WayToMakeHerInfomania.jpgよしながふみ先生の『きのう何食べた?』第4巻(講談社)を読みました。海老しいたけのあんかけは美味しそうなので、今度自分でも作ってみたいところ。あと、長ネギのコンソメ煮は僕もお勧めですよ。
ちなみに、筧母の「天ぷらは思い切りよ!」発言ですが、僕の母も似たようなことを言っていたのを思い出し、やはり長年料理していると境地が違うもんなのかと変に感心しました。

さて本日は、香月りお先生の『催眠術で彼女を淫らにする方法』(オークス)のへたレビューです。なお、先生の前単行本『真説 猟奇の檻 第2章』(同社刊)のへたレビュー等もよろしければ併せてご参照下さい。
黒い快楽の泥沼へとずぶずぶ沈み込んでいく展開がヘビィな読書感を生み出すマインドコントロールエロな作品集となっています。

WayToMakeHerInfomania1.jpg収録作は、ラブラブなハズの奥さんが風俗で働いている疑念が生じて夫婦共に追い込まれてゆく連作「擬鳳蝶蛾の夢」前後編(←参照 SMクラブにて 同作前編より)、心理療法士の男性が患者達の性の悩みを治療しつつ快楽の深みへと突き落としていくオムニバスシリーズ3作、および短編3作。
短編「催眠術で牝奴隷を手に入れる方法 side:亜美」は、前々単行本『催眠術で牝奴隷を手に入れる方法』(同社刊)の長編作のサイドストーリー的な作品なので、できれば該当作を読了しておくことのがベター。
この短編作(9P)を除き、1話・作当りのページ数は16~32P(平均23P強)と幅はありながら適度なボリューム感のある構成になっています。シナリオの傾向的に読み応えは十分に重めであり、倒錯的なエロ描写に一定の凄みがあるのも魅力的です。

【黒い欲望が暗躍する陰湿な催眠エロ】
司書房時代から暗めの作品はあったとはいえ、ここ数作の作風からすっかりハードな凌辱・調教系のカラーが定着したこの作家さんの最新刊は、前々単行本と同様に催眠モノを作劇の骨子として選択。
前々単行本の長編「催眠術で牝奴隷を手に入れる方法」は、催眠術を覚えた主人公による陰湿なエロ調教を描き、女性を意のままに操る黒い欲望で貫いた作劇でしたが、今単行本の収録作は心理療法士があくまで“触媒”に徹する三連作のように、催眠術はどちらかと言えば脇役的です。
b4b80da0.jpgむしろ、催眠術によって変遷してしまった女性キャラの有り様に悲愴感や破滅感を練り込めることに主眼があり、異性への積極性を望んで催眠治療を受けた結果、自分の意志が言動に反映されなくなってもがき苦しむ「催眠術で彼を堕とす方法」(←参照 台詞とモノローグの差異)、自分の愛する妻が性の快楽を貪る得体の知れない存在に変化することに焦燥する連作「擬鳳蝶蛾の夢」などはその代表例。
自己、もしくは自分の愛する存在の中に理解できない存在が目覚め、それが元の人格を圧迫していく流れは一種ホラー的でもあり、その周辺に絡む登場人物の歪んだ欲望が描かれることもあって、作品のトーンは終始暗く淀んでいます。
無論、そんな展開が登場人物達を幸福に導くことはなく、催眠術というある意味で禁じ手を用いたことによって大事な何かを喪失したことに悲嘆を暮れながら迎えるバットエンドの後味は相当に苦くなっています
なお、モンハン大好きな作家さんとして一部で有名ですが(金平守人先生の「とりあえずそれで」参照のこと)、ファンタジー世界での男戦士と女魔法使いのラブエロ模様を描く短編「エンゲージ」は“らしい”作品。今単行本の作品群の中では、雰囲気の柔らかさがやや浮いている感がありますが、話のオチはブラックにまとめられています。

【もっちり柔肌がエロティックな清楚美人・美少女】
連作の若奥様に短編「エンゲージ」のエルフ耳お姉さんと、アダルト系美人も登場しますが、人数的には女子高生級がヒロイン陣の中核を構成しています。
作品の傾向としては、大人しかったり清楚であったりする女性が、催眠術によって淫蕩な性格へと変遷するということに旨味があるタイプであり、催眠状態の有無によるヒロインの状態変化は非常に鮮やか。
aa839e4d.jpg幼児退行による記憶の掘り起こしといった中でロリータさんのエロが描かれることもありますが、年齢的な描き分けをほぼ行わない肢体造形は、若い肢体の瑞々しさと適度にふっくらとした女体の柔らかい質感を有するタイプで広い層にとって訴求力が強いタイプでしょう(←参照 短編「崩壊のサイン」より)。
この麗しい美女・美少女達と好対照を為すのが、歪んだ性欲を発揮する男性陣の造形であり、醜悪な顔つきと体つきの中年男性やいかにも根暗な少年などが登場するのは作風にはよくマッチしていますが、好みを分ける要素でもあるので要留意。
作画的には安定しており、上述した様にヒロインの肢体のエロティックさ、清楚な性格時の美しさを演出していますが、作品のテイストに併せて黒ベタや濃いトーンワークで絵柄に暗さ・重さを色濃く打ち出しているのはここ最近の絵柄の傾向と共通しています。

【破滅のエロス漂う強制快楽の嗜虐性が特長】
各作品のページ数には幅がありますが、これはストーリー描写の分量の多寡に影響されている部分が大きく、エロシーンの分量的には各作品共通して平均並み。
WayToMakeHerInfomania4.jpg義父による性的虐待や、人妻さんを旦那の前で凌辱するなど、直接的にサディスティックな行為も描かれると同時に、ヒロインが半ば強制的に快楽中毒者へと変化させられることに陰湿さがあるため、セックスが享楽的に描かれることがむしろダウナーな雰囲気を形成していきます(←参照 短編「清純派の彼女をインランにする方法」より)。
また、その快楽への陶酔の渦中において、残存する理性が発する嫌悪感や恐怖感も同時に描き出されていくため、ヒロインの心の所在の無さが行為の破滅感を強めているとも言えるでしょう。
全体的に官能の表情に硬さが認められるものの、瞳が妖しく淀む蠱惑的な表情は魅力的であり、表紙絵で強く主張する様な妖艶な雰囲気を形成することに大きく貢献しています。
女性器描写の質もそれなりに高く、頻度の高い結合部見せ付け構図や小ゴマで絡める性器アップなどの煽情性を支えていますが、男性器描写に関しては無機物然とした描き方になっていることもあって、少々違和感を覚えるところ。
1回戦のみで留める作品もある一方で、複数ラウンド制を設けて中出しフィニッシュを含めた抜き所を多めに配置する構成は抜き物件として良好ではありますが、個々のシーンに“溜め”が乏しい印象もあり、エロシーンの尺とのバランスは改善の余地があった印象もあります。

作劇とエロがよく噛み合っており、陰惨さ故に読み手の好みははっきり分かれるでしょうが、作品の構成としては完成度が相応に高いと言えます。前単行本でのドラマ性が良かった分、少々物足りなさは感じますが、凌辱エロとしての手綱を最後まで緩めない度量も高く評価したい点です。
個人的には、学園の華である清楚な美少女生徒会長を催眠エロ調教してその事実を突き付けることで彼女の人格を崩壊させる短編「崩壊のサイン」が最愛でございます。