
第88夜のエピソードが(毎度のことながら)しみじみといい話なんですが、まぁ、本当にたまにしか食べたくならない食べ物ですな、ハムカツ。昭和の香りがする揚げものといったところでしょうか。
さて本日は、たまちゆき先生の『子猫じゃないモンっ!』(オークス)のへたレビューです。なお、先生の前単行本『小麦色狂詩曲』(茜新社)のへたレビュー等もよろしければ併せてご参照下さい。
ラブリーな言動を示すランドセルガールズ達が恋にエッチに一生懸命なハッピーロリータが楽しめる作品集となっています。
収録作は、毎度おなじみ華陵学園初等部において繰り広げられる少年少女カップル達の“性春”の日々をオムニバス形式で描くシリーズ作全11話+おまけ4コマ計13本。

なお、恋ちゃんとその彼氏・啓太君の馴れ染めに関しましては、前々単行本『恋の特別室』(オークス)に描かれているため、読んでおくと今単行本の楽しさが増します。
1作当りのページ数は16~24P(平均21P弱)と標準的なボリュームで推移。日常劇に分類される作品構築であるため、読み応えは強くありませんが、口当りの柔らかさとエロの量的満足感が両立されている印象です。
【少年少女達の平和なラブエロ模様】
カバー裏にみっちり書き込まれた作品解説が物語る様に、華陵学園という設定の中での作品世界を特にキャラクター面で綿密に構築しており、各シリーズ作が同一の時間軸にあるため、話に一定のリンケージがあり、長編作として読むことも可能でしょう。
とは言え、全体的に大きな方向へと向かっていく紡ぎ方ではなく、学園における彼ら彼女らのラブとエロの“日常”を切り出し、緩やかな群像劇として描いていきます。

しかしながら、共に男女の恋愛感情が大前提となっているのは変わらない点であり、後者に関しても、悪気はないがド変態のイケメン天才少年の無茶ぶりに“愛情”故にそれを全面的に受け止められるのだと、ヒロインである音子の心情を紡いでいるために、総合的な嗜虐性はそこまで強くありません。
元々、ハード寄りの凌辱エロも描ける作家さんですが、このシリーズにおいては、エロの攻撃性・嗜虐性のみを担保しつつ、その他の甘く優しいラブエロ作品との調和が強く意識されているとも評せるでしょう。
また、エロに関する“トラブル”はあっても、男女間における感情の伝達にネガティブな齟齬がないのは、全作品に共通しており、ラブいハッピーエンドできっちりまとめているため、読後感も良好なものに仕上がっています。
【ほっそりとした肢体の持つ背徳的な官能性が魅力】
計3名のヒロインはクラスメイトであり、初等部5年生のランドセルガールズで当然統一。なお、音子の彼氏君は高等部の少年ですが、恋とこころの彼氏君はやはり同級生であり、仲良しグループの面子となっています。
いわゆるキャラ属性が明確に付与されたキャラクター構築ではないものの、快活さや純粋性、直向さなどのローティーンの少女らしい善性が抽出されたキャラクターであることは共通。羞恥や自信の無さから素直になれないこともありつつ、恋愛・セックスの両面において彼女達の率直の感情・性欲が露わになることも作品の柔らかい雰囲気の形成に直結。
また、基本的にはヒロインに焦点を当てたシナリオ運びではあるものの、素直な恋愛感情が明らかにされる微笑ましさは男性陣にも共通しており、あるいは照れながら、あるいはクールにヒロイン達への愛の言葉を告げる様子も恋愛エロとしての幸福感を生み出しています。

ぺたんこなお胸や肉付きの薄いお尻、そしてツルツル&スージーな股間とロリータ少女としての定番要素も当然押さえており、成人女性の持つストレートなエロティックさを担う要素を敢えて全て排除した故に形成される背徳感を生み出すスタイルとも言えるでしょう。少々頭でっかちなバランスになりがちでしたが、この単行本も含めて特に近作では等身の整合性も増した感があります。
この嗜好の追求故にロリプニ感を求めるのは間違いであり、やや古典的な美少女絵柄ではあるのですが、現代的な萌えっぽさもある程度備えており、素朴な親しみやすさの中にいい意味での“あざとさ”が光るようになったとも個人的には感じています。
【快楽と羞恥に彩られるヒロインの台詞回し】
ページ数にある程度の幅がありますが、いずれのエピソードにおいてもエロには十分な尺を設けており、前戯パートおよび抽送パートそれぞれにボリューム感のある構成で安定しています。
羞恥系や露出系のプレイで音子ちゃんが恥じらう姿に至上の喜びを見出す変態彼氏君の活躍を描く中編「子猫じゃないモンっ!」が最たる例ですが、必ずしも性器結合を煽情性構築の至上とするのでなく、前戯やセックスの前振りに相当するプレイに趣向としての重きを置いている感もあります。

このカップルに比べれば、残り二人のおこちゃまカップルのプレイは平和なものではありますが、幼い故の好奇心と率直な快楽欲求、そして甘い恋愛感情によって互いに強く求めあう恋愛セックスはなかなかに熱情的なものとなっています。
通常の台詞のフォントに対し、太文字で描かれたラブエロ台詞にハートマークの修飾を施し、彼女達の乱れっぷりを演出。この台詞回しで緩急のリズムを明確にしつつ、ヒロインの肢体を見せ付ける大ゴマと各種情報の強化を担う小ゴマの画面配置も良好であり、エロ展開に緩みがないのは実用性を高く押し上げています。
基本的には1回戦をじっくり描くタイプであり、上述した露出プレイを核とする中編作もあって、射精シーンを連発させるドライブ感を期待するのは避けるべきではあります。とは言え、断面図や結合部ドアップも絡めた1Pフル~見開き絵での中出しフィニッシュはその“タメ”の解放点として申し分ないアタックの強さを有しているのが美点。
丹念に構築された“日常”においてロリっ子達とラブラブチュッチュッという世界観はまさに桃源郷であり、ストーリー性を求めることなくこの日々にこれからも浸りたい所存。次回にはカバー裏で愚痴を吐いている(笑)美咲ちゃんに彼氏が出来てエッチに発展するかが楽しみですな。
“素の自分”を恥ずかしがってカツラを日々変更という変わり種ヒロインのこころちゃんもキュートでしたが、個人的には実用面の強さもあってタイトル中編「子猫じゃないモンっ!」が最愛でございます。