
第16話「レイライ畑からさようなら」と第17話「ぐるぐる猫とコソ泥」の優しくもちょっと切ないお話には涙腺が刺激されます。いい漫画です。
さて本日は、久遠ミチヨシ先生の『桃色たゆにずむ』(ワニマガジン社)のへたレビューです。ワニマガ系では馬鈴薯先生も西安先生も発売延期の中、こちらだけはちゃんと4月中に出てくれました。
バラエティ豊かなシナリオの中、柔らかいお肉の詰まった肢体の持ち主なヒロインとのエッチが描かれる作品集です。
収録作は、短編11作+短編「まつりパニック!」と短編「初妹。」の兄妹カップルが登場する描き下ろし後日談な掌編「続妹。」(3P)。
1作当りのページ数は16~20P(平均19P弱)とコンビニ誌的には標準的なボリューム。エロ・シナリオ共に上品な官能性の演出が為されているため読書感は良好ですが、読み応えとしてはやや喰い足りなさも残る感があります。
【ダーク系もコミカル系も雰囲気の演出が上手】

正に“終り”の始まりを想起させる黒く歪んだラストを迎える短編「オワリノハジマリ」と真摯な恋心故に禁忌の関係へと堕ちていく終劇の短編「クライアナ」を除けば、キャラクターの魅力と穏やかな雰囲気を軸とするラブストーリーが中心と言えるでしょう。
コメディとしての楽しさよりも男女の恋愛感情の描出に重きを置く作劇は、優しい口当りながらも豊かな雰囲気を醸成しており、表情の描き方の上手さもあってスムーズかつ好適な読書感を生んでいます。

しかしながら、序盤~中盤で高められた雰囲気の良さが特に作品の終盤で活かされていないことが多く、ラストでシナリオと登場人物の感情をまとめ切れていない印象があるのはかなり勿体ないです。
ヒロイン達に対して素直になれない裏返しとしてやや冷淡な態度を取る、微妙にシンクロしにくい主人公達の男性像も個人的にはややネックと感じました。
雰囲気重視の路線は決して間違ってはいませんが、短編としての構成力にもう一歩の進歩が欲しいかなと思います。
【上品な色香を備える年上ヒロインさん達】
姉や妹、母といった近親エッチ系が収録作の半数程度を占めますが、掲載誌の関係上全て“義理”。加えて、近親愛の背徳性の演出には作品間でかなり強弱の差がありますので近親系エッチに何らかのコダワリがある方は留意されたし。

基本的に全ヒロインがエッチに積極的なタイプであり、普段の清楚だったりツンツンしたりな態度とエロシーンのラブラブ感の落差というエロ漫画テンプレートをこなすには最適なキャラ造形。
セックスシーンにおいて一気に艶を増す絵柄は、少女漫画寄りの二次元絵柄で少々クセはありますが安定しており、表紙絵で判断して問題ありません。
個人的には艶やかな黒髪の描き方が結構好きですなぁ。
【ヒロインの紅潮した表情がエロティック】
適度に柔らかお肉の付いたしなやかな体躯にたゆんたゆんな巨乳が備わるボディデザインで訴求層はかなり広いと思われます。
とは言え、エロシーンにおいておっぱいやお尻といった特定のエロパーツを強調するエロ作画やエロ展開ではないことは留意されたし。
ちょっと不思議な母娘との3Pエッチな短編「ぼしにゃん」を除けば、1対1の肉弾戦であり、フェラ→前穴挿入→中出しフィニッシュというあまり変わり映えのしないエロ展開となっています。

結構えげつない効果音を奏でる結合部の描写を多用していますが、男女ともに性器描写の水準が高くないことに加えて複数の黒線による修正がかなり煩く、煽情性の構築に結びついていないのはマイナス要因。
絶叫系のエロ台詞がやや硬いことや、射精量の物足りなさということもあって、フィニッシュシーンにちとインパクトが足りないかなぁと思いました。
目指していると方向はなんとなく分かりますし、好みでもあるのですが、エロもシナリオもちょっと練り方が足りていないかなぁというのが正直な感想です。
個人的には、ちょっとファンタジーな雰囲気が心地良く、オチも微笑ましい短編「ぼしにゃん」が最愛。