
本シリーズ屈指の不憫キャラ・銀鈴さんが(今のところ)元気に活躍していて嬉しいです。しかし、呂布の描き方がかなり横山先生リスペクトな印象がありますな。
さて本日は、しでん晶先生の『ふぇち乙女系』(三和出版)のへたレビューです。なお、先生の前単行本『キャンディーガール』(三和出版)のへたレビューもよろしければ併せてご参照下さい。
フェチズムの妖しい香りが漂いながら快楽全能主義のカラッとした明るさでも魅せる作品集となっています。
収録作はいずれも読み切り形式の短編で10作。1作当りのページ数は16~20P(平均19P強)と書店売り誌初出としては標準を多少下回る程度のボリューム。
この分量もあってか、エロ・シナリオ共に軽めの作りなのですが、それでいて味わいのある魅力をしっかり沁み込ませており、そのさっぱりとした読み口をむしろ魅力とするスタイルとも言えるでしょう。
【性への好奇とそこでの充足に包まれる幸福なフェチズム】
うら若きヒロイン達のそれ故に直接的で勢いのある性への好奇心や希求を作劇の中軸に据える作風を今単行本においても同様であり、今回に関してはそれを変態チックな性癖やフェチっ気のあるエロシチュエーションと関連付けています。
男性のごつごつとした手に欲情する性癖の女の子(短編「手フェチなあたし」)や、男のすえた汗の臭いに夢中になる少女(短編「スメルラブガール」)などは、前者の好例であり、紆余曲折はありながらも彼女達の願望が充足される流れとなっています。
また、睡姦やノゾキ、浮気エッチ、ロリっ子に組み敷かれてのエッチなどなど、少々特殊なプレイを絡めることが後者の方向性であり、決してアブノーマル系としての濃厚さを有しない一方で、ほのかに妖しい非日常に包まれていく描き方が実に魅力的。

シナリオ全体としても割合に定石を重視している様で、主人公が偶然に日常の隣にある非日常に足を踏み入れる短編「PINK ANIMAL GIRL」、カップルの男女の情熱的な性を描きながら視点をもう一人の女の子に据える短編「夏マツリヒメゴト」など、凝った作劇や奥行きのある描き方をしているのも特長。
それらの美点を前面に出すスタイルでは決してないので、悪く言えば総じて地味なストーリーテリングなのですが、それでいて平凡さを感じさせない面白みを意識させる作劇であり、胡乱な表現ですが、ちょっと“玄人好み”なスタイルでしょう。
【多彩なキャラ設定・肢体設計で魅せるエロエロガールズ】
ヒロイン陣の年齢層は比較的幅広く、ローティーン級のロリっ子ちゃんから20歳前後と思しき女子大生クラスの女の子まで登場。ただ、中核となる年齢層は女子高生さんとなっています。

“ビッチ”キャラ的な描き方と言っても間違いではないのですが、それでいてカラッとした明るさやそんな女の子達と一時の逢瀬を楽しむ非日常感がヒロインの描き方から沁み出てくるのもまたユニークな美点。
殊に妖しく微笑む女の子達の描写は、この作家さんの最も得意とする要素であり、ロリっ子が年齢不相応な妖しさを醸し出したり、年下の思春期ガール達が彼女達の年齢故に許された奔放さで男性の心を絡め取ったりな様は、なかなかに他の追随を許さない魅力でしょう。

単行本通して安定している絵柄は、キャッチーネスや萌えっぽさを強く打ち出すタイプと大きく異なり、健康的な色香が薫るすっきりとしたタッチの漫画絵柄。これまた悪く言えば地味なのですが、それ故のエロ演出での熱っぽさや表情付けでのエロティックさのノリが良いタイプであり、ヒロインの魅力やエロの高揚感を引き立てるタイプとも言えます。
【快楽の充足感に包まれる情熱的なエロ描写】
ヒロインのキャラクター性を重視する分、その魅力によって形成されるセックスへの導入パートに一定の分量を割いており、必ずしも長尺のエロシーンをたっぷり濃密に味わえるタイプではないことは要留意。
とは言え、抜きに供するには十分な分量を用意しているのは確かであり、また前述した様に各種の倒錯的なエロシチュエーションの魅力を高めることに導入パートが大きく貢献している分、時に妖しげで時に開放的なセックス描写の魅力に量的な不足感をあまり感じさせないのは作品構築における生命線でしょう。

この点はやや実用面での評価に影響する要素と思われますが、それでいてアヘ顔やハートマーク付きの白痴系エロ台詞を投入しても、決してやり過ぎ感がないのは絵柄の特性やあくまで幸福な快楽として描くスタイルに所以するものであり、ある意味では穏やかさや充足感を保っているとも言えるでしょう。その意味で過激性や突破力に欠ける傾向もありますが、着実に煽情性を積み重ねていくタイプと評し得ます。
フェラやパイズリ、手コキにオナニーなど前戯パートを重視するのはフェチっ気のあるエロ描写として正攻法なのですが、その分抽送パートの分量は抑えられがちであり、ピストン描写からフィニッシュまでの流れにややタメが欠けるのは減点材料の一つ。
もっとも、意外にストレートな卑語も含むエロ台詞とすっかり行為に夢中な表情を曝け出すヒロインの秘所をピストンして迎えるフィニッシュは相応にパワフル。ただし、そこでの強烈な盛り上がりを意図するタイプでも決してなく、緩やかにフェードアウトさせていくケースもあるのは、好みは分かれるでしょうが、妙に現実的で面白いところ。
ヒロインのキャラクター描写や肢体の現実的な艶めかしさ、穏やかさと程良い攻撃性が調和するエロ描写など、この作家さんの“らしさ”が良く出た1冊でありつつ、エロシチュやキャラ設定にバリエーションがあるのが嬉しいところ。
個人的には、好きな男の子のために美少女コンビがビッチを演じて激しく悶える短編「嫉妬っ娘パーク」と、失恋した男性が黒ギャルさんと一夜の逢瀬に慰められる短編「冬のまにまに」が特にお気に入りでございます。