
ルイちゃんも餌付けの効果に気付いたようですが・・・?
さて本日は、愛上陸先生の『イジラレ』(ワニマガジン社)のへたレビューです。先生の前単行本(初単行本)『夢見ル乙女』(同社刊)のへたレビューもよろしければ併せてご参照下さい。
性悪ないじめっ子ガールズを催眠術で常識改変しての被虐と嗜虐が入り混じるエロシチュがたっぷり詰まった長編作となっています。

描き下ろしエピローグを除き、1話当りのページ数は22~80P(平均37P)と平均値としてもかなりのボリューム。80Pという尋常でないページ数の最終話ですが、これは複数回の連載+描き下ろしを1話にまとめたものとなっています。
長編作として十分な読み応えのある作劇であり、またエロシーンのボリューム感も強いために満腹感の強い1冊となっています。
【ヒロインとの攻防劇で緊張感を持たせた常識改変シチュエーション】
弱みを握られる経緯において主人公側にも問題はあるものの、他人を玩具にして弄んできたドSないじめっ子に対する復讐劇として黒い爽快感を有する作品であり、また催眠モノ・常識改変モノという特色を有する作品でもあります。
催眠・常識改変系の作品は、相手を思い通りにするという嗜虐性・征服欲を喚起する作品でありますが、あまりに便利なギミックである分、一度ヒロイン側が催眠で支配されてしまうとそれ以上は作劇としての動きが抑えられてしまうという弱点があるのですが、本作はそこを巧く回避して長編としてのストーリー性を構築できているのが大きなポイント。
ヒロイン側が見下していた相手に催眠術を掛けられて好き放題にされているという状況に気付きそうになる状況と、それに対して彼女達を後戻りできない状況まで追い込んでから“ネタ晴らし”をして絶望させようとする主人公が周到に用意した仕掛け発動して、反撃の芽を潰すという展開が織り込まれて、話に緊張感を持たせているのが一つのポイント。

いずれにしても催眠・常識改変というギミックの便利さに大きく依存していることは確かでありつつ、完全に主人公側の掌の上で思い通りでありつつも展開としてはそうは見せずにヒロイン側との攻防を示しているのが作劇としての最たる美点でしょう。
主人公側が仕掛けた罠とメインヒロインの最後の反撃がどう決着するかはご自身の目で確認して頂くとして、終盤まで緊張感とエロ的にウハウハ感を同居させた展開は、後者の方を優先したまとめ方となっており、好みは分かれるかもしれませんが、ハードなストーリー展開に比して最終的な読み口はマイルドに仕上げられています。
【個々の方向性を描き分けたキャラデザインの魅力】
いじめグループのリーダーである野上をメインヒロインとして、彼女の子分的な二人のサブヒロインを配した陣容であり、いずれも女子校生ヒロイン。
穏やかな言動の様で実は腹黒系な真田に、明るい性格ながら無邪気にイジメに加担している日向とサブヒロインの二人も男性側の復讐心を駆り立てる要素を有していますが、他者の尊厳を踏み躙り、非道な扱いをすることに楽しみを感じ、主人公も含めてあらゆるものを自分より下に見ている様な高慢さを持つメインヒロイン・野上の存在感は非常に強く、前述した様に終盤までその強さと性悪さを維持する分、“打倒すべき敵”としてのキャラ立ちが一貫していますし、因果応報の納得感があるのも大きなポイント。
なお、おどおど系小太りメガネ男子な変態主人公は、気が強く様々な面で他者を圧倒する美少女と強い対照性を有しており、そもそも主人公にも問題があるものの、弱者が強者に逆襲するというルサンチマン的構図を形成。

真田さんの豊満ボディは今回はむしろ例外的で、必ずしも肉感最重視の肢体設計ではないものの、弾力感のある乳房や尻肉のストレートなエロさや、程好い存在感の乳輪や乳首、陰毛装備の股間やアナルの描写など、体パーツ描写にも適度な淫猥さを持たせて女体そのものの煽情性を十分に喚起。
アニメ/エロゲー絵柄的なキャッチーさのある絵柄をベースとしつつ、作画密度の高さもあって適度に濃さ・重さを含める絵柄であって、ダーク&インモラル系の雰囲気によくマッチ。作画密度の高さによってフルカラー絵とモノクロ絵に印象の差異が少ないのも美点であって、表紙と同クオリティの作画を一貫して楽しめます。
【シチュエーション形成の上手さが実用性を形成】
複数のエロシチュをザッピング的に魅せていく第5話や複数連載を1話にまとめた最終話など、エロシーンを分割構成で示すこともありますが、その場合でも細切れな印象は無く、ページ数相応にエロシーンには十分なボリュームがあるため、抜きツールとしての満腹感は終始高くなっています。
意識操作によってヒロイン側が主人公をイジメていると認識しているため、主人公への罵りや強気な態度、自ら積極的に行為を主導することなど、ヒロイン達に性行為をされてしまうという表層に男性にとっての被虐的なテイストを含ませつつも、それすら男性側の思い通りになっているという嗜虐的な様相を明瞭にしており、両者のブレンドが催眠エロとしてもエロシチュとしても独特な面白みになっていると感じます。
肉棒を丁寧に掃除させるご奉仕フェラ、3人に同時にセックス奉仕されるハーレム的セックス、露出や羞恥系シチュエーションなどの変態プレイ、全員のアナル処女を散らすプレイ、ラブラブ子作りセックスなどなど、様々なエロシチュを用意しており、それらが催眠術によって強制されていることを自覚できずに、怖い存在であったいじめっ子美少女達がそれらの行為で嬉々として淫らな痴態を晒す出すというギャップそのものが実用性の基盤を形成しています。
催眠術の呪縛から逃れようとしつつ仕込まれた強烈な快楽に抗えず~といった催眠外でのものを含めて、シチュエーションとしての魅力で実用性を打ち出す分、エロ演出の威力に依存することなくエロの濃厚さを打ち出せているのは大きな強みと言えるでしょう。

前述した様に被虐と加虐が入り混じるシチュであるため、主人公を“イジメ”抜いて満足そうな表情と罵り台詞で白濁液を受け止めるフィニッシュもあれば、快楽に蕩けさせられて強烈なアクメを中出しで叩き込まれるフィニッシュもありますが、いずれにせよ好き放題に中出しされる状況であることは確かで、背徳感をベースに抜き所としての十分な威力を備えています。
催眠シチュ・常識改変シチュはエロ漫画的にポピュラーなものではありつつ、話として単調になったり、似通った話が多くなったりしがちなのですが、そこを作劇面とヒロインのキャラ性で上手く調理してユニークで読み応えのある作品に仕上げてきたことに大変感心しました。ダーク&インモラル系の要素に抵抗が無いのであれば、大変にお勧めな作品です。