
人間とアンドロイドを例え“区別”したところで、コミュニケーションは成立するわけですが、何処までいっても“中国語の部屋”なわけで、心とは何ぞやというテーマではありますなぁ。とまれ、サミィ可愛いよサミィ。
さて本日は、廣田眞胤先生の2冊目『大輔くんの非実在美少女+』(一水社)のへたレビューです。なお、先生の前単行本(初単行本)『エッチで自分勝手でカワイイ娘』(同社刊)のへたレビューもよろしければ併せてご参照下さい。
ユニークに過ぎるへんてこヒロイン達があの手この手で大輔君とのメイクラブにまっしぐらという楽しい作品集になっています。
収録作は全て短編で10作+ファンクを愛する某どっぐ先生との描き下ろしおまけ旅行漫画(3P)。
なお、前単行本では作品タイトルがメタル関連ばかりでしたが、今単行本ではメタル率が低下していてメタラーな管理人にしてみれば「ちぇっ」てなもんですが、大多数の読者には関係の無いことでしょう。
1作当りのページ数は16or18P(平均17P強)と控えめなボリュームで低位安定していますが、いずみレーベルとしては比較的厚めな単行本です。軽妙な雰囲気にこそ味がある作風ですが、フックの散りばめられた作劇であるため、適度な読み応えのある作品構築となっています。
【描き手の願望だだ漏れ感が素敵な甘々ラブコメディ】
作者の本名と同じ名を持つ“大輔”君達に様々なタイプの美少女がラブエロ構成を仕掛けるザ・棚ボタ展開を各作品において貫徹しており、そのことが生みだす(主に作者向けの)甘い幸福感が大きな魅力。

ご都合主義を如何に整理し、読み手に過剰に意識させないかがエロ漫画作品の構築において一つの重要な課題であるのに対し、そんなことは知らぬ!とばかりに恋とエロの全能的幸福を愚直に希求するスタイルは、「ねーよw」とツッコミを誘発させつつも読み手を思わずにんやりさせること請け合いです。
また、大輔君を含めた登場人物の素っ頓狂な会話の応酬が作品の楽しさを生んでおり、特に登場するストレンジガールズ達に関しては、盲愛系のヒロインとは異なり、意外に思考は真っ当なのですが、ちょっとつつけば溢れる想いによってあらぬ方向へと暴走を始める姿が実に可愛らしく、愛すべき脳味噌ゆんゆんガールとして描かれているのが楽しいところ。
この台詞回しの絶妙さも含めて作劇面でも一定のセンスを感じさせ、夢と現実の境界を曖昧にしつつ進行させる短編「でぃず・でい・うぃ・ふぁいと!」や、予想はしたけどそれでいいの?的な半分コミカル半分残酷なオチを設ける短編「ちょっと!」、やけに平和な寝取り/寝取られ劇な短編「ぶるーくらしー」などはその好例であって、平凡なラブコメ話に決して安住しないスタイルは頼もしい美点です。
催眠術とか寝取りとか、作家によっては真っ黒展開確定な要素が登場してもチアフルさが失われることはなく、大抵はしょーもない(誉め言葉)ギャフンオチでコミカルに話を畳んでいるため、読後の余韻もさっぱりとなるように仕上げられています。
【それぞれにユニークな魅力のある純情暴走ガールズ】

強いて言えばツンデレタイプが多いのですが、それぞれユニークな言動がしっかりと前面に打ち出されているため、一つとして同じタイプの女の子がいない印象もあるバラエティの豊かさは作品・単行本の両単位において魅力を形成しています。
なお、表紙絵で主張している様にメガネっ子の可愛らしさも大変よろしく、前単行本(9作中該当1作)に対して10本中3本にメガネ美少女が登場と増量が為されているのは属性持ちには嬉しい点でしょう。

一般的な男性向け絵柄に、少女漫画絵柄のゴテゴテした修飾性を無理矢理充填したかの様な独特の絵柄が特徴的ですが、その個性をしっかり残しつつ絵柄のキャッチーネスは前単行本に比して高まっており、純愛果実系の美少女絵柄の本道により近づいた感はあります。加えて絵柄に安定感が出てきたのも確かな成長の証でしょう。
ところで、セーターの細かい模様やスカートのチェック柄、ガーリッシュな下着類やパジャマなど、各キャラの衣装を非常に丁寧に描いているのは、地味な要素ながらも大変好印象であり、ヒロイン達の可愛らしさの増強に貢献してます。
【エロ演出の強さと甘い陶酔感が上手く調和したエロシーン】
基本的にヒロイン側の積極的なアタックに開始される棚ボタエッチは、コミカル成分も多分に混入させつつ十分な尺を設けており、抜きツールとしても十分に有用。
愚直なご都合主義の追求が生みだすピンクな幸福感もエロの盛り上げに寄与しており、各大輔君のことが大好きな女の子達がその全てを受け止めて快楽に蕩けていく様は何とも甘い居心地の良さがあります。
大輔君の妙に泥臭く力強い台詞と、それに応えるヒロイン達のラブいエロ台詞で画面を彩りつつ、ヒロインの各体パーツの肉感とトロトロに蕩けた表情を強調するコマを並べてエロ作画を構築しており、視覚的なアタックの強さは相応にしっかりしています。

このフィニッシュシーンも含め、ヒロインの蕩け顔の濃厚な陶酔感は強い武器であり、喜悦の涙で潤み瞳、紅潮する頬、そして輪郭線がほわほわに崩れた口腔などで構成されるエロフェイスをたっぷりと堪能可能。
丁寧な描き込みは口腔内や秘所などの粘膜描写にも活かされており、ねっとりとしたキスやフェラ、結合部見せつけ構図などでその威力をよく発揮しているのも抜き所の増加とそれに伴う実用性の増強につながっています。
カバー裏のあとがきでリスペクトを示している中年先生と、美少女キャラのユニークな造形と恋愛コメディの甘いハピネスの魅力が共通していますが、中年先生の作品は意外に繊細な叙情性を含有するマイナーコード系であるのに対し、溢れんばかりの願望で突き進む廣田作品はむしろパワーコード的と言ったところでしょうか(やや無理のある喩え)。
個人的には、長身ガールとチビ少年(&緑の憎いあんちくしょう登場)という管理人のツボを突く短編「てんだー・されんだー」と、サガミオリジナルが大活躍しない正統派ツンデレさんとのラブラブエッチな短編「まじっく・あんど・めいへむ」が特にお気に入り。“エロい!マストバイ!”とは敢えて申しませんが、楽しくて使えるエロ漫画をお求めな方には是非チェックして頂きたい良作であります。