
本筋とはあまり関係ないですが、番外編の睫毛さんのサツバツだけど小さな幸せのご飯エピソードも大好きですね。
さて本日は、緑のルーペ先生の『いびつのそのご』(茜新社)のへたレビューです。なお、先生の(成年向け)前単行本『ガーデンⅡ』(同社刊)のへたレビュー等もよろしければ併せてご参照下さい。
ふかふかおっぱい美少女達が破滅的な快楽に身を浸し、狂気に囚われていく様が非常に印象的な作品集となっています。

フルカラー掌編2作(共に6P)を除き、1話・作当りのページ数は24~40P(平均29P弱)と標準を上回るボリュームで推移。エロとシナリオの相乗効果もあって読み応えは相応にヘビィであり、好みが合えば抜きツールとしての量的な満足感も強く感じられる作品構築となっています。
【全体的にドラマ性を抑えつつも強烈な読後感のある中編】
前単行本および今単行本でのあとがきにあった通り、今回はストーリーとしての読み応えは抑えて分かりやすくエロメインの作品構築を目指したとのことで、実際に軽い読書感の短編もあるものの、シナリオの存在感は十分に強力。
相手の脳内を書き換え、自分に従順な存在にして思い通りの設定でセックスをすることが出来るお香を使って姉妹を調教する中年男性が登場する表題中編作は、エロ漫画的にポピュラーな便利なギミックを用いつつ、明け透けな性的全能感ではなく、むしろそういった“便利なもの”を使ってしまった故に歪みが増し、関わる登場人物達が狂っていく様子を描いています。

歪んだ意思、狂った欲望が煮詰められ、強烈な快楽に支配される閉じた世界は、そこに囚われた人物達に“幸福”を与えていますが、それが決して健全でも永遠のものでもなく、歪みが限界に至りその世界が自壊した時、反動の様な不幸と害悪が撒き散らされることを示唆し、物語は重苦しく幕を閉じています。
エッチに興味津々でガツガツとラブ&セックスを双方が求めるおねショタHな短編「やわらかお姉ちゃん」、エッチに興味を持った初心な少女が悪い男に調教され、大好きな先輩を捨てて変態セックスに夢中になっていく寝取られ系作品の連作「このトイレは修理中です!」は方向性こそ異なりつつ、ヒロイン側の積極性でエロに突入していくのは共通。
ラブエロ系統については作者の目論み通りに、ストーリーとしてのドラマ性はかなり削ぎ落とした構築ではありますが、非日常の狂気的な快楽に包まれていく連作は相応の重さを感じさせる読書感となっています。
【柔らかおっぱい装備の“普通”っぽいキャラデザの美少女達】
ある程度の時間経過が生じている中編作ではヒロインの成長(加齢)も描かれていますが、概ねロー~ミドルティーン級と思しき制服ガールズ達で統一された陣容。
徐々に狂気に染められ、自分達を一方的に調教する男性の行動をむしろエスカレートさせる方向に走った中編作の少女のキャラクターとしての存在感は強烈である一方、その他の作品においては思春期相応に性的好奇心がある純朴ガールといったタイプの女の子が主体であり、性行為への積極性を強く打ち出す分、キャラとしての掘り下げは意外に弱めという印象。
なお、中編作や連作においてヒロインを調教する男性キャラクターについても、少女を好き放題にしたいという分かりやすく歪んだ欲望をストレートに発揮するタイプのキャラクターであり、シンプルである分、快楽を求める少女との関係性の歪みが強調されて見えるとも個人的には感じます。

殊更に特徴づけをしていないボディデザインに加え、黒髪ショート等のさっぱりと健康的なキャラデザもあって、“普通の女の子”的な設計になっていますが、そんな普通の少女が快楽に蕩け、時に狂うというギャップが肝要な点とも言えるでしょう。
クドクない程度にキャッチーな萌えっぽさを有する絵柄は、短編「六畳二間とセーラー服」のみで若干印象の差異を感じますが、基本的には単行本を通して安定しており、表紙絵とも完全互換。丁寧に描き込んだ密度のある絵でありつつ、詰め込んだ印象がないのも美点でしょう。
【強烈な陶酔感が生み出される切迫した快楽への渇望】
今回はエロ特化でという意識の強さを感じさせる様に、エロシーンは長尺の構成であり、特にページ数が多いエピソードなどでは複数のエロシチュを用意して多回戦仕様を徹底するなど、濡れ場のボリューム感はかなり強く感じられます。
純粋スケベな少年とやはりほのぼのピュアガールの微笑ましいがっつきセックスや、だらしのないおじさんと女の子のラブエロ系といったエロシチュも用意しつつ、中編は洗脳状態での調教&無理矢理に為されるラブラブ設定のプレイ、連作は羞恥・露出系の要素を用いた寝取られ調教エロと、ダーク&インモラル系統のエロシチュに存在感が強いのは、ある意味ではいつも通り。
殊更に淫猥さを盛り込んだ描き方ではない一方で、柔らかく変形する少女おっぱいの質感や、精液や唾液、愛液などでぬめる舌や性器などの粘膜描写の官能性は大きな武器であり、特に後者は小さなお口がち○こに吸いつくフェラ描写や、舌の絡み合うキス描写、肉棒が狭い膣内を蹂躙し、子宮口をノックする断面図描写などで強い効果を発揮。

無論、そうだからといって大人しいエロ描写というわけではなく、陶酔感の強い表情付けや熱狂的なエロ台詞は、快楽に支配され正気を損ないつつある様子を痛々しく伝える描写でもあり、純粋に心身を性の快楽で満たしていこうとする切迫感に凄味のある描き方と評してもよいでしょう。
快楽中毒になり、精液を子宮に注がれる期待をヒロインのモノローグや台詞で語り出すことで、オーラスのアクメへと突き進むエロシーン終盤は演出密度もより高くなり、まだ子供を孕むことのできない子宮に最奥まで突き込まれた怒張から白濁液が注ぎ込まれる様は、生殖としての行為の要素を除去されている分、純然たる性的快楽の暴力性としての側面が場を支配しており、それに喜悦を覚えて震えるヒロイン達の姿もなかなかにヘビィな印象です。
これまでの長編作に比べれば、ストーリーとしての読書感は軽めではありますが、それでも十分なインパクトを与えてくれる作品も目立ち、この作家さんらしさを感じられる作品集と個人的には感じます。
管理人は、緑のルーペ先生に、どちらかと言えばストーリー面で期待している者ですので、歪んだ狭い世界の自壊を示唆するラストで唸らされた中編「いびつのそのご」が最愛でございます。