
しかし、リコのアドバイスを受けての、マキの上目使い&舌ペロッ♪の表情はホラーめいてましたな(笑
さて本日は、ハッチ先生の『いもーと未成熟』(ヒット出版社)のへたレビューです。なお、先生の前単行本『うさぎのこえ』上下巻(同社刊)のへたレビュー等もよろしければ併せてご参照下さい。
兄妹モノを中心として“駄目”な人間達が織り成す噛み合わない関係とセックスを描いた作品集となっています。

1話・作当りのページ数は6~30P(平均22P)と幅はありつつ、掌編「病的犯罪者」を除けば中の上クラスのボリュームのある作品群。作劇面で大きくドラマ性を構えた中編作と、概ねコンパクトにまとめた短編群で読み応えは異なりますが、エロとシナリオの存在感のバランスの良さはいずれの作品でもしっかりしていると評し得るでしょう。
【人の弱さや愚かしさを否定も肯定もしない描き方】
ロリエロ漫画でもあるものの、本作は兄と妹の関係性を主題とした作品が多く、ヒロイン達の“未成熟さ”を作劇における重要な要素としつつ、必ずしもそこに囚われない描かれ方となっています。
この作家さんの哲学として、近親相姦は須らく“禁断の行為”であって、それを行ったものに安易なハッピーエンドは与えられないというものがあり、今単行本においても割合にイージーに兄妹のセックスに雪崩込みつつも、二人の別離や埋まらない距離感、他の人物の介入といった寂寥たる要素も含まれるので、ハッピーロリータ系をお望みな諸氏は要留意。
中編作に登場する、かつての様なヒットに恵まれずに零落れつつあるミュージシャンや学校や家庭で阻害されがちな少女、その妹に想いを寄せつつも近親者として行為には踏み込まない兄といった登場人物達も含め、性欲を上手くコントロールできない男性(短編「ダメにい」)や家庭環境に恵まれない兄妹(短編「スマイルきっこちゃん」)など、愚かしさや弱さ、不遇さを抱えた人物が数多く描かれるのは、今単行本にも共通するこの作家さんの一つの特徴。

漫画チックにコミカルな表現があったり、ギャフンオチ的な平和な空気感があったりと、特に短編作では適度にマイルドな印象を有しているのですが、その一方で、お馬鹿な様相や手前勝手さを示しながらも、個々の登場人物は極めて切実であったり真摯であったりする想いや願望を有して行動しているというのも、締まった読書感を生む要因でしょう。
SF/ホラー的な要素を含む掌編「病的犯罪者」も含め、作中において安易な解決が与えられない分、ある種のもやもや感を残す作品が多いのですが、その読後の余韻がハッチ作品の一つの魅力であることは間違いないと言えます。
【心身ともに弱さ・儚さを感じさせるロリ妹ヒロインズ】
時にはママさんなどの熟女キャラクターも描く作家さんですが、今単行本はギリ二桁~ミドルティーン級と思しきロリータ少女達で完全に統一されています。
掌編「病的犯罪者」を除けば、肉体関係の有無は別として、兄妹の関係性を作品の中核に据えるストーリーとなっており、妹キャラクターがほとんどを占めるというのも今回の一つの特徴。
ヒロイン達は、ちょっとした諍いから意固地になって兄と仲直り出来ない妹や、兄の底無しの性欲を何とか抑えようと奮闘する妹、自分の立場で雁字搦めになってしまった妹、大人達に利用され続け、自暴自棄になってしまう少女など、幼さ故の不器用さや弱さ、愚かしさを持ったキャラクターとして描かれているのは前述の通りであり、そこが彼女達の長所でもあり短所でもある印象を受けます。
男性キャラクターも、やはり不器用さや愚かしさを持った存在として描かれており、そのことが男女間の関係性のもどかしさや噛み合わない寂しさなどを喚起。少女の無智や弱さに付け込み、搾取する“悪者としての少女性愛者”もいれば、性的欲望を抱えながらも大切な何かを守ろうと奮闘する男性キャラクターもおり、彼らがどう動くかは作品の印象を大きく左右する点。

表紙絵では彩色やデジタル処理などもあって、かなりキャッチー寄りな印象となっていますが、中身の絵柄はよりシンプルで適度なラフさを有する漫画絵柄であることには要留意。以前よりも特にキャラデザに関して丸みを増すデフォルメを取り入れた感があり、ロリっ子達の可愛らしさの増強に貢献していますが、必ずしも万人向けとは言い難い絵柄であるのも確かでしょう。
【シンプルでありながら生々しさのあるエロ描写】
掌編を除けば、各エピソードに十分なページ数があり、またシナリオ展開とリンクした性描写であるために分割構成こそあるものの、読みをスムーズに保った上で十分な尺を用意したエロシーンであると言えます。
愛し合う兄妹のほのぼのとした和姦もある一方、売春や騙しエロなど、少女の弱さに付け込むエロシチュエーションも散見されており、弱者が弱者を虐げる悲哀や無力感、または禁忌感などが、ある種のスパイスとして効果を発揮しているとも言えるでしょう。
前述した様に割合とシンプルな絵柄であることに加え、擬音や台詞、液汁描写などの演出を潤沢に付与するスタイルでもないため、絵としての即効的なアタックの強さは乏しく、小ゴマの多さなどもあってやや窮屈な印象があると個人的には思います。

なお、結合部見せつけ構図など、女体をストレートな淫猥さを以て描き出す叩き出す一方で、男性の体躯の存在感をある程度重視したスタイル。少女の肢体の小ささやか弱さを対比的に強調する役割を果たす一方、体の密着感の形成による臨場感の喚起や、重なり合う体とすれ違う心の乖離の表現といった役割も担っているように感じます。
表現としての濃さや激しさには欠ける一方、ズコズコといい意味で野暮ったい擬音を奏でながら進行するピストン運動は、十分な力強さを有しており、一定の露骨さを有した結合部描写などもあって中出しフィニッシュへ向かって力走を見せます。フィニッシュで明確な盛り上がりを形成するというスタイルではあまりなく、その後も性行為が続くことも多いため、エロ展開中盤以降の盛り上がりに比してやや抑揚を欠く終盤と感じるのは多少の減点材料ではあります。
抜きツールとしての評価は、特に絵柄や演出手法などの好みが合うか否かによって大きく変化すると思われます。ストーリー性についても、好みが分かれる面があると思いますが、単純に印象の好悪を定めることが難しいことそのものに魅力がある作劇とも評し得ます。
個人的には、感動的な盛り上げを最終盤できっちりと形成しつつ、ラスト2コマで切なさを醸し出す中編「遥の歌」に唸らされました。