LustTrain.jpg藤田和日郎先生の『月光条例』1巻(小学館)を読みました。もう相変わらず熱くて面白くてカッコいいですね!
藤田先生の描くヒロインが僕は大好きで、今作はエンギキブちゃんが素敵です。

さて、本日はまぐろ帝國先生の『LUST TRAIN』(茜新社)のへたレビューです。先生一流の悪ふざけと思いたいのですが、裏帯の「作家活動維持のため買って下さい」という文章が心配です。
繊細なタッチで描かれる正統派のキャラクターデザインおよび豊潤な官能と行為の迫力・生々しさを描くエロのポテンシャルの高さがありながら、読み手の脳髄を直撃する強烈なお馬鹿コメディが前面に押し出された作品集でした。

収録作は、全て短編で12作。短編「LUST TRAIN」と「LUST TRAIN'」はタイトルが共通してますが、痴漢がテーマということ以外に話や舞台設定につながりはありません。
他単行本で未収録だったおまけ漫画「魔法の萌エリスト リリカル☆リリンカ外伝」(7P)を除いて1作当りのページ数は3~20P。まぁ、3Pというのは『か○あげくん』のパロディ漫画(非エロ)ですのでお気になさらずに。大半の作品は16Pです。
各話のボリューム感は乏しいですが、読み進めるのがとても楽しかったのであまり気になりませんでした。

シナリオ展開はかなりエキセントリックで読み手を翻弄してきます。多少好みは分かれるかもしれませんが、奇抜ながら不快感や興醒めな印象を読み手に抱かせないテンポの良さがあります。
MaguroSensei.jpgちょっと毒を吐いてみたり(←参照 掲載誌に喧嘩売っちゃ駄目ですよ先生! 短編「ドキドキメイドさんパニック 2003なんていらねえよ 夏!」より)、(いい意味で)やり過ぎ漂う漫画パロディ、1発キメているかのようなシュール&大馬鹿などなど読み手を存分に楽しませてくれます。
無駄に高いだけのテンションでギャグを振りまくのではなく、パロディの使い所やギャグ漫画としての展開がよく練られている印象がありました。
ギャグの分量が多いことに加え、エロシーンにも容赦なく混入するために艶やかなセックスシーンの実用性が多少削られている感があり、抜き物件をお求めですとややネックになる可能性はあります。

TragedyOfWar.jpg一番笑わせて頂いたのは短編「かわいそうなメイド」。超有名な太平洋戦争の悲劇を元ネタとしており(←参照 大体予想は付くかと)、扉絵やタイトルから想起されるイメージとは全く異なる寂寥感漂う雰囲気の作品です。
元ネタに合わせてテンションは抑えめで悲しげなのですが、実にシュールな設定と大真面目にやっている故の馬鹿馬鹿しさが読み手の吹き出し笑いを誘います。いや、落ち着いて考えれば、(ある意味)平和について考えさせられるいい話なんですが(笑。
話のオチはちょっと不謹慎ながら実にネタのチョイスが良く爆笑必至ですよ。

GodSendDeathToUs.jpgただ、それらのコミカル作品と全く趣を異にする、痛烈なアンチクライスト作品「ぱらいそ」には度肝を抜かれました(←参照 排他的な盲信の悲劇)。
これは是非ご自分で読んで頂きたいのですが、台詞や効果音を排した無音劇ながら瑞々しい若者たちの性が乱れ舞うエロシーンと凄惨な殺戮劇を圧倒的な描画力によって表現した技巧は素晴らしいの一言。
扉絵やラストから「日本的アニミズムの中で賞賛される性のあり方がキリスト教的価値観では悪魔的なサバトでしかない」ということを暗示させますが、それは「倫理・価値観の単一化の残酷さ」という人類が抱え続けてきた病巣を鋭く突いており、エロ漫画でこの深刻なテーマを選んだことにこそ僕は価値を見出しますし、敬意を表したいと思います。

上述の様にエロシーンの分量は少なめで、今単行本は晩のオカズとしてはやや使いにくい印象があります。管理人は例にもれず美味しくご飯を頂きましたが。
TheBeautyAndTheMad.jpgお馬鹿エロギャグ漫画を描いているとは思えない、正統派美少女絵は相変わらず高水準であり、激しく美しく勿論エロチックに描かれる性行為の描写はさすがベテランの先生です(←参照 短編「パラダイス☆ビーチ」より)。
名作「放課後奴隷倶楽部」の様に、変態美人さんを心底明るく描くのが大得意な先生ですが、今単行本はコンビニ誌エロ的な割と普通なキャラ造形が多く、左様なお気楽変態美女は短編「なんぎな奥さん」に登場する程度です。
エロシーンはギャグの幕間と言っても過言ではなく、抜きに使いたいなら今単行本よりもまぐろ帝國先生の既刊を購入した方がベターでしょう。

僕はまぐろ帝國先生のエロもギャグも両方センスが良くて大好きなのですが、今単行本に関してはギャグに思いっきり傾いており両者のバランスを求める人にはちょっと不向きかもしれません。
ただ、単に抜き物件としてではなく漫画として読むと、ギャグもシリアスも非常に面白いことは折り紙付きですよ。