
速い曲もやりつつヘビィネスやメロディ的な要素にも気を配った曲も多く、多少の変化を示しながら“SLAYER is SLAYER”的な根本部分は全く変わっていないのが嬉しいですなぁ。解散の噂もありましたが、本人達が否定してくれていますし、その個性と進化がさらに続くことを予期させる好盤ですな。
さて本日は、さどっこ先生の初単行本『裂き乱れよ少女』(一水社)のへたレビューです。Mate(一水社)は凌辱系作品に対して色々と風当たりの厳しい状況下で、その誌風を貫いて本当によく頑張っている雑誌だと思うのですよ。
破滅をもたらす愛への妄執と快楽への耽溺を、その悪徳としての側面から逃げずに描き切った胆力が素晴らしい作品集です。
収録作は全て短編で9作。1作当りのページ数は12~22P(平均17P弱)と分量的には少なめで、いずみコミックスレーベルの中でも単行本としてのボリューム感は乏しい部類に入ります。
物語設定の要点を説明するだけに留まるシナリオパートはともかく、エロシーンにも量的な満足感は不足していますが、作品から受けるインパクトはなかなかに強烈であり、読後の重苦しい余韻も含めて相応に読み応えはあります。
【荒削りさはありつつ非凡な才能を感じさせる作劇】
今単行本は、物騒なタイトルや裏表紙から推察できる通りのハードな凌辱モノと母子相姦をメインとする近親相姦モノ、およびその両者を兼ね備える作品で構成されており、ラブストーリーの“ラ”の字もありませんので凌辱系に対する耐性の無い方には回避を強く推奨。

序盤にはコミカルな演出さえ施されていることがある一方で、そこから凌辱者達の異常性を一気に浮き彫りにさせてヒロインを狂気と暴力の世界に引き込み、平和な日常をガラガラと崩壊させていく流れは落差がある分、読み手に与える印象は痛烈。
現在の凌辱エロ漫画の帝王・オイスター先生と比較すれば、その苛烈な攻撃性は共通しながら、オイスター先生の作品にある練り練られたドラマ展開や凌辱者達の狂気を裏付ける周到な設定などはほとんどなく、全体的に話の流れや人物造形に舌足らずな感があります。
しかしながら、綿密なシナリオ構築がないことが、得体のしれない狂気によって突如として惨劇に巻き込まれるという、極めて根源的な不安と恐怖を読み手に呼び起こすことを成功させています。

未だ作劇の粗さは目立ちますが、一水社系の作家さんで言えば、オイスター先生の作品を貫く破滅と狂気、ゼロの者先生の作品に漂う不安と退廃感を共に持ち合わせている印象があり、今後に強く期待できる作家さんだと個人的には思っております。
【勝ち気な美少女・美女と清楚なママンがメインのヒロイン陣】
登場するヒロイン陣はミドルティーン級と思しき美少女達と30歳前後程度の清楚な母親がメインで、そこに20代半ばぐらいと思われる婦人警官や姉が少数混じります。
キャラクター像を立てていく余裕がシナリオに無いものの、勝ち気な女の子や清楚で穏やかな性格の母親、従順で可愛らしい少女など、典型的なキャラ造形にすることで深みはなくとも作品全体を理解しやすいものにしています。
あとがきのコメントやイラストを見る限り、どうも作家ご本人としてはローティーンの貧乳美少女を描くのがお好きな様ですが、スレンダーな肢体に柔らか巨乳を装備するヒロインの方が多く、貧乳キャラの割合は低め。

オールドスクールなアニメ絵柄も、当世流行りの美少女絵柄に馴れている若人方には魅力薄に映る可能性もありますが、ある意味で分かり易くキャッチーなタイプ。ただ、デッサンや体型描写なども含めて絵柄に不安定感が残るのは減点材料です。
【倒錯の快楽に満ちた過激なエロシーン】
シナリオパートをざっくりと切り上げつつ性行為の進展とともに話を進めていく手腕は、エロ漫画作品の構成手法として優れてはいるものの、ページ数の少なさもあって上述の通りにエロシーンの尺は残念ながら短め。
倒錯の快楽を強調する一方で、近親モノでは行為への精神的な嫌悪感の描出、凌辱モノでは肉体的な苦痛描写も容赦なく取り込んでおり、その目眩がする程の異常な雰囲気は強い魅力でもあり、同時に強力な忌避要因でもあります。

目を涙で潤ませ、喘ぐように舌を突き出す白痴系のアヘ顔や獣じみた嬌声とハートマーク付きの理性が蕩けたエロ台詞の連呼など、過剰さを追求した派手な演出も頻繁に使用する一方、身を焼く快楽に抗しようと唇をキュッと噛む表情など、意外に細やかな演出を加えているのは巧いと思います。
マッスたっぷりのお尻や太股を抑えつけて羞恥に塗れた無惨な開脚姿勢を取らせ、その中心にある秘所に獣欲のままにピストンを加える抽送パートはこれまた尺的にはさみしいものの、十二分に攻撃的であり、情け無用な子宮めがけての大量射精でフィニッシュを迎えます。
なお、基本的には陰毛は股間に標準装備であることや軽めではありながらスカトロ描写があることなど、ハード&ダークな方向性意外にも読み手を選ぶ要素があることには留意されたし。
(色々な意味で)名物編集者の塩山氏のバックアップも効いているのか、新人作家らしからぬ凄みが作品から感じられ、是非この鋭く尖った作家性を保ちながら突っ走って頂きたい作家さんです。個人的には男の禍々しい狂愛がわずか1コマで鮮烈に明らかにされる様に背筋が冷たくなった短編「姉コン」とレースの黒下着がエロすぎるママンの受難劇な短編「母乳参観日」が特にお気に入り。キャラ的には短編「淫行罪」の婦警さんがフェイバリットですが、このキャラに関してはあとがき必読ですよ(笑。
とまれ、真っ当に日常生活を送りつつ人に言えないドス黒い欲望を貯め込んでいる貴兄貴女に一種の鎮静剤として大変お勧めな作品ですよ。