StrawberryMarble.jpg山口貴由先生(原作:南條範夫氏)の『シグルイ』最終第15巻(秋田書店)を読みました。実は、とっくに原作小説を読んでいるので結末は知っていたのですが、改めて何とも溜息の出る終劇ですなぁ。
斬首のシーンは原作にはないのですが、藤木の中の士と個がせめぎ合った印象的なシーンでした。未来を見続けた男と過去を大事にし続けた男の悲しい交錯劇でもありましたなぁ。

さて本日は、URAN先生の『いちごま~ぶる』(富士美出版)のへたレビューです。なお、先生の前単行本『ちちぺでぃあ』(コアマガジン)のへたレビュー等もよろしければ併せてご参照下さい。
いい意味で青臭さに溢れる青春ラブストーリーとキュート&エロティックなヒロインとの熱気たっぷりのエロが楽しめる作品集となっています。

StrawberryMarble1.jpg収録作は、東京で学生&バイト生活を送る主人公のアパートに故郷・福岡でかつて交際していた幼馴染の女の子が押し掛けてきて~なタイトル長編「いちごま~ぶる」全9話(←参照 長編第1話より)。
1話当りのページ数は20~24P(平均21P弱)と標準的なボリュームで安定。長編作としてダレない、適度な読み応えのある作劇でありつつ、エロの質的・量的な満腹感も十分にある構築になっています。

【過去の失敗と現在の怠惰を乗り越える青春ラブストーリー】
綺麗なお姉さんが居るバーでアルバイトをし、ファッションにお金をかける生活を謳歌する主人公の下に、かつての初エッチで暴走して傷付けてしまった幼馴染の乙女さんが押し掛けてくる長編作は、二人のもどかしい関係がぎこちなさを解消して幸せに結ばれるまでを描く青春ラブストーリー。
過去の不幸を気にするそぶりも見せず主人公に献身的に尽す乙女さんに対して、複雑な気持ちの中でつっけんどんな態度と身勝手なセックスで応じる主人公の姿は、まことに人間的に小さく、またバイト先の同僚のお姉さん・紅穂さんとのエッチにも心を奪われかけるなど、中盤までの展開は読み手をヤキモキさせてきます
19e0cfb5.jpgしかしながら、幼馴染との関係の過去と未来に目を背けていた主人公が、それまでひたすらに従順であった幼馴染の、素直な嫉妬と不安の吐露を聴くことで(←参照 紅穂さんとの関係を念頭に置いた言葉 長編第9話より)、依存的な関係性の甘えを断ち切り、己の意志によって真摯な愛の告白へと流れは非常に王道的であり、終盤における青春ドラマとしてのカタルシスは大変に良好。
無条件で己を愛してくれるという、エロ漫画的なヒロインの“理想像”の幻想をラストで棄却しつつ、在りのままのヒロインを主人公が受け止める描き方は、ある意味で非常に泥臭く、全体的に話回しとしてのテクニカルさや展開の詰め方の丁寧さに乏しいものの、この愚直な人間愛こそがこの作家さんの本来の持ち味でしょう。
そこまで“東京弁”を話していた主人公の男性が、地元の博多弁でヒロインと愛の囁きを交わす最終回は、彼がある意味で“逃亡先”となっていた東京の人間から、虚飾を脱ぎ捨てた一つの“個”に回帰したことを示しており、適度に小技が効いているのも○。また、セックスに関しても、ここで初めて性欲よりも愛情が真の意味で上回る行為として描かれているのも、よく練られていると思う点。
二人の関係性を押し進める契機ともなった、エロエロお姉さん・紅穂さんもまた、真摯な愛情によって淫蕩の快楽から“救済”されるのですが、このキャラも含めたサブキャラそれぞれのストーリーと、本筋である主人公と乙女の物語の絡め方は、必要なシナリオ要素である一方、不調法がやや目立つ部分でもあります。

【好対照のツインヒロインが魅力的】
エロシーンの登場回数、およびシナリオ進行における重要性から正ヒロイン・乙女ちゃんの果たす役割が圧倒的に大きいものの、バイト先での女性バーテンダー・紅穂さんもシナリオ・エロの両面で一定の活躍を示します。
ひたむきな愛情によって動くピュアな方言娘と、真摯な愛から逃げ出して享楽に耽る都会的な美女との対比は鮮やかであり、その二人への想いが主人公の東京人としての現状と青春を過ごした故郷への感情と密接にリンクしているのも面白いところ。
共にキャラ設計面で特筆すべき要素に欠けるものの、従順な幼馴染・エッチなお姉さんというそれぞれのエロ漫画的な定型を中盤~終盤にかけて敢えて崩し、それぞれの人生を生きる個としてハッピーエンドを迎えさせた作家さんの意欲は高く買いたいものです。
StrawberryMarble3.jpg並乳ですらっとしなやかな肢体の紅穂さんに対して、乙女ちゃんはもっちりとした肉感の巨乳・桃尻をお持ちのピュアエロボディの持ち主であり、慈母の如く優しい心と共に主人公の欲望を柔らかく受け止めてくれます(←参照 男は“しょんなかね~”なものなのです 長編第8話より)。
後述するように、エロシーンにおける煽情性の高い作画も魅力としつつ、シナリオパートにおいて重要な意味を持つシーンでの構図・演出はドラマ性をしっかり構築しようとする意図が明確。そこに、多少のクドさはありますが、漫画的な感情表現として非常によろしいと個人的には思います。
キャラデザ面で少々の不安定さを依然として示すものの、トーン等の修飾による華やかさとくっきりとした描線の生む素朴なキャッチーネスのある絵柄は、訴求層の広いタイプであり、表紙絵ともほぼ完全互換の水準で安定しています。

【汁気と熱気に満ちた感情爆発のセックス描写】
エロの分量はそこまで多い方ではないものの、十分量は配置されており、また官能性に優れる女体と可愛らしいor綺麗な表情が快楽に蕩ける熱っぽさによって密度の高い濡れ場になっているのは抜きツールとしての信頼性を高めています。
中盤では純情な乙女ちゃんにワガママ放題なセックスを要求することもあって、主人公の台詞回しや露出エッチなどのエロシチュなどがそれなりにサディスティックなものになっており、読み手の征服欲を煽ってきますが、個々のエピソードにおいて陰湿さなどはその都度拭い去る様に設計されているので、実用的読書に気兼ねなく集中できるのはありがたい点。
StrawberryMarble4.jpg愛と性の悦びで流される涙が非常に印象的ですが、絡みあう舌を濡らす唾液や行為の熱っぽさを示す汗、秘所から漏れ出す愛液やおしっこ、前戯パートでヒロインの口や顔に降りかかる白濁液など、液汁描写に注力がなされたエロ作画となっており、元々柔らかい質感が強調された女体に更なるシズル感を付与しているのも実用性の底上げに大きく貢献しています(←参照 擬音も淫蜜の豊富さを示唆 長編第3話より)。
エロ展開としては、前戯パートでヒロイン達の積極的な奉仕を満喫した後、二人ともパイパンな股間に存在するトロトロに濡れた秘所に挿入し、パワフルなピストン運動を展開。その際にも、おっぱい弄りや舌の絡め合いなど、適度に焦点をバラけさせるエロ作画を行っており、ヒロインの柔らかボディを隅々まで味わい尽すスタイルは◎。
結合部見せ付け構図や白点の飛沫を散らす演出、派手な擬音など、アタックが一定程度強いエロ演出を施す一方で、断面図・透過図やアヘ顔などの過激なエロ演出はむしろ排するスタイルであり、男女の素肌の重なり合いを重要視しているのは特に恋愛感情が強いエロシーンにおいて、穏やかな幸福感をしっかりと担保しています。
なお、終盤においてそのシリアスな理由が明かされるのですが、外出しフィニッシュを選択するエロシーンが圧倒的に多いため、中出し至上主義な諸氏は要留意。シナリオ的な重要性はあるのですが、“ぶっかけ”としての旨味はそこまでない描写であることはちょっと勿体ないところ。

主人公の若さ故の未熟さと、それが生むビターな青春模様はある程度好みが分かれる要素ではありましょうが、それに対する克己こそが作風の持ち味なのではないかと、前単行本と比すると特に思います。
決して“巧い”仕掛けがあった作品ではないのですが、ラストのハッピーエンドへの意志が非常に明確である分、エロ・シナリオ双方の魅力が高まっていた長編と言えましょう。