
ア・バオア・クー戦域において、戦いを宿命づけられた二人の運命はどう交錯するのかハラハラしております。
さて本日は、紙魚丸先生の『QUEENS GAME』(コアマガジン)のへたレビューです。なお、先生の前単行本(初単行本)『JUNK LAND』(同社刊)のへたレビューもよろしければ併せてご参照下さい。
“クイーン”たる美少女・美女との人間関係およびセックスの攻防戦を描く作品集となっています。

収録作は、名目上の“彼氏”から性の捌け口として扱われ、しかも彼氏が別の少女と付き合うことになって捨てられたヒロインによるある種の復讐を描く連作「都合のいい彼女」前後編(←参照 “彼氏”とのセックスについて 同作後編より)、女性教師に告白した気弱なショタボーイを別の女性教師がつまみ食いして妙な三角関係となる連作「いただき!生徒指導」前後編、および読み切り形式の短編5作。
1話・作当りのページ数は12~26P(平均22P弱)と標準的な部類で推移。重厚な作劇ではないものの、読ませるシナリオワークであり、エロシーンも抜きツールとして質・量共に充実しています。
【お気楽エロコメからダーク系まで共通する要素】
現実的なドライさを伴うサバサバとした雰囲気の中で若い男女の色恋沙汰を描く前単行本と同様の系統に属する作風が目立ち、ちょっぴり変態さんなツンデレ娘とのストレンジ・ラブな短編「Transformation Girl」(性癖としての変態と素直になる変化(変態)のダブルミーニングなタイトル)や少年と従姉が互いに自分と相手の性を意識してエッチに至短編「夏のバス停」などが代表例。
マッドな科学部ガールがエロ薬で真面目で男臭い風紀部委員長を逆レイプな短編「室井蘭の異常な愛情」といった棚ボタ的なエロコメ成分の強い作品も存在し、メガストア系列らしい読み口の良さやセックスの快楽そのものに素直な比重を置く描き方は、抜きへの集中度を増す要素としても機能としています。

ラブコメ・エロコメ系統においても、セックスの快楽をシンプルに認識・肯定しているような描き方をしつつ、これらのダークさもある短編で描かれるように、セックスを媒介とした支配・被支配の喜びや、既知と思っていた相手の中にある未知の部分への驚きといった対人関係の中でこそ快楽が発生するという描き方は、雰囲気の明暗に関わらず作劇に旨味を与えていると評し得ます。
恋愛模様にしろ性愛の攻防を繰り広げるゲームにしろ、男性(少年)側が性愛に対して比較的シンプルで素朴な捉え方をしている一方、女性側がそのシンプルさを翻弄する複雑性を有している対比も特徴的であり、前述した一見シンプルでありつつ複雑性を内包する描き方と共通する部分と個人的には感じています。
これらの要素を大上段に構えるタイプでは決してなく、サバサバとした雰囲気を崩すことはあまりないため、過剰な重さは排しておりますが、ラブコメ・エロコメ系とインモラル系が好対照を描きつつ、本質的な部分で共通性を有している統一感は一つの魅力であると評したいところ。
【その複雑性を以て男性を“支配”するクイーン達】
ヒロイン陣の年齢構成はハイ・ローミックス(誤用)であり、ミドル~ハイティーン級の美少女キャラクターと、20代前半~後半程度と思しきアダルト美女達とを投入。
短編「夏のバス停」の快活な田舎ガールや連作「いただき!生徒指導」に登場するショタボーイの告白にどきまぎしてしまう女教師さんなど、純朴な女性キャラクターも登場する一方、短編「富豪のお嬢様」に登場する高慢なお嬢様や短編「Transformation Girl」のドSでドMな女子大生等、男性に対して優位に立つキャラクターが多いことが特徴的です。
単行本タイトルにも“QUEEN”とあることもそれを示していますが、軍装にムチ的な分かり易い“女王様”キャラクターを設定しているわけではなく、前述した複雑性を以て男性の心とち○こを支配したり、強くとらえたりといった意味で男性に対して優位であるキャラクターとして理解するのがおそらく正しいでしょう。

連作「都合のいい彼女」に登場する、いわゆる“鬼太郎”ヘアの女の子や、ボサボサヘアー&メガネなマッドサイエンスガール、黒髪ロング+メガネ+釣り目の女教師など(←参照 ツリ目美女とか好きだから! 短編「Ticket to lead」より)、正統派?な美少女・美女キャラクターから敢えてずらしたキャラデザ要素を盛り込んでおり、比較的地味にまとめつつそれこそが好事家にとっては喜ばしい要素。
思春期中期の育ちかけボディな美少女や、やや貧寄りの並乳スレンダー女性なども投入しつつ、概ね程好い肉付きで巨乳をお持ちのスタンダードなボディデザインが目立ちます。絵柄の特性もあって、比較的淡白・端正な印象が目立つ女体描写であり、肉感や煽情性をストレートに前面に押し出したタイプではなく、読み手の嗜好によっては物足りなさを感じる可能性はありますが、前述の地味系なキャラデザインとの相性は非常に高いと評し得ます。
成人向け以外でのジャンルでも幅広く活躍されている通り、作画密度が低くないにも関わらず全体的にあっさりとした印象のある絵柄であり、エロシーンである程度アタックの強い演出・構図を用いても重さや濃さを随伴させないタイプ。表紙絵は中身の絵柄と完全互換であり、絵柄の安定感も強いのでジャケ買いでも特に問題はないでしょう。
【的確な構図と抑え気味のエロ演出で魅せるエロ描写】
セックスも含めた駆け引きに重点のあるシナリオ構築であることもあり、エロシーンは抜きツールとしての標準量を十分確保した上で、性交の主導権を取り合うエロ展開を描いています。

前戯パートの比重な作品によって軽重の差異がありますが、ヒロインが積極性を示してフェラや手コキで男性のち○こを落としにかかるパターンが多く、奉仕としてのプレイではなく自らの体や技術によって男性を圧倒する満足を得る行為として表現されていると言えます。
この後、ヒロイン達のパイパンま○こに挿入を許可されて開始される抽挿パートでこそち○こ保有者の男子連中の失地回復のチャンスがあり、女子達の予想を超えるパワフルピストンで彼女達を圧倒するケースも多々見受けられ、一定の攻撃性・嗜虐性を喚起することで女性主導一辺倒に偏らない様にバランスを取っています。
全般的に特出すべき演出手法はなく、絵柄とマッチするシンプルな痴態描写でまとめている印象ですが、結合部見せつけ構図を重視しつつ女体のしなやかさ・柔らかさを表現する的確な構図・ポージングの良質さや、高揚感のある表情付け、密度低めながら快感を伝える擬音・台詞表現など、押さえるべきポイントは押さえた演出で煽情性を積み上げていきます。
前戯パートで射精シーンを投入した上で、抽挿パートでも中出し連発を設けるなど、複数ラウンド制を基本とするスタイルであり、エロ展開の攻防の変化もあってそれぞれの射精シーンでテイストが異なるのも魅力の一つ。フィニッシュシーンは断面図等も絡めつつ、すっかり喜悦の表情を浮かべるヒロインの子宮内に白濁液をビュービュー注ぎ込む中出し描写を1Pフルで提供しており、派手さを控えめにしたエロシーン全体の構成と違和感を覚えさせないようにしつつ、適切なアタックの強さを発揮していると感じます。
キャラクター属性やエロシチュエーションなどに関してややニッチな属性を狙った印象はある一方で、徐々に魅力的な女性に心と体を絡め取られていく倒錯性を、じわじわと読み手の心中に湧かせる手練れさは幅広い層に受容され得るとも感じます。
強いて選ぶのであれば、黒髪ロングメガネ巨乳(YEAHHHH!)の酔いどれ女教師さんに痴漢したら逆レイプされる短編「Ticket to lead」が個人的に最愛でございます。