UnbalancedGirlsInUniforms.jpg桜を初めとして花が咲き誇る季節になってきましたなぁ。キリシマツツジ、雪柳、日向ミズキ、木蓮と全部大好き。
日曜日はお弁当でも作って友人と花見に洒落込みたいものです。しかし、3月内に桜が満開とはやっぱり温暖化なんでしょうかなぁ。入学式に散ってたら寂しいでしょうに。

さて本日は、海野螢先生の『アンバランスな制服たち』(松文館)のへたレビューです。海野先生の前単行本のへたレビューもよければご参照下さい。
エロティックな白昼夢とありふれた現実を彷徨う短髪少女達を陰陽混ざり合う情念を以て描きだす作品集です。

収録作は全て短編で11作。1作当りのページ数は全て16Pでボリューム感には欠けています。
しかし、個々の作品が短くまとめられていることによってミステリアスな空気の味わいが凝縮されている感があり、読後の満足感はむしろ高まっている感があります。
また、読者の心を幻惑するシナリオ展開が生む独特の不安定感、そこからパッと突き放されるラストが生む味わい深い余韻を楽しめる短編群と言ってよいでしょう。

【正気と妄想が絡み合うミステリアスな世界観】
『“アンバランスな”制服たち』というタイトル、および海野先生の後書きが示すように、今回の単行本は「思春期の少女の不安定感」というテーマが共通しています。
少女2人少年1人の幼馴染という関係が思春期の淡い恋愛によって大きく変化しながらも決して崩壊はしない短編「桜の花咲く頃」、および季節外れの雪が舞う寒村で理想を追う少年と現実を見る少女の別離を描く短編「風花ごよみ」は共に日常の中で揺れ動く少女の心情を描く作品ですが、その他の多くの作品は幻想的な雰囲気の中で少女を描き出します
UnbalancedGirlsInUniforms1.jpgそれらの作品において夢と現の境界は曖昧であり、無人のはずの電車内で数多の痴漢に襲われ快楽に悶える少女(←参照 背景に注目 短編「渚の分岐線」より)、リアルな感触を伴う“夢”の中で交わるクラスメイトと交際を始めることになる少女(短編「千夏の夜の夢」)、はたまた延々と虚像が続く合わせ鏡の空間で交り合う双子の少年少女(短編「鏡の国の亜理沙」)など、怪しげな幻想空間においてセックスを描くことが大きな特徴。
得意とするSF的要素を介入させず、そのミステリアスな幻想・妄想に説明を加えないことによって、少女達が内包し、現実と複雑に絡み合う不安定性に一種の生々しさを与えています。
UnbalancedGirlsInUniforms2.jpg静謐なモノクロームの中に例えようもなく多彩な感情とウェットなエロティシズムを兼ね備える官能幻想は、それでいて極めて刹那的であり、現実を生きる上でそこに耽溺することのできない少女の姿は時にカラリと明るく、時に儚く哀しげに描かれます(←参照 後者 短編「奈々と迷路と秘密基地」より)。
女性向けのティーンズラブ系雑誌を初出とする作品が半数を占め、少女の視点と時にポエティックでさえあるモノローグの多用とで夢と現の境を行き来する心象を描く手法は男性向けエロとはやや文法を異にしています。
ただ、その女性視点の描き方が、夢想と現実がせめぎ合いながらその一過性の不安定感に決して自己を揺るがせはしない“少女の瑞々しい生命力”をスポイルせず、輝く美点として表現できているように感じ取れ、大きなアドバンテージになっているように思います。

【ザ・定番 短髪美少女ヒロイン陣】
UnbalancedGirlsInUniforms3.jpgタイトルの通りにヒロイン陣は制服少女で統一。海野螢先生のファン的には当たり前でしょうが、全員貧乳でショートカットというキャラデザになっています(←参照 黒髪ショート娘万歳! 短編「風花ごよみ」より)。
凹凸の少ない、悪く言えば貧相な肢体はロー~ミドルティーンの少女として割合現実的であり、何処か中性的でもあるその未成熟な体は読み手の背徳的な欲望に火を付けてくれます。
キャラクターの心理や体の動きとリンクするコマ展開の技巧の面白さも相変わらずであり、トーンワークや効果線による多彩な演出を施すコマごとの魅力と併せて幻想的な作品空間の演出に大きく貢献。
短編「風花ごよみ」では、切ない過去の情事を描くシーンではコマの外を黒く塗りつぶし、現在に時間軸を戻すとまるで作中の雪が降り積もったかのようにコマの外を白くする手法など、情感の演出に秀でた漫画手法と言えるでしょう。
なお、女性向けの作品が多いということもあって男性陣は爽やかな美男子揃いですので、美男子×美少女がお好きな方は要チェック。

【少女の儚い肢体を染め上げる刹那の陶酔】

あとがきにてエロが薄いと先生自ら書いておられますが、そこまで分量に乏しいわけでなく作画も安定感抜群でちゃんと実用的読書は楽しめます。
UnbalancedGirlsInUniforms4.jpg不可思議で淫靡な空気に飲み込まれて、快楽に染まり身もだえする少女の肢体は瑞々しい色香と少女エロスのタブー感覚を併せ持っており、少女属性持ちのハートをがっちりキャッチ(←参照 短編「絵美里の肖像」より)。
多彩さという点で見劣りはあるものの、涙滴を浮かべキュッと閉じられた目や歯を食いしばる口などが潤沢な性感を物語る陶酔の表情も○。
男性エロでは結構重要である性器ドアップや結合部描写はいつにも増して少なめであり、全身を以て快感を受け止める姿をこそ描くのは女性向けらしいといえばらしいでしょう。
フィニッシュもうっすらした茂みの中央に位置する可憐な秘所にドクドク中出しという構図を大ゴマ~1Pフルで描いており、射精と同時に絶頂を迎える少女達の姿は十分過ぎる程にエロティック。
一部強要的な性行為も描かれますが、恥辱を倒錯的な快楽に変化させる流れであり苦痛描写は少なく、かつ終劇もさっぱりしたタイプが多いので心を痛めるようなことはあまりないでしょう。

女性的な泥臭さを伴う独特な叙情性と官能性に満ちたシナリオラインの絶妙な味わいが幻想的なエロシーンと密接に結びつく技術は流石です。
僕のレビュー書きの技量ではこの作品群の面白みが十分に伝わらないのが残念ですが、雰囲気重視のエロ漫画がお好きな方には是非お勧めしたい逸品です。
個人的なお気に入りは、虚像の中の並行世界をほのめかす作劇のテクニカルさが光った短編「鏡の国の亜理沙」とラストページにしてやられた短編「奈々と迷路と秘密基地」。