
主人公の仇も早々と登場して、主人公の設定にある重い使命が見えてくるなど、ストーリー展開にスピード感があるのもいいですね。
さて本日は、赤月みゅうと先生の『ラブメア❤』下巻(ティーアイネット)のへたレビューです。前単行本『ラブメア❤』上巻(同社刊)のへたレビュー等もよろしければ併せてご参照下さい。
ご都合主義満載の美少女ハーレムの棚ボタエロ嵐が吹き荒れる中で真摯なテーマ性が浮き上がる長編作となっています。

なお、内容の理解のためには上巻の読了が必須なので、まだ該当作を読んでない方は前単行本を読んでから下巻を読み進めることを強く推奨します。
1話当りのページ数は16~60P(平均31P)と非常に幅が大きいながら平均値としては標準を大きく上回っており、ストーリーとしての読み応えもエロのボリューム感も十分に強く仕上がっています。
【スベスベ柔肌に包まれた女体の大盤振る舞い】
誰とでもセックスできる“性交許可証”やら時間停止アイテムやらと、主人公に都合の良いギミックが多数登場することもあって手当たりしだいに女性へ手を出したり、逆に多数の女性に襲われたりするため、登場してエロシーンのある女性キャラクターは多岐にわたります。
クラスメイトの女子校生級キャラクターを中心に、モデルや美人アナ、女教師といったアダルト美女も登場していますが、主人公に過去のある出来事を思い出させることになる幼馴染の少女・サクラと、主人公の憧れの女性である茜さんを除けば、基本的にはエロ要員の役割にとどまっており、その上で謎の少女・ラブメアとの関係性が物語の軸として浮上していきます。

バスト&ヒップの存在感や肉感を前面に出すタイプの女体描写とは異なりますが、複数人エッチが多いこともあって、そのたおやかな肢体に包み込まれる幸福感やエロ可愛い痴態が量的に充実していることが大きな特長と言えます。
なお、多数の魅力的な二次元ガールを配置しつつ、後述する様に男性主人公そのものの在り方にも視点が移っていくストーリー展開であり、自分のエロ妄想を形にする創作者としての主人公に魅力を持たせる展開になっていたのも評価したいポイント。
十分なキャリアと高い執筆速度を備える作家さんであり、表紙絵と完全互換で絵柄は安定しており、決して演出密度を濃厚にすることに突っ走るスタイルではないながら、多人数エッチなどのカ口リーの高い画を多数投入して、物理的なページ数以上の満腹感を生み出しています。
【多彩なご都合主義ギミックを搭載のヤリまくりライフ】
抜きツールとしての満腹感は高く仕上げられており、終盤で一気に充実していくテーマ性の完成を含めたストーリー展開を形成させつつ多数の美少女・美女ヒロインとセックスしまくりのウハウハ感を上巻に引き続き充満させています。

前述した通りに、多数の美少女にセックスを求められたり、逆に自由にセックスが出来たりという状況であるため、次々とフェラやら中出しやらを敢行していくドライブ感の強いエロ展開となっており、個々のタメには欠ける傾向はあるものの、抜き所を多数搭載した仕様。
エロ演出的には過激な手法はほぼ選択せず、柔らかく温かい肢体に包まれる幸福感や密着感、たっぷりと淫液を潤滑する秘所に出し入れする気持ち良さを表現する台詞回しや結合部見せつけ構図、熱っぽくトロンと蕩けるヒロインの表情付けなど、ベーシックで抑え目の演出を高い質と十分な積み重ねで魅せていくスタイルと言えます。
個々のシチュエーションのウハウハ感の打ち出し方も魅力であり、オーラスのラブラブHの高揚感や、ヒロイン達に誘惑され搾精されるドタバタ感、強制エッチの嗜虐性など、過度に演出を変化させずにそれぞれの味を出していく描き分けも、複数のエロシチュを入れ込んだ作品に必要な技術力と感じます。
【愛とは何かという問い掛けへの答え】
斯様にウハウハ感満載のエロシチューションを次々と投入しながら、本作はその与えられた幸福感に耽溺し、思考停止の満足に至ることを強く否定しています。
次第に妄想に浸食されていく現実世界、実は自分自身が用意し、また同時に忘失していた存在への残酷な仕打ちを、主人公が自らの意志を以て如何に乗り越えていくかが終盤の大きなうねりを生み出しており、SF漫画家としての側面を持つこの作家さんの面目躍如であると共に、創作者の創作物への愛や責任を感じさせる作劇は“漫画家漫画”としての色彩を帯びていきます。

本作は、エロ漫画的にポピュラーな各種エロギミックを用いたご都合主義的な展開を否定するものではありませんが、ただ“与えられる”だけの愛を肯定するものでもなく、相互に明確な意思を以て与えるものが愛であるという答えを終盤に用意しています。
作中で幾度か触れられた“愛とは何なのかという問いへの答え”も妄想の具現化という形式で表現された“現実を改変する力”も、ヒロインによって一方的に与えられるものではなく、創作者としての主人公自身の内に元からあったのだという描き方は、“漫画家漫画”として真摯で美しいテーマ性であると評し得るでしょう。
幸福感満載のハーレムエロ漫画を得意としつつ、そこに隠された意図やそれを乗り越えて誠実で幸福な恋愛関係を勝ち得ていくドラマを描くこの作家さんが描いたからこそ、メタ的な視点での説得力や情熱を感じさせた秀作であると総括したい所存。
上巻に引き続きの棚ボタハーレムエロ大充実で抜きツールとしての幸福感を維持しつつ、それを損なわずに“これぞ赤月みゅうと作品だ!”と快哉を叫びたくなる終盤の盛り上がりを形成した構成力は見事。
がっつり実用的読書を楽しみつつ、ラストの怒涛の展開にジーンとなる読書感を是非お楽しみください。お勧め!