
あと、“別に・・・”って顔しているシンプルアニマルには爆笑でした。
さて本日は、東山翔先生の『Implicity2』(茜新社)の遅延へたレビューです。読解に時間がかかり、だいぶ遅れてしまいました。なお、先生の前単行本『Implicity』(同社刊)のへたレビュー等もよろしければ併せてご参照下さい。
少女達への歪んだ欲望が発現される禍々しい凌辱模様と緻密な設定の謎が渦巻くハードなSF作品として完結しました。

なお、話としてかなり複雑で難解であるため、作品をフルに楽しもうと思うのならば、前単行本の読了は必須と言えます。
1話・作当りのページ数は7~45P(平均27P強)とかなり幅がありつつ、平均値としては標準以上であり、また強いストーリーの読み応えとエロの存在感を両立させています。
【不確かな“本物の少女”への業の深い歪んだ欲望】
社会を幸福にするための技術の進歩や社会倫理のあまねく確立が、その一方で歪んだ欲望を蓄積させ、またそれを“実現”させることができるようになった故に、発現されるそれらの欲望の禍々しさや一方通行性を、胸糞悪いレベルで読み手に叩き込みつつ、それと密接に関わるシーナの秘密を徐々に明らかにしていきます。
シーナを追う仮面の男の正体や真意、彼女が性的な存在として確立された本当に理由、重要なキャラクターであるコウと彼が持つ首飾りの意味等々、非常に多くの謎を散りばめたSF作品であり、それらについて伏線を回収しながらも一種淡々とした調子で描いて、親切に説明してくることはないので、全体的に難解さや、謎が謎として残るもやもや感があるのは確か。
とは言え、生体と呼ばれる少女達ではなく、“魂”のある“本物の”少女を求める欲望の業の深さを描き出しつつ、仮面の男のシーナへの渇望も含めて、それが本当に自身に由来する“本物の”欲望であるか、好き放題ができる楽園を構築しながらそれは実は監獄ではないのかという揺さ振りは、SF作品としてまた少女性愛を描く作品として強烈な印象を残します。

その一方で、少年少女の愛の勝利的なシンプルな幸福感はあまりなく、作品全体を通して少女性愛を含め、愛とそれを駆動する欲望の際限の無さやグロテスクさも一貫しており、個人的には特に男性性に対する一種の拒絶感と、シーナとユルカの関係性を軸として少女達が自らの手によって幸せになることを望む姿勢を感じます。
清らかで美しく瑞々しい少女達という少女性愛者の理想が叶えられる世界というのは、男性側の欲望が存在しない世界でしか実現できないのでは?というある種の皮肉と不信を感じるところもあり、歪みつつも生々しい欲望と情熱がある中で、一種突き放したような冷静さが漂うことで、非常に個性的な読み口に仕上がっていると評し得るでしょう。
【美しく倒錯的な少女達の華奢ボディ】
男性達の欲望の対象となる不特定多数の少女達が登場しつつ、メインとなるのはシーナとユルカ、および今回から本格的に登場して策動するクオンの三人であり、モブキャラ勢も含めてギリ二桁~口ーティーン級で統一。

前述した様に、登場人物達の考えや感情を丁寧に噛み砕いて説明してくれるスタイルではなく、そのこともストーリーや設定の難解さに拍車をかけていますが、要所要所で重要な台詞や言葉を語らせており、それらを印象付けてストーリーを構築しているのは技巧的と感じます。
かなりリアル寄りの肢体描写が特徴的であり、ぺたんこバストの寸胴ボディに華奢な四肢、肉付きの薄い腰回りや股間の局所的な柔らかさなど、整った美しさも打ち出しつつも、明瞭な未成熟さに基づく倒錯感を喚起するボディデザインと言えるでしょう。
艶っぽい唇に加え、アナルや秘所などの局所描写では、リアル指向と丹念な描き込みで生々しい粘膜の淫猥さを強く打ち出しており、明確な武器でありつつ、同時に大きく好みが分かれる要素でもあるでしょう。
コミカルな描写などでは漫画チックなデフォルメなども用いますが、髪の毛や前述の粘膜描写など、細やかで高密度の描き込みが特徴的であり、漫画の絵柄としての親しみ易さやオサレ感と、ある種の生々しさや精気が両立する絵柄は、決して訴求層を狭めるものではないですが、一種独特のカテゴリーに入りつつあるとも感じます。
【ハードな凌辱エロ主体で悶える華奢な肢体】
ストーリー性が強く、また謎解き的な要素を含めて展開に引き込まれる作品であるため、エロシーンだけに集中しがたい面はあるものの、量的には十二分なものが用意されており、また質的な濃厚感も強いため抜きツールとして相応に強力に仕上がっています。
最終話での少年少女の素直なラブラブHや、クオンによる男達への搾り取りセックス拷問シチュなどもありつつ、基本的には少女への歪んだ欲望が一方的に叩きつけられるハードな凌辱エロがメインであり、相手をモノ扱いするような言動やプレイが多いこともあって苦手な方には大変な嫌悪感を引き起こすであろうため、要留意。
小さな顔をホールドしてのイラマチオ、秘所やアナルをねちねちと攻め立てる愛撫など、口や秘所の粘膜表現のエロさをベースとする前戯描写には十分な尺を設けており、快感を覚えるようにプログラムされている彼女達を快楽で一方的に圧倒する攻撃性・嗜虐性を序盤から喚起しています。

粘膜表現の淫猥さを高める液汁描写の豊潤さや、各種擬音や嬌声の散りばめ、断面図描写など、エロ演出面でも十分なアタックと密度を打ち出していますが、肢体表現そのもののエロスを阻害しない程度に収めている印象があります。
ビュルビュルと精液を膣内や直腸内に注ぎ込むフィニッシュシーンを1Pフル~2P見開きで投入することもあれば、前戯パートからの絶頂シーンでエロシーンをまとめることもあるなど、あまりオーソドックスなエロシーンの構築にはこだわらないスタイルを示していますが、いずれにしても華奢ボディがハードなアクメに震える痴態の倒錯性は十分に強く、強力な抜き所として〆ています。
管理人が作品性を十全に理解できているかについて不安はあるのですが、分からない部分も含めて魅力的で作品とその背景にある性愛の奥深さを感じさせてくれるSF巨編でした。
決して万人向けとは思わないのですが、おそらく今後エロ漫画史に残る傑作で、前単行本から受けた衝撃を納得させてくれる完結であったと評したい所存。
詳細解説
これは今後もエロ+SF+ジャズの要素を全部ぶちこんだ傑作として伝わるのでは。
日本SF大賞にもノミネートされたのも納得です。