう一つは大仰ではありますが“人とは何か”という点です。
性的な面においてさえ平和で調和が取れ、人間の暴力的であったり歪んでいたりする欲望が人間を相手にしなくてよくなったユートピアにおいて、歪んだ少女性愛を含む暴力的であったり自分勝手な欲望は平和裏に霧消するのかという問い掛けにおいて、犯罪者集団が跋扈し生体ではなく“人間”を貪ろうとする犯罪者集団が跋扈する本作は、如何なる状態においても、禁忌や背徳を求める欲望は消えることはないことを表現しています。
もう一つの点は、生体を“ドナー”という名称に設定していることが示すように、「人が社会の調和を為すために人ではないが人に限りなく近い存在である生体達の生命や尊厳を犠牲にしてよいのか?」という疑問を本作は生じさせており、また人ならざる者でありつつ人に近い存在と向き合うことで人間自身とは何なのかということを考えさせるのはSFというジャンルにおける伝統的なテーマと評して良いでしょう。
  作品タイトルの“implicity”がimplicit(暗黙の)+city(街)の造語と解釈すれば、暗黙の内に包まれた欲望が如何に発揮され、少女達は如何にそれと相対するのか今後を楽しみにしたいところ。

【現実と虚構の間に揺れ動く不確かさと透明性の少女像】
  第0話では“上”の世界で幸福に暮らす一人の少女を、第1話で反対に“アンダー”の世界で私娼として働く一人の少女を描いた上で、第2話以降ではドールという娼婦として働く二人の少女をヒロインに据えており、何やらキーアイテムとなりそうな指輪や第1話の少年を通じて連関が生じています。
“生体”達は性行為のために様々な人工的カスタマイズが為されていますが、その見た目は人間の少女と何ら変わりなく、ヒトとそうでないものの境の曖昧さというのは、シーナの出自とも強く関係する要素であり、本作で想定されるテーマ性にとっても重要でしょう。
  また、ネットワーク上で緩やかにつながり、ハンドルネームで呼び合う仮面を装着した少女性愛者の犯罪集団めいたグループも、匿名の普遍的な欲望を視覚的に表現している様に感じられ、可憐な少女達と対比的に不気味な雰囲気を醸し出しています。
薄い胸に寸胴気味の体幹、華奢な四肢を包み込む白い柔肌やサラサラとした髪の毛を備えた未成熟ボディは、リアル寄りと言えばそうであるスタイルで描かれつつ、精気のある現実と理想化された虚構の合間で揺れ動く様な儚さ・透明感を感じさせるのがこの作家さんの特徴で、本作ではそれがより顕著に出た印象があります。
Implicity3漫画チックな親しみ易さや端正さを保ちつつ、唇や性器の艶めかしい質感や、吐き出されて少女の肢体やシーツを汚す各種液体の質感などは、独特の生々しさを生み出しており、それらの丁寧な描き込みはエロシーンの実用性を底上げする大きな要因(←参照 唇や男性器等の質感に注目されたい 長編第2話「Julka」より)。
  未来の世界や娼館の部屋の調度品など、背景描写も丁寧であることに加え、ほんのりコミカルなデフォルメ絵などで親しみ易さを感じさせると共に、色香や萌えっぽさを前面に出すことなく雰囲気の陰陽や倒錯性などを自然と描写に含ませる絵柄はこの作家さんのユニークな魅力と言えるでしょう。

【生々しい質感を織り込みながら描く少女達の痴態】

  エピソードによってページ数の多寡の振れ幅が大きく、幕間劇や前日譚などを除いても、標準をやや下回る水準から標準をはるかに超える大ボリュームの場合まで様々。とは言え、単行本単位として見ればエロシーンは十分に大盤振る舞いと言えるでしょう。
結婚することになる上の世界における少年少女の幸福なラブラブセックス、娼婦の生体であるドールによる売春セックスや、ふたなりであるドールとのドール同士の和姦エッチなど、エロシチュは様々でありつつ、第1話においてアンダーの少女を徹底的に舐り尽くし、快楽で彼女の心身を破壊せしめる凌辱エロを30P強という長尺でたっぷり提供。
男性達の身勝手な欲望が一方的に発揮され、各種薬物などを用いて少女の心身を蹂躙しつくすというこの凌辱シーンは、恋人の少年からの寝取り要素や惨劇の結末も含め、欲望の醜さをたっぷりと練り込んだ大変に胸糞悪いものであり、その類のエロシーンが苦手な方は要留意。
Implicity4  これらの凌辱シーンでは、恐怖や不安を感じさせる表情や、嗚咽を漏らしながら精液を吐き出す描写などで嗜虐性を感じさせつつ、一方、和姦シチュエーションでは、性的な快楽に羞恥心や戸惑いなどを感じさせながらも、とろんと蕩けていく描写はポジティブなものとなっており、華奢な肢体を反応させながら熱っぽい表情と嬌声を示していく流れは万人受けするスタイル(←参照 長編第4話「Eir」より)。
前述した各体パーツ描写の淫猥さはエロ描写における確たる武器であり、押し広げられる膣や肛門の内部や絡まり合う舌といった粘膜描写の淫猥さに加え、襞や皺まで大変丁寧に描き込んで生々しさを生み出しつつ、その一方で劇画的な濃さや重さを感じさせることなく、少女の華奢な肢体の端正さ・儚い美しさとのバランスが取れているのが見事。
  ドナー同士のセックスではそもそも片方に射精機能がなかったり、はたまた魔改造ち○こによる非現実的な射精連発のセックスがあったりとエロシーンの構成は様々ですが、いずれにしても分泌される淫液にヒロインの肢体が塗れ、アブノーマルなプレイの中でも強烈な快感に痺れながら絶頂して更に淫液を放出していく様子を長い尺の中で多数搭載した濡れ場となっています。

  管理人としては“お洒落なサブカル系”的な評価を越えて、本格的なSF作品のエロ漫画であると評したいところであり、続きが大変気になるところ。
必ずしも万人受けでない要素も多く、軽い読書感を求めるならばお勧めできませんが、エロ漫画史に一つ金字塔を打ち立てる作品になるのではと管理人は大変期待しております。