
冴樹高雄先生曰く、「不治の病」だそうなので(『児犯鬼』あとがきより)、まぁ諦めますかね。
さて、ついに発売された2月の新刊中最大の期待作、月吉ヒロキ先生の『独蛾』をレビューします。
なお、本単行本はLOコミックス第50弾の記念作品とのことです。おめでとうございます。頑張れLO!負けるなLO!!
収録作は、痴漢に遭った少女がカウンセリングを通して調教され、男性教師に篭絡されてゆく「独蛾」全8話(+描き下し2p×2本)、短編2作、TGに載ったイラスト4pとなっています。
言うまでもなく、今単行本は「独蛾」がメインコンテンツであり、黒タイツなど着衣へのフェティシズムの充実さ、エロの濃さ、登場人物の心理描写およびキャラ立ちの良さ、ストーリーの作り込みなど、どれを取っても「独蛾」は完成度が高いです。

この堅物なヒロインがカウンセリングという場を悪用し、催眠術を操るカウンセラーに調教を受け、徐々に徐々にしかし確実に性の快楽の虜となって行きます。
その結果が左下なわけです。この落差、人を見下しさえするプライドを汚し、性感に嬌声を上げまくる存在に突き落とす落差が凄まじくエロチックです。

個人的にポイントと思うのは、ヒロインが13歳という少女であること、それ故に彼女の持つ意思の強さ、聡明さ、性への嫌悪感は大したバックグラウンドを持っていないということだと思います。
つまり、いくら抗っても大人の腕力、策謀、性的技巧には「決して勝てない」という前提です。
蟷螂の鎌を必死に振り回す相手を、余裕綽々で翻弄しつつ、理性やプライドといった防御衣を1枚1枚ゆっくりゆっくりと引き剥がしてゆき、最後に残酷な現実を突きつける。
この残酷な嬲りは、下衆な考えで申し訳ないですが、読み手の嗜虐心を大いに高めます。本作は「8話も続けた」ことにこそ意味があるのだと思います。
Hシーンでは、黒ストッキングへの拘りがしっかりと表現され、ストッキングの下で卑猥に動く手が少女の秘所をまさぐるシーンは実に扇情的。痴漢シチュエーションも着衣エロのためにあるんじゃないか?と疑いたくもなります。
アナルセックス(多目)、放尿等、多少(?)マニアックなプレイもありますが、基本的にプレイ自体は(催眠下であることを除けば)普通です。敢えて、苦痛や激しい責めを与えないのが、”嬲り殺し”にしている余裕加減に繋がっていて、義憤を覚えつつ僕のティンコは反応。
非常にネームセンスが良く、元・気真面目少女から発せられる、最早日本語になっていない嬌声も素晴らしいですが、ねちっこくHシーンの状況を説明するト書きも男性の台詞も秀逸。
読み手に文章を読ませることで、読むスピードを抑えさせ、Hの粘っこさを表現しているように感じます。

彼女が無理をして、かつ自己完結的に固めてきた様々なものが崩れてゆく様、それに不安を覚えながらも抗えない少女の様が印象的に描かれています。
最終話の締め方も一見少女にとってハッピーそうに見える分、余計に悪意に満ちたエンドですが、さらに禍々しいのが第7話。

短編「Kyrie eleison」は教会内で聖なる儀式と称して行われる、信徒と少女たちのサバトを描くやはり狂気の匂いのする作品です。まぁ割と普通。
ただし、もう一つの短編「微睡姫」は柔らかい絵柄と穏やかな雰囲気で中和されているものの、客観的事実としては近親相姦+幼児への性的虐待という最凶コンボですので一部の人には猛毒(一部の人には甘露)となります、要注意。
催眠下という特殊条件を除けば、ねちっこいながらも奇抜なプレイは少なく、絵柄も過度にロリを強調するものではないので幅広い人に受け入れられるであろう作品です。
よほどロリが嫌いという人以外には楽しめるはずの秀作です。
余談ですが、カバー裏に佐々原憂樹先生の手によるロリ分濃い目のすみれちゃんが素晴らしい。佐々原先生のファンたる僕はこの1pだけに500円は払える!