
気球のイベント会場で元気いっぱいに動き回るお子様たちの姿も微笑ましかったですが、とーちゃんの大人気の無さが大変素敵でした(笑。「ゆめでもだめでしょ!おとななのに!」
さて本日は、白石なぎさ先生の『犯れる彼女』(一水社)の遅延気味へたレビューです。前単行本『母さんは発情期』(同社刊)のへたレビューもよろしければご参照下さい。
少年少女達の泥臭さを伴うエモーショナルな恋の熱情と体温感に満ちたセックス描写が力強い作品集です。
収録作は全て短編で8作。1作当りのページ数は16~20P(平均18P弱)と標準をやや下回る程度のボリューム。
なお、既刊の収録作の登場人物達がモブキャラとしてちょこちょこ登場しますので、話のつながりはほとんどありませんが、読んでおくと一層楽しめるでしょう。
題材としてはごく平凡なものを選択しつつも、終始重みのある感情表現を加えることで、読み応えを生み出しており、エロとシナリオのバランスもちょうど良い構成と思います。
【ラブコメ色を強めながら持ち味は依然鮮明】
表紙絵がママさんであった1冊目と2冊目は、シリアスなテーマ性を練り込んだ母子相姦作品がメインでしたが、今単行本は表紙絵の通り、これまでも存在感があった若い男女の恋愛ストーリーで統一。

「図書室は放課後の娼館」のような文学的要素の強い作品をこの作家さんに求めている同士諸兄にはこの辺りの路線変更はややネックになる可能性はあります。とは言え、“軽い”味付けとお気楽な展開を示しながらも、恋愛そのものをドラマチックに見せる演出は不変であり、読書感自体が軽くなっていないのは嬉しいところ。
時にお馬鹿チックだったり、時に文学的に大仰に構えたり、時に赤面モノのポエティックさがあったりする独特のモノローグも白石先生の作品の面白みの一つ。

イージーなラブコメ系の作品への転向については、ご本人にも忸怩たるものがあるとは思いますが、忌憚のない恋愛讃歌・人間讃歌が作品をしっかりと貫いており、これまでの持ち味も十分活かされていると個人的には思っております。
【ハイティーン美少女で統一という初挑戦】
登場するヒロインは、短編「春の夜は永遠」の女子大生さんを除いて、女子高生さんで統一。セーラー服にこだわりのある作家さんですが、今単行本では清楚なセーラー服姿が拝めるのは短編「すみみみっくす」の澄美ちゃんのみでちょっと残念ですな。
しかしながら、逆にセーラー服を脱ぐことが作劇上の意味を持つ作品もあり(短編「卒業式」)、やはりコダワリはあるのだなぁとも思います。その代りと言っては何ですが、陸上部のトレーニングウェア(スパッツ+タンクトップ)や上述のエロ水着、ブルマ体操服など、既刊に比べて衣装関連にはより幅があります。

特に表情の描き方に関してキャッチーさが前単行本以上に増していますが、やはり独特のクセが残っているのも確かであり、最先端の二次元絵柄で描かれるスレンダー巨乳美少女をお求めの方は要検討。
勿論、そのほっこりとした体温を感じ取れそうな肢体描写はこの作家さんの強みの一つであることは特筆しておきます。
余談ですが、相変わらず作中に『さよなら絶望先生』関係の小ネタが分かりやすいのから分かりにくいのまで散りばめられていますよ。
【若い感情と欲望が燃え盛るエロシーン】
濡れ場の分量は多いとは言えないものの、恋の熱量がそのままセックスへのエネルギーへと転換されるため、攻撃性は抑えつつパワフルな描写となっているのは抜き物件として好材料。
エロシーンにおいても泥臭い感情描写や愛の叫びが添加されていることは評価を分けそうですが、性欲であれつながっていたいという恋の願望であれ、登場人物達が率直な欲望を曝け出す様は一種の崇高さすら帯びています。

エロ演出においてかなり派手な要素を取り込んできた感があり、挿入時に全身を貫く感覚を電撃で表現したり、射精シーンでもの凄い勢いで飛び出す白濁液を描いたりする場合もあります。
やたらと派手さが目立ち始めたエロ台詞回しも面白いとも思うのですが、確かにパワフルさという面で合致はしているとは言え、作風に合っているかというとちょっと判断は難しい感もあります。
基本的には前戯1回+中出しフィニッシュの2回戦仕様であり、ヒロインが一生懸命舌を使う前者も互いの性器をガツガツぶつけ合う後者も、ちとボリュームに乏しいとはいえ、抜き所としては良好。
一水社系作品の難点である性器修正の厳しさについては網掛け面積大から僅少まで作品によって幅がありますが、性器描写を核とするエロ作画ではないのであまり気にはなりません。
エロ・シナリオ共に作風の一定の変化が認められ、これが今後どうなるのかは成長の面も強くあるため、かなり楽しみです。あと、図書館シリーズは次の単行本に描き下ろしとのことで、好事家としては楽しみに待っております。
個人的には、防波堤の上に立つ少女の「一人AIRです」発言に珈琲噴いたのとその恋心の純真さが素敵だった短編「すみみみっくす」とごく何気ない夕方の風景と二人の感情の動きが素敵な短編「二人の関係、秘密でしょ!」が特にお気に入り。