本年最後の更新、2010年マイベスト20作発表となります。お待たせを致しました。
なお、管理人が2010年に発売された成人向け新刊単行本(発売日はアマゾン準拠、新装版・アンソロジーは除く)の中で購入・読了した作品数は296作(内、未レビュー12作)。今年発売されたエロ漫画新刊が通常版などの重複を除いて590冊前後ですので、今年もおおよそ半数の作品は読んでいることになります。
今回のランキングに当っては、上半期ベスト10下半期ベスト10の結果を踏まえた上で、惜しくも選外となった作品も加えて38作品(上半期17冊・下半期21冊)をノミネートし、その中から再び選考を致しました。
毎年の繰り言となりますが、年間ベストに限って付けている順位は、僕の主観が強く働いたものですので、あくまで目安とお考え下さい。
また、順位の判断基準は、いつも通りに、“笑える”“抜ける”“インパクトがある”“泣ける”“コダワリが光る”などなど、様々な要素を含んだ僕にとっての“エロ漫画としての面白さ”です。

各作品の詳細なレビューはそれぞれのリンク先の個別記事、または上半期ベスト・下半期ベストの短評をご参照下さい。
当記事内では、雑感やランクインの理由等を記しておきます。
さて、前置きが長くなりましたが、僕が大変楽しませて頂いた愛する作品達を、第20位から発表です。

20位 ドバト『純愛以上レイプ未満』(オークス)
LittleRabits.jpg下半期ベスト10選外からの復活組。年内2冊の単行本を出すなど、新人作家らしいエネルギッシュな活躍を示しました。
作劇・作画の自由闊達な暴れ方からは、勢いの良さを感じさせつつ、何より“描くことの喜び”がひしひし伝わるのが素晴らしくランクイン。
原作付きではありながら、それ故に一層輝いたドバトイズムが真に痛快な1冊でした。→単行本レビュー

19位 赤月みゅうと『イノセント~少女メモリア~』(ティーアイネット)
InnocentMemoryOfGirl.jpg上半期ベスト10の惜しくも選外から復活。TIのMujinの既存カラーとは全く異なる作家性を持ちながら、この作家を受け入れたTI編集部にまずは拍手。
荒削りでありながらも、現実と幻想が入り混じる魅力的な世界観を備えた作家さんであり、“少女像”の描き方にも個性を感じさせます。
短編「流星ジェミニ」から受けた衝撃を、一人のエロ漫画愛好家として今後も忘れることはないでしょう。→単行本レビュー

18位 こけこっこ☆こま『ちるるぷれ』(久保書店)
ChillePlait.jpgキュートなロリっ子達を明暗様々なシナリオの中で魅せるこの作家さんの、なんと8年ぶりの新刊。
悪く言えば地味な「ぺたふぇち」的な雰囲気を強く保ちながら、その穏やかな叙情性の中に鋭さやフェティシズムがきらっと輝いているのが嬉しいところ。
同人活動主体という印象が強いですが、もちっと商業でもバリバリ描いて頂くと嬉しいなと。→単行本レビュー

17位 みやびつづる『母の哭く家』(ワニマガジン社)
HouseMamsCrying.jpg表題作の「母の啼く館」が叩き出した、哀しく重苦しい狂気のドラマが残す余韻はやはり強烈でランクイン。
お気楽コメディな「物影堂古書店」シリーズは読んでいて楽しかったのですが、この作家さんの持ち味が十全に出ていたかはやや疑問で、単行本としてのまとまりはやや悪かった印象もあるためこの順位。
誌面から肢体の熱や臭い、そしてそれを生み出す感情の奔流が立ち上ってくるかのような作画は相変わらず痺れます。→単行本レビュー

16位 新堂エル『晒し愛』(ティーアイネット)
LoveToOpen.jpg太平洋の彼方からやってきた大型新人による待望の初単行本であり、作家さんにとってもおそらく大きな飛躍となった1冊。
既存のハードコアエロ漫画における手法論を貪欲に取り込みつつ、そこに宿るエネルギー感の突き抜けぶりは凄まじく、見事に正面突破された印象が強くあります。
個人的には、同人で描いているねちっこい凌辱・寝取られ系を商業でもまとめてくれたら更に順位は高かったかなと思いますが、これはこれで素晴らしいのです。→単行本レビュー

15位 時原マサト『セレブラムの柩』(キルタイムコミュニケーション)
CoffinOfCerebrum.jpg“アシオミマサト”名義での『DREAM CHANNEL』(ティーアイネット)も名作でしたが、どちらかを選ぶならこちらに軍配を。
特徴的なゴシカルな絵柄を以て描くダークファンタジーは、この作家さんらしい話の練り方がしっかりと活かされており、一人の男の英雄譚へとスムーズにシフトチェンジしていく流れは見事。
人に作用する道具というギミックから、それに関わる人物の感情や性愛を描き出していくスタイルを確立しつつあり、今後に非常に期待が持てる作家さんでしょう。→単行本レビュー

14位 天竺浪人『凌鬼の果』(サン出版)
ArchaicAngelSecond.jpg悩んだ末に下半期惜しくも選外から復活してこの順位。とは言え、この長編作が描き下ろしを加えて完結を迎えたこと自体が大きな喜び。
登場人物の狂気を徐々に拡大させた前巻『凌鬼の刻』に比して、彼らの狂気を弱者のソレとして“矮小化”させた展開は、ドラマとしての凄みを減じたものの、光と闇に苦しんだ人間達の物語として納得の終焉。
実用性と直結するかは疑問の余地もあるが、漫画的というよりかは詩的な印象さえ受けるアナログ作画の表現力の高さは感動的。→単行本レビュー

13位 いのまる『いたずら専用 華比良生徒会長』(ティーアイネット)
StudentCouncilPresidentHanahira.jpgツリ目の黒髪クール美少女を描かせたら業界屈指なこの作家さんの4冊目。困難と恥辱と快楽の中で、それでも決して壊れない女性の凛とした強さ・美しさは惚れ惚れする要素。
主人公の少年の扱いがやや微妙ではあったものの、互いに主導権を取り返そうとする緊迫感のある騙し合いバトルの緊迫感でグイグイ読ませたのは、この作家さんの長編構成力の成長を如実に示しています。
エロ描写に関して割合と武骨さがあるタイプながら、ヒロインの肢体の艶やかさが実に魅力的。個人的にはやっとこさ納得のランクインを出来て、勝手に喜んでいる次第。→単行本レビュー

12位 鈴木狂太郎『魔法教えました!!』(ヒット出版社)
WhatABeautifulWorld.jpgヒットが送り出した実力派新人群の中でも際立つ才能を持った作家さんという印象があり、前単行本から一気に作品世界を広げた今作は漫画的にも見事な1冊。
非常に強いアグレッションを持ったエロ描写が可能であり、実用性は言うまでもなく高い水準にあるのですが、それが作中で決して浮かないのはエロとシナリオのエネルギーが共に強いからでしょう。
一般紙にも進出を果たしたのは納得の実力であり、また作品構築のスタンスからも理解できますが、エロも是非描き続けて欲しい作家さん。→単行本レビュー

11位 エレクトさわる『PANDRA』(キルタイムコミュニケーション)
Pandra.jpg爆乳と白濁液とアヘ顔と白痴系エロ台詞の絨毯爆撃という芸風が全くブレることなく、この手の飽和感のあるエロ演出の現在を代表する作家さん。
今年は、キルタイム系での長編作に面白い作品が多かったのですが、作品世界の広がりや群像劇としての紡ぎ上げ方はその中でもトップクラスと評せるでしょう。
今単行本を読むことで、既刊を含めたこの作家さんの作品への評価が大きく変わったという意味でも、個人的には重要な1冊であり、話の続きへの期待もあってこの順位。→単行本レビュー

10位 藤ます『Sweet Lip』(コアマガジン)
SweetLip.jpg初単行本『Honey Syrup』(ワニマガジン社)も含め、ブレイクするべくしてブレイクした作家さんという印象があり、フェラの質・量の高さや絵柄の安定感は今単行本の方に軍配が上がります。
お口エロに関しては、絵の巧さや分量のたっぷり感も勿論高く評価していますが、的確な構図取りや粘膜・液汁描写の高質さと絵柄との組み合わせの塩梅など、職人気質な描き方をしていることそのものを個人的には高く評価。
シナリオ構築に関して難を残すものの、同時に作劇面の伸びしろも感じる単行本であり、今後の更なる成長にも期待を込めてこの順位。→単行本レビュー

9位 中年『年刊中年チャンプ 合併号』(マックス)
YearlyMiddleAgeChamp.jpgアホ娘達がドタバタと動き回る楽しいコメディタッチで描きながらも、その根幹はリリラルで心優しい少年少女の恋愛模様。
既刊3冊の内、そのスタイルが最も高質にまとまり、かつ淡く柔らかい絵柄の魅力が完成の域に達した単行本であったと言えましょう。派手さはないがしっかり使えるのも忘れてはいけない加点材料。
僕は、例え色々な困難があるのを分かった上で、この作家さんがいつの日にか復帰するのを待ち続けることが出来ると再認識した1冊でもあります。→単行本レビュー

8位 内々けやき『恋愛女子は前しか見ない!』(富士美出版)
WeLookOnlyForward.jpg昨年(年間8位)に引き続いて同位置にランクイン。前単行本の鋭さに比べると弱さもあるが、それでもストーリーテリングの巧さは相変わらずで納得のランクイン。
淡々と群像劇を描きながらも、その中で若者の生きる熱量が伝わり、前向きに進んでいく彼ら彼女らの日常が作品の終幕後にも続いていくことの、素直な喜びが印象的でした。
もっちりとした肢体描写の良さもよく目立ちました。一般誌にも進出を果たしており、この作家さんにとって2010年はこれまでの成長が生きた飛躍の年であったとも言えましょう。→単行本レビュー

7位 らっこ『えろかわびっっっち』(コアマガジン)
EroCuteBitches.jpg明るく楽しい巨乳ラブコメという作風を考えれば、クロエ出版からコアマガジンへの移籍は間違いなく正解で、その魅力をより広めるのに相応しい場を得た印象。
そのメガストア王道路線のありがちさを感じさせないのは、テンポの良い台詞の掛け合いや各種パロディ、展開の勢いの良さなどコメディとしての構築に作家自身の好み・コダワリがしっかりと輝いているからです。
華やかでキャッチーで、それでいて各体パーツの持つ生々しい煽情性が含有された絵柄・キャラデザも存分に発揮されており、ある種非常に痛快な1冊。→単行本レビュー

6位 東山翔『Japanese Preteen Suite』(茜新社)
JapanesePreteenGirl.jpgLOを代表する作家に成長したこの作家さんの3冊目は、2冊目と打って変って抜き重視の作品構成へ。
それでいて隠しきれないシナリオ構築の上手さや、オサレ感はユニークな魅力であり、漫画的なファンタジーを以外に介在させずに少女性愛をごく普通の日常であるかのように描き出すスタイルは独特。
個人的に好みなスタンスとはやや異なるのですが、それでも高く評価せずにはいられない魅力が作劇・作画共に詰まった1冊。参りました。→単行本レビュー

5位 みなすきぽぷり『スカートのままで』(ヒット出版社)
KeepWearingSkirt.jpg通称“黒ぽぷり”と“白ぽぷり”の二つの作風を持つ作家さんですが、今単行本は“白ぽぷり”としての傑作。
無慈悲なダークネスを作中でも描き出しながらも、それを克服する人間の優しさ・強さを高らかに謳い上げるシナリオは、慎ましい幸福感に包まれるラストが実に印象的。
短編「つゆもよう」は2010年屈指の傑作短編であり、改めて読み返してみてもウルッと来てしまいます。→単行本レビュー

4位 睦茸『あまみドコロ』(コアマガジン)

SoSweetSpot.jpg2010年屈指の良質甘エロラブコメディ。不思議少女というチョイス自体は平凡ではありますが、相互理解の幸福という恋愛描写における大切なテーマが忌憚なく練り込めているのが○。
また、おっぱいエロ漫画として見ても今年屈指の出来であり、お持ちの如き柔らかさと重量感がたっぷりと詰まったモチモチ巨乳はおっぱい星人の性欲中枢を直撃してきます。
キュートな絵柄でありながら、えげつない構図の使い方や意外と独特なコマ割りでぎっちり詰め込む画面構成なども実用性を高めている美点。読んで優しく使って嬉しい秀作。→単行本レビュー

3位 オイスター『人デ無シ乃宴』(一水社)
VeranstltungsraumeVonBrute.jpg個人的に大ファンと言うこともありますが、作品から放たれる凄みが全く変わらず、更に作画の質が未だに進化を続けていることもあって今年も高位にランクイン(2009年年間4位、2008年年間2位)。
長編作として正しくこの作家さんの集大成とも評し得る作品であり、ひたすらに重苦しく無慈悲な世界の中で人間の美徳と悪徳を鋭く切り出していくスタイルには息を呑みます。
初期作のブルータリティを取り戻し、かつそれを高まった表現力で叩きつける凌辱地獄は確実に読者を選ぶ一方で、万人の胸を等しく抉る威力を持ちます。流石の出来で文句なしにこの順位。→単行本レビュー

2位 岡田コウ『チュー学生日記』(ヒット出版社)
DairyOfJC.jpg鮮烈なデビューを果たした初単行本(2009年年間11位)からどういった方向へと進むのか興味深く見ていたのですが、割合にとんでもない方向に化けた新鋭ロリエロ作家の2冊目。
阿吽の正道的な漫画構築とは結構異なるスタンスでもある一方で、このストーリーの練られ方と人間の“欲望”の溢れ出る様なパワーをわざとらしくなく読み手に伝達する能力は驚嘆の域に達しています。
何か、物凄く張り詰めて描かれている印象も受ける一方で、陶酔感の溢れるエロも含めた訴求層の広さが確固として存在するのは商業作家としての成功の要因でしょう。正直、ここまで化けるとは思っていなかったので、評者としては完敗。→単行本レビュー

1位 ドリル汁『スペルマスター』(富士美出版)
SperMaster.jpg胡乱な表現ではありますが、エロ漫画馬鹿の、エロ漫画馬鹿による、エロ漫画馬鹿のための1冊。
コミカルに、熱血に、エロエロに、サディスティックに、能天気にと自由闊達・縦横無尽に登場人物が駆け巡るファンタジー長編はエロ漫画として非常に痛快です。
1位に選出することに賛否はあると思いますが、それでも読んだ時に「これが読みたかったんだ!」とガッツポーズで快哉を叫んだ身としては、選ばずにはいられなかった歴史に残る傑作でございます。→単行本レビュー

と、以上のような順位になりました。選外からの復活作も混在したことが示す通りに、例年にも増して選考の難しい年でありました。他にもお勧めしたい作品は本当に沢山あるのですが、選んだ20作品はどれもお気に入りで、レビュアーとして後悔は全くしていません。
個々の単行本レビューも参考にして、是非チェックしてみて下さいな。読者諸氏のエロ漫画ライフのちょっとした参考になれば、へたレビュアーとしては大変な喜びです。

まずは、今年読んだ全ての作品達とその作者さん、関係する編集・出版者の皆様に心よりの感謝を。
このブログは、恥ずかしながら僕のエロ漫画ジャンルへの愛情によって続いていますが、それを支えてくれるのは世に送り出された素晴らしいエロ漫画作品の数々によって生み出された愛情なんだと常に感謝しております。

このブログや記事を紹介して下さる全てのサイト様にも厚く御礼申し上げます。単行本レビューを積み重ねる以外に能がなく、今年は考察系の記事等が少なめであったのも反省しております。
これからもソースサイトとして精進して参ります。

そして、当ブログの読者諸氏にも敬意と感謝を。皆さまのエロ漫画への愛情と共に在ることは、評者として以前に、一人のエロ漫画愛好家として大変な喜びであります。
来年も読者諸氏の期待に少しでも応えられますよう、より鋭く、より論理的に、より面白く、そしてより愛情の詰まったレビューを描けますよう、不断の努力を続ける所存です。

都条例や出版社の倒産など、エロ漫画業界において色々と辛いことがあった2010年でしたが、それでも、それでも僕はエロ漫画が大好きなんだと改めて思える1年でもありました。

2011年も素敵な作品に沢山出会えることと、エロ漫画を愛する全ての人に幸せな一年であることを祈りまして
一エロ漫画愛好家 へどばん拝