IslandChapterOne.jpg出張中の空き時間に「大正野球娘。」の原作小説(神楽坂淳 著/徳間書店)を読んでいたのですが、とっても面白くて既刊3冊を一気に読み通してしまいました。
百合成分や小梅と三郎の恋愛描写も含めて優しい雰囲気が心地よいですし、当時の風俗や衣装、料理といった細部までしっかり作り込まれているのが気に入りました。あと、小説版でもたまちゃんは可愛いです。

さて本日は、まぐろ帝國先生の『あいらんど~淫悦の章~』(茜新社)のへたレビューです。まぐろ帝國先生に関しては作家評なども当ブログでは書いておりますので、よろしければご参照下さい。
不思議な閉鎖環境の中で繰り広げられる、妖しくも艶めかしいセックスの描写が強い魅力の作品です。

IslandChapterOne1.jpg収録作は、記憶を失くした少年・六郎が島に流れ付き、そこで以前に肉体関係があったことを女性達と出会い、面妖な世界へと囚われていくタイトル長編「あいらんど」第1~9話(以下続刊)+幕間を描く描き下ろしフルカラー掌編4P、同じく描き下ろし1P(←参照 主人公と双葉 第2話「夜と夢」より)。
フルカラー掌編を除き、1話当りのページ数は18~24P(平均20P強)と平均的な水準。奥深い世界観によるシナリオの誘引力とハードコアな性描写により長編作としての読み応えはしっかりとある印象です。

【ダークサスペンス調の妖しい物語】
今単行本はギャグ色強めの前単行本『LUST TRAIN』(茜新社)やシナリオを度外視して快楽優先主義的なエロ描写に専念した単行本『放課後奴隷倶楽部』(同社刊)などと作風が大きく異なり、これまでの作品の一部でも認められるシリアス&ダーク調になっています。
出会う女性全てに肉体関係を求められ、理由と過去の因縁も分からぬままに圧倒的な快楽にその理性を狂わせていく様を、重厚なシナリオによってじっくりと描き上げていきます。
IslandChapterOne2.jpgそれぞれの名前に番号を含む女性たち、冷たい視線で主人公を監視する謎多き美少女(←参照 死体を洗う 第8話「少女と屋敷」より)、裏で仮面を付けて交じり合う登場人物達など、ホラーサスペンス的な要素も多め。
場面を繰り返しつつ状況をずらしていくループ展開や映写機の映像と場面とを組み合わせるメタ的な展開、主人公の夢と現の境界を敢えて不明瞭にする作劇など、登場人物の人格や認識している現実といったものが相当に不確実なものであることを鋭く描く手法は、“物語”への懐疑・批判の精神を忘れないこの先生の面目躍如と言えるでしょう。
その優しそうな表情に秘めた暴力性が徐々に明らかになる主人公にとって、そのどちらが仮面でありどちらが素顔なのかということも含め、その現実と幻想の交錯が倒錯的で妖美な世界観を作り出しています。
島というこの閉鎖された環境に、新風を吹き入れると思しきもう一人の人物を登場させて以下続刊という形になっていますが、次巻が大変楽しみです。
明朗快活な抜き物件やギャグエロを求めている方にはちょっと不向きな可能性がありますが、既存の作品で言えば短編「すばらしき世界」や「INPRIZONMENT」、「4891 GUILTY CITIZEN」などの退廃的で暗い雰囲気の作品がこの先生の真骨頂と考えている貴兄はマストバイですよ。

【幅広い造形を取り揃えられたヒロイン陣】
登場するヒロインは瞳(1)、双葉(2)、美里(3)、栞(4)、樹(5)、七瀬(7)、そして麗子(0)の計7名。
天真爛漫な妹キャラから、同年代の美少女、清楚な外見の年上ヒロインから何かを企む妖艶な熟女まで年齢の設定には幅があります。
ツンデレっぽい少女もおれば、無表情娘や褐色肌のサバサバとした性格のお姉さんまで定番のキャラ属性も幅広く取り揃えているヒロイン陣の構成は、やや暗く沈みこみがちな作品に一定の華やかさをもたらしています。
IslandChapterOne3.jpg貧乳&ツルツルスージーな娘も入れば、むっちりと脂ののった豊満バディ+濃く黒い茂みの女性まで体型的にも様々ですが、しなやかでありながら頭からつま先までピンッと緊張の糸を通す肢体描写は体型に寄らず秀逸(←参照 美里と 第3話「美里と社」より)。
セーラー服や巫女服、裸エプロンに喪服、メイド服など、キャラ属性にあった衣装のチョイスも○。
ベテランの先生だけあって作画は強く安定している上に、背景や調度品まできっちり描き込む丁寧な作画は好印象で、作品の雰囲気作りに大きく貢献しています。

【ほの暗さを漂わせる官能的なセックス描写】
ループ展開なども用いることもあってか、個々のエピソードにおけるエロシーンの分量はそこまで多いわけではなく、ごく標準的なボリューム。
エロ展開における序盤は比較的大人しい主人公が、行為の進展につれてその鬼畜さを目覚めさせ、倒錯性や暴力性を一気に加速させていく展開の妙が味わえます。
時に洋モノAVのような激しいながらもカラリとしたセックス描写を描く先生ですが、今回はどこがじっとりとした陰湿さを感じさせる背徳感が濡れ場を覆っておりサスペンス調の作劇とばっちりマッチ。
IslandChapterOne4.jpg実に官能的な陶酔の表情や(←参照 第7話「光と影」より)、秀逸な肢体描写がフルに活かされる躍動的なポージングなど、基本でありながら最も重要でもある部分を高質に仕上げるエロ作画も素晴らしいです。
前戯パートも含めて多回戦仕様が基本であるため、抜き所は比較的豊富と言え、少々色気に欠ける無骨な擬音を奏でながらピストン運動を激しく行って秘所やアナルに中出し敢行なフィニッシュが多め。
とは言え、性器アップ構図や中出しにあまり重点を置かないスタイルで、自慰行為やスカトロ(ただしブツの描写は皆無)などを最後に持ってくることも多いので、コアマガジン的な性器ドアップ・大拡張な構図でガッツリ膣内射精をキメないと気が済まない貴兄は要注意。

勿論ギャグエロ系の作品も大好きなのですが、個人的にはまぐろ帝國先生に関してはシリアス系の作品がより好きなのでこの長編作はまさに福音。
特徴的なエロの描き方もあって、いつも以上に万人向けとは言い難いですが、漫画としても面白いエロ漫画をお探しでしたら是非チェックしてほしい逸品です。2巻を今からワクワクしながら待っております。