SistersSecretAndMySuicide  速水螺旋人先生の『大砲とスタンプ』第6巻(講談社)を読みました。戦争の中で、これまでも多くの人命が失われてきたわけですが、マルチナさんが自ら関わる戦争による理不尽な死を直面させられたエピソードが印象的。
あと、女装姿のキリュシキン少尉殿、自分の女装姿に自信満々な面も含めてめっちゃよかったですな!勃起!!

  さて本年最後の単行本レビューは、楓牙先生の『姉の秘密と僕の自殺』(ティーアイネット)の大遅延へたレビューです。既に発売後半年近くが経過しておりますが、発売当時ブログが長期更新停止中でして、一ファンとして本作をレビューしないと気持ち良く年を越せませんので、今年最後のレビューにチョイスさせて頂きました。なお、先生の前単行本『俺の義姉さん』(同社刊)のへたレビュー等もよろしければ併せてご参照下さい。
非常に重いテーマ性を淡々と語りだす家族のドラマと健康的な色香のお姉ちゃん達の艶っぽい熱っぽい痴態が味わえる1冊となっています。

SistersSecretAndMySuicide1  収録作は、面倒見の良い姉・澤田人見も含め、家族や周囲の人間を疎み、自殺願望を抱える少年・圭壱の前に現れた転校生・富永琴音は、人に憑りつく霊が見える少女であり、彼の自殺願望を何故か見抜いた彼女は一緒に死のうと提案してくるのだが・・・な長編「僕と彼女と幽霊と」全6話(←参照 彼女が殺したというキヨヒロ君とは・・・ 同長編第1話より)。
なお、楓牙先生の各作品はその作品世界を共有しており、例えばサブキャラとして重要な役回りを果たす多田美咲さんは前々単行本『兄と妹の事情』(同社刊)からの再登場。
収録本数こそ多くないものの、1話当りのページ数は24~44P(平均33P弱)とかなりボリュームがあります。長編作として十二分の読み応えのあるストーリーに加え、このページ数としては量的に抑えめながら適度な存在感のあるエロシーンを用意しています。

【不確かさを抱えながら淡々と進行する“家族の絆の救済”ドラマ】
  幽霊が見える不思議な少女との出会い、主人公自らも見えるようになっていった彼らを取り巻く霊達の正体、そして共に自殺することを選択しようとする二人と、オカルト的な要素を含む本作ではありますが、ホラー・オカルト的な要素を織り込みながら、あくまで“生きていく人”をドラマの中軸に据えるのはこの作家さんらしい点。
絵柄の特性やキャラクターの性格付けなどもあって、話は淡々と進んでいくのですが、人に憑りつく霊が象徴するものは、人を捕えて離さない過去への後悔や自責の念であり、本作は「“親殺し”への自責の念」という非常に重い要素を含んでいます。
  不思議な少女・琴音は様々な過去の秘密を主人公に打ち明けていますが、彼女が語ることは真実なのか、はたまた琴音自身さえ生きている人間なのか幽霊なのか、自分が信じていた過去とは本当なのかと、徐々に登場人物達の「真実」が明らかになっていきながら、果たしてそれが真実なのか主人公にも読み手にも不安を覚えさせながらストーリーは展開されています。
SistersSecretAndMySuicide2ある目的を以て二人での自殺を提案した琴音と共に、以前から計画していたように屋上から飛び降りた主人公・圭壱に(←参照 飛び降りる二人 長編第5話より)、物語最終盤どのような運命と真実が待ち受けているのかは、是非ご自分の目で確かめて頂きたいですが、本作の最大のテーマは前単行本と同じく、“家族の絆の破綻とその再生”にあると評してよいでしょう。
 前述した様に、亡くなった人達の霊や生霊の存在も、作中で語られること全てが本当であるかは不確かなままである一方、そういった過去を踏まえながらも、今を生きること、今共にある人と歩んでいくこと、それが生者にとっての「真実」であり「大切なこと」であると登場人物に語らせています。
昔に亡くなった母との決別を為して新たな家族と生きることを決めた主人公、彼をずっと大切に見守り、生者として共に歩むことを受け入れる姉、そして主人公の幸せを願い続けるもう一人の姉・琴音それぞれを描いて、寂しくも心温まるハッピーエンドで幕を下ろしています。

【健康的で清楚な色香を香らせる二人の姉ヒロイン】

  過去作品から再登場しているサブキャラ二人はエロには絡まず、琴音と人見のダブルヒロイン制を取っており、二人ともハイティーン級の女子校生ヒロイン。
不思議な言動と穏やかながらも色々と積極的な琴音と、クールな容姿・言動でありつつ、主人公のことを大切に思っている人見は、主人公の複雑な出自もあって、共に“姉”ヒロインであり、ある意味では彼女達の母性は、それに餓えていた主人公に“生の意志”を取り戻させる重要な要素と言えます。
霊的な存在を含め主人公の“過去”の家族を象徴する琴音と、主人公の“現在”の家族を象徴する役割の人見の対比は、主人公を取り合うトライアングル・ラブ的な構図を生み出しつつ、その両者があってこその主人公であり、また主人公がどちらを選択するかも作品の主題と明確に関連しています。
作中での役割面でも性格面でも対照的な二人の姉ヒロインですが、共に主人公の存在を大切に思い、彼を守るために努力することは共通しているため、重苦しいテーマ性でありつつ、二人のちょっとした嫉妬のし合いや融和などが読み口の柔らかさを生み出すことに貢献しています。
SistersSecretAndMySuicide3  艶やかな黒い長髪や健康的な肉付きの体幹と四肢、程好いサイズ感の巨乳&桃尻と、格段に強いセックスアピールこそ有しないものの、年上ヒロインの温かく柔らかい肢体にいい意味で現実的な色香を持たせており(←参照 母性の表現とも 長編第4話より)、生者としての確かな存在を感じさせる女体描写と評し得るでしょう。
  一般向け青年誌の絵柄的な健康さや、さっぱりとした質感を覚える絵柄は、漫画チックに素朴な可愛らしさや澄んだ美しさを表現するのに適した絵柄であり、淡々とした語り回しの作劇と同じく、描写密度や絵としての重さを重視することなく、それでいて印象的な場面の表現力に長けた画風と感じます。

【抑えた演出故の生々しさや熱気が感じられる性描写】
  現在のエロ漫画ジャンルでは希少なレベルでストーリーメインの作品構築であり、十二分のボリュームの各話において登場人物達の人間ドラマに多くの分量を割いているため、たっぷり長尺のエロシーンを期待するのは避けるべきでしょう。
とは言え、二人のヒロインとのセックスを含めた関係性はストーリー面において重要性を有しており、また各話のページ数が多い分、エロシーンの尺は概ねコンビニ誌の標準かそれを上回る程度は確保されており、それぞれ十分な尺を備える前戯・抽挿の両パートに射精シーンを設ける多回戦仕様を標準仕様としているのも抜きツールとしての満足感に貢献しています。
  お姉ちゃんヒロイン達の素直で一途な愛情が基盤となるエロシチュであり、不思議少女に翻弄される誘惑セックスやクールなお姉さんが愛情を示してくれるクーデレセックスなど、キャラ造形に沿った味付けを加えつつ、互いの実存を確かめ合う様な性行為として表現されているのもテーマ性との親和性が高いと評し得るでしょう。
SistersSecretAndMySuicide4相手を慈しむ様な表情でのご奉仕フェラや乳首舐め手コキなど、ヒロイン側が積極的に主人公へ尽くすプレイをねっとりと描く前戯パートで白濁液を姉ヒロインの口の中に放出し、抽挿パートにおいてもヒロイン側が騎乗位で腰を使って気持ち良さを与えてくれるなど、ヒロイン側に主導性があり(←参照 長編第5話より)、これに主人公側が甘えるという構図そのものにも意味がある描き方。
ある程度は結合部を見せ付ける構図を用いつつも、露骨さはなく、重なり合う男女の肢体の存在感や密着感を重視した作画を維持し、演出面でも紅潮した表情や絞り出される嬌声、ぬめった水音など、量的・質的に抑えたナチュラルな演出を選択しており、演出強度そのものではなく、情感の良さで魅せるタイプ。
  現在のエロ漫画ジャンルのスタンダードからすれば、淡白もしくは地味に映るエロ描写であることは間違いないでしょうが、派手さ・過激さを追い求めない分、ゆったりと穏やかに、しかして熱っぽく進行する性行為にある種の生々しさを生み出すことには成功しており、1Pフルの中出しフィニッシュでの静かに快感に震えるヒロイン達の痴態でそれまでの流れに沿って〆ています。

  今回は幽霊たちの登場するオカルトめいたストーリーでしたが、それでいて“人の生”への祝福を基盤とする作劇は些かもぶれておらず、実にこの作家さんらしい救済のドラマだなと感じました。
今年は5~8月の長期更新停止により、他にもレビュー出来なかった単行本が多数あったのですが、本作を年内にレビューできたことはレビュアーとして大変嬉しく思っております。