NeverWantLoveWithMySis.jpg長谷川哲也先生の『ナポレオン-獅子の時代-』第14巻(少年画報社)を読みました。エジプト遠征の大きな分岐点・アッカ攻囲戦が今巻のメインでしたが、フランス軍的にはやりきれない展開ですよね。
ビクトルは“尻の仇”が取れて良かったね!(マテ ところで、まさかのパチンコ化なんですが、管理人はパチンコ打ったことないのに、これはちょっと打ちたい所。“叫ぶ”らしいですが、声優さんはどうなるんでしょうねぇ。

さて本日は、神寺千寿先生の『妹と恋なんかしたくない』第1巻(松文館)のへたレビューです。なお、先生の前単行本『微熱なつまさき』(久保書店)のへたレビュー作家評等もよろしければ併せてご参照下さい。
兄妹の想いの揺らめきとそのすれ違いを、柔らかさと緊張感とを併せて描きだす叙情的な作品となっています。

eb6561e1.jpg収録作は、愛する妹と学校の男性教師との仲が深まることを危惧した兄が肉体関係に踏み出してしまうことで始まる兄妹のすれ違い劇なタイトル長編全7話(以下続刊:←参照 眠る妹にキス 長編第1話より)。
携帯コミックスには疎いのですが、1話当りのページ数は22or24P(平均23P強)と書店売り誌の標準クラスの同程度のボリュームで安定。ストーリー面での読み応えは長編ドラマとして確固たるものがありますが、エロの量的満足度はそこまで高くないことには留意されたし。

【繊細かつヘビィな話運びが見事な哀しみの近親恋愛劇】
今単行本を出した“シガレットコミックス”レーベルは、男性向け成人向け分野から撤退した松文館が女性向けの成人コミックを扱うレーベルとして創設したものであり、文法・作品構築に関してはティーンズラブ色が強いことには要留意。
物語は上述した通り、積年の想いに衝き動かされた兄が妹に性行為を強要してしまうことから開始され、互いに愛情を抱きあいながら、一旦歪んでしまった関係性が徐々に拗れていく様を丹念に描写しています。
NeverWantLoveWithMySis2.jpg自責の念に悩まされる兄はクラスメイトの少女と交際を始め、二人のセックスを見てしまった妹はショックもあって男性教師との関係を深めていくという展開は(←参照 男性教師と妹さん 長編第3話より)、二人の純情さが亀裂を深めていくという点で非常にもどかしく、読み手の胸をチクチクと痛めさせる作劇は、読み手を作品世界に引き込んでいきます。
中盤以降、韓国ドラマか昼ドラの如き泥沼模様になっていますが、妹を(おそらくは悲劇の待つ)禁断の愛から救い出そうとしている男性教師や明るく快活な兄の彼女さんなども含め、いずれの登場人物も誠実な人柄として描かれているため、すれ違いの悲劇ではありながら陰惨さやあくどさに乏しいのは○。また、三者三様の思惑が絡み合うことにより、展開に動きが少なからずあるため、冗長な感じがしないのも嬉しいところ
適度に痛みや苦さのある叙情性、饒舌なモノローグと言葉少ない台詞の鮮やかなコントラストなど、快楽天時代の作品構築の特性を再帰させつつ、ふんわりと柔らかい修飾の絵柄や恋愛感情に付随する適度な甘さなどの美点は近作のそれを引き継いだものと言えましょう。
双方が傷を広げる原因を作ってしまった兄妹関係が、そこまで押し留められていた妹側の負の感情の爆発によって決定的な危機を迎える第7話の終わらせ方も、次巻以降に期待を持たせる意味で良好な仕上がりになっています。

【キャラデザインから徐々に子供っぽさが抜けていく妹】

どうにもならない感情に胸を痛める兄の傍に、その事情は知らないながら明るく誠実に寄りそうクラスメイトの少女・藤本さんにもエロシーンはあるものの、基本的にはその兄貴への複雑な想いを抱える妹さんがシナリオ・エロ双方においてあくまでメイン。
キャラ設定的には共にミドルティーンの少女であり、子供らしい可愛らしさや感情のコントロールの未熟さといった幼さとしての要素と、一個の人格として兄妹の関係性の外部へと踏み出す勇気を併せ持ったキャラとして妹は描かれています。
NeverWantLoveWithMySis3.jpg成長期であるがためか、作品第1話と第7話とで妹さんの肢体造形を見比べると大きく変化しており、丸みの強いボディラインで幼さが強く残っていた序盤と、スラッと肢体全体が伸びて10代後半としての現実的な体つきになってきた終盤ではキャラから受ける印象が異なります(←参照 長編第7話より)。
前述した様に、妹が“子供”から“大人”へと変化することにも意味があるシナリオ展開であるため、このキャラデザインの変化は十分に納得のいくものである一方、絵柄に関してある程度の不安定感を印象付ける点。また、これまでの男性向け単行本で描かれてきた、愛らしいロリキャラを期待するのは大NG。
やや沈鬱な展開であるため、決して多くは描かれないものの、各登場人物の穏やかな笑顔も含めて、感情描写の良質さはキャラ描写の大きな強みであり、作品のドラマティシズムを盛り上げる要因でもあります。
コマ割りなど、作画に関しても少女漫画色、あるいはTL色の強い画面構成になっており、ある程度馴れていないと違和感を覚えるかもしれませんが、この特徴は男性向け作品でも明らかですので、既刊のファンであるなら特に問題ないでしょう。

【エロ的に成人向けの水準にあるかは疑問の余地】
元より性描写に関してハードコア色の薄いタイプであり、質の高いエロ作画や雰囲気の熱っぽさを十分な量で描くことで実用性を生み出すスタイルであったため、性描写のボリュームがかなり弱い今単行本はお世辞にも実用性が高いとは言えません。
男性向けのエロ漫画作品のお約束である、長編においても各話にはセックス描写を挿入する必要があるというルールにも従う必要がない分野であるため、性的な描写がほとんどないエピソードも存在することも、抜きツールをお求めな諸氏には強い忌避要因でしょう。
e6142063.jpgまた、目前の相手とその相手との快楽に対して、良くも悪くも“集中”するのが男性向けの性描写であるのに対し、快楽を感じつつも心ここに在らずという状態であったり、自分の中で感情のせめぎ合いが行為中も続いている描写があったりすることなども、実用的読書に励み難い描き方(←参照 長編第3話より)。
とは言え、細部の性器描写が無いに等しく、かつ修正がかなり厳しいレベルであることを除けば、上記したエロ作画の特徴がよく出ており、トロンと蕩けた表情や切れ切れの嬌声などによって、十分な陶酔感のあるエロ空間が創出されています。
ただ、儚げな肢体が快楽の熱によって上気し、クタッと脱力していく痴態で煽情性を的確に積み上げながら、シナリオ進行が織り交ぜられることによる性描写の密度の低さ、量的な積み上げの不足、フィニッシュシーン等の快楽曲線のクライマックスの不在などにより、実用面には結びつかないのは、男性読者の管理人にしてみれば何とも勿体ない点。
シナリオ重視の中で、成人マークが付く程度にはハードな性描写を何とか見せようとする努力は特に序盤では図られているものの、後半に進むにつれて完全にシナリオメインになってエロシーンはがしがし削られているため、ストーリー面での期待とは裏腹に、エロ面では今後に相当な不安を覚えています。

こう、非常に近親愛のドラマとして読み応えがあり、かつ息苦しさが不快になるギリギリ一歩手前に見事に調節されているストーリーは素晴らしいのですが、エロ的にはかなり厳しいのは確か。男性向け時代の作品に愚息がお世話になった身としては、なんだか寂しいなぁとは思います。
とは言え、エロ漫画に実用性以外のものを求めている方には是非読んで頂きたい秀作であり、2巻以降も強く期待したいところ。