
俺提督、雷ちゃんが最愛なのですが、彼女がもっと活躍するアンソロジー作品も読みたいですなぁ!
さて本日は、緑のルーペ先生の『ガーデンⅡ』(茜新社)のへたレビューです。なお、(成年向け)前単行本『ガーデンⅠ』(同社刊)のへたレビュー等もよろしければ併せてご参照下さい。
蓄積された性愛の歪みが弾ける衝撃のストーリー展開と美少女が狂おしく蕩けるエロ描写が魅力的な1冊となっています。

なお、第1巻を未読であるとストーリー全体の展開やその魅力を理解することに大きな支障となるので、未読であるならば1巻と併せての購入を強く推奨します。
1話当りのページ数は24~36P(平均28P)と書店売り誌初出として中の上クラスのボリュームで推移。長編作として強いドラマ性を有しており、ストーリー性を重視しつつエロシーンも抜きツールとして十分な分量があるため読み応えのある1冊と評し得ます。
【メインヒロイン・ひつじちゃんの魅力の高さ】
第1巻において主人公の幼馴染と先輩の二人の少女が“ガーデン”へと呑み込まれていったため、ストーリー展開からはほぼ退場しており、第2巻ではメインヒロインひつじちゃんと、主人公に懐いている従妹のにんじんちゃんが主たる女性キャラクターとなっています。
他のサブヒロイン同様に、従妹のにんじんちゃんもガーデンへと入っていくことになりますが、彼女の場合は他のサブヒロインと異なり自発性が無く、彼女との近親相姦を望む父親に半ば連れ込まれる形となっており、硬軟織り交ぜた卑劣な調教によって変容させられていく様は、今回においても寝取られ的な色彩を生み出しています。
本作はあくまで主人公とひつじとの関係性に重点を置いたストーリーとなっており、にんじんちゃんも他のサブヒロインと同様にストーリーの帰趨にさほど大きな影響は与えません。父親との“愛情”に幸福を見出し、父親のために他の男性とのセックスすら厭わない一方で、自ら正常とは認識できないその状況に疑問や不安を感じる二面性の中で揺れ動くひつじのキャラクターは、印象的な鼻血なども含めてクールな容貌の中に含まされた雄弁な感情描写を以て描かれています。
ある種の洗脳によって作り出された父親への愛情と信頼、そこへの恐怖や不安、「大切な友人」である主人公への想いといった様々な側面を抱える中で、時折見せた素直な感情と蓄積されていった強烈な歪み・淀みの対比が魅力的に描かれており、同時にストーリー展開を大きく左右する要因でもあります。

適度なデフォルメ感や萌えっぽさを有するアニメ/エロゲー絵柄でありつつ、くどさが少なく端正な美しさが先行するタイプであり、西洋人形のような美しさと評されたひつじちゃんのキャラデザインとの相性は非常に高め。長編第1話の時点と比較すると多少の絵柄の変遷は感じますが、絵柄の美点そのものはぶれておらず、評価に大きく影響するものではありません。
【美しく柔らかい美少女の肢体が淫靡に乱れる痴態】
ストーリー重視の作品構築でありつつ、他人との関係をセックスでしか構築できない様に育てられたひつじをメインに据えていることもあって、エロシーンの尺は十分にあり、実用性を高めつつ話の展開とのつながりもしっかりと形成されています。
後述する様に、本作のメインテーマは別にあるのですが、ハーレムラブコメよろしく存在する主人公の周囲の美少女達が、別の男性達に次々と奪われていくという“寝取られ”的な側面を有しているのも確かであり、父親によって調教されるにんじんちゃんや、父親に対して性的な奉仕を続けるひつじの強烈な痴態は、主人公とそれに同調する読み手にとって手酷い喪失感をもたらすものとなっています。なお、逆に主人公とひつじのセックスは、登場頻度こそ高くないものの、ストーリー上非常に重要な転換点になっています。
肉体的にも華奢さのあるヒロイン達ですが、年齢相応に精神的な弱さ・もろさも有しており、そこに付け込んだ大人達(父親達)が自らの理想や欲望を一方的に叩きつけるセックス描写は、男性達の歪みとヒロインの純粋性が鮮明に対比された上で、後者が快楽によって浸食される様に悲愴感と強烈な背徳感があると評し得ます。

性器描写なども淫猥さよりかは綺麗な印象を先行させたタイプですが、スベスベした柔肌や控えめサイズの秘所などが各種の淫液によってぬるぬるになり、濡れた肌や粘膜が絡まり合う描写はグッと煽情性が高まっています。本作のセックスが、その根幹が何であれ、他者を強く渇望するものであることは、肌の接触や、膣の最奥までの挿入といった面で視覚的にも表現されていると言えるでしょう。
舌を絡めあうキスや淫洞の全てをぬめった水音を奏でながら擦り上げる抽挿、抱擁などでヒロインの肢体を味わい尽くし、涙や涎で濡れた蕩け顔を曝け出すヒロインにたっぷり中出しを決め込むフィニッシュシーンは1Pフルでアタック強く描かれています。シナリオ展開と併せるために、やや変則的なエロシーンの組み立てになることもありますが、概ね要点となる抜き所の複数配置が図られているのも抜きツールとしての美点でしょう。
【少女を苦しみの檻から救い出す本当の愛】
父娘の肉体関係や寝取られ展開なども含め、強烈な歪みを蓄積し続けたストーリーは、その歪みが蓄積に耐え兼ね一気に弾けることで終盤の衝撃的な展開を生み出します。
人が人である以上、“誰かの理想”であることが出来ないこと、その一方で愛する人の希望を叶えたいことの矛盾の苦しみを一身に抱え続けたヒロイン・ひつじは、心を閉ざして盲目的に父親の理想に追従することになるのですが、主人公との出会いと友情によって新たな希望を見出すと共に、激しい動揺とそれ故の精神の崩壊にさらされます。
未読の方にとっての話の旨味を損なわないために詳細な記述は避けますが、歪んだ関係性の行きつく先まで行ってしまった彼女にとっては、自らの心を殺して父親の理想に殉じるか、贖罪を抱えながらも新たな生を勝ち取るかのどちらかしかなかった上で、著者の前作『イマコシステム』と同様に、本作は後者の道を主人公と共に歩ませることを選択します。

取るに足らない出会いで知り合った主人公は、派手な大立ち回りをするわけではありませんし、全てのヒロイン達を救済できる存在でもありませんが、ただ単にひつじに優しく接し、彼女を彼女として受け止めたこと、それ自体が彼女にとっての大きな希望と原動力になったと言えます。
とどのつまり、本作は凶悪な寝取られ展開やミステリアスな設定などの外装をまといつつ、本質はごく王道で普遍的なボーイ・ミーツ・ガールであったと言え、肉体的な快楽を超越した心のつながりが、主人公がヒロインを受け止めると共に、苦しみ続けたひつじちゃんを救済したと評し得るでしょう。
2巻構成ということもあって、ストーリーの練り上げと表現力は『イマコシステム』に比して大きくレベルアップしており、終盤の展開には引き込まれると共に優しさに包まれるハッピーエンドを素直に祝福したい気持ちになりました。
次回作は、より抜きメインの作品集としたい旨をあとがきに書かれていますが、今後も是非ストーリーを重んじた作品を描き続けて頂きたいと期待したいところ。お勧め!