
これ、6巻の第三十三幕を下敷きにしているんでしょうが、よくここまでシナリオを膨らませたなぁと。あと貴子さんは僕の嫁です(異論は認めない
さて本日は、白駒らい先生の『真夜中の社員教育』(メディアックス)のへたレビューです。けんたろう先生やくどうひさし先生、佐原秀和先生などと同じく旧司書房からの移籍組の先生ですね。
親しみ易いキャラ造形がとっても魅力的なほんわかエロコメディが楽しめる作品集です。

1作当りのページ数は描き下ろし掌編と「真夜中の社員教育」(8P)を除いて全て16Pと平均以下の分量。エロ・シナリオ共にボリューム感や読み応えは乏しいですが、それを苦に感じさせない雰囲気の心地良さや読後感の気持ち良い余韻があって個人的には大変満足しています。
【のんびりほんわかなエロコメディ】

『ある家族の肖像』(司書房;当ブログでは未レビュー)でも多めでしたが、今単行本でも女忍者(くノ一)モノが2本収録されていますのでお好きな方はどうぞ。
学園コメディの「緑凰学園」シリーズを筆頭に、突飛なシチュエーションを差し挟みつつ、登場人物間の楽しい台詞のやり取りと即物的なユーモアで面白さを演出する穏やかな笑劇を展開しています。
ほのぼのとした雰囲気こそに魅力があるタイプであり、テンション高いギャグエロ作品を期待するのは避けるべきです。とは言え、コメディとしてのテンポの良さや諸所に配した笑いの伏線をすんなり回収するオチの上手さなど、ソツのない作劇のセンスには光るものがあります。
くノ一拘束凌辱な短編「忍ばせ忍び」といったように凌辱系の作品も数作ありますが、ヒロインの最後の一言が後味を一層悪くしてくれるかなりのダーク系短編「モザイクキネマ」以外は、当意即妙のコミカルオチで楽しくかつすんなり終わらせるタイプなので読後も概ね良好と言えるでしょう。
【親しみ易いキャラクター造形】
シナリオの多様さに合わせて登場するヒロインも幅が広くOLさんや女忍者、女生徒さんなど設定は様々。年齢的には概ねハイティーン~20代半ばがメインとなっています。
細い描線で描き出す、いかにも女流らしい少女向け漫画のそれをベースとする絵柄には明瞭なセックスアピールやキャッチーさが不足しているのは事実であり、当世流行の快活な漫画絵柄やキュートな萌え絵柄に馴れているとやや地味に映る可能性はあります。

エロシーン導入部における“照れ”の表情も含め、緩やかに、しかして多彩に変化するヒロイン達の表情は雄弁に感情を語ってくれています。コミカル演出に多用されるデフォルメを効かせた絵柄も大変可愛らしくて大好きです。
なお、ボディデザイン的には並~巨乳クラスの割合現実的なタイプであり、作風にはマッチしていますが、ロリプニ少女とかむっちり熟女とか爆乳さんなど、ずば抜けた特長を備えるヒロイン像を求める方は回避推奨。
【上品な色香が魅力なエロシーン】
エロを見せることを必ずしも主眼としていない感もあり、かつ個々の作品のページ数的にもあまりエロのボリューム感が強くないこともあって抜き物件としての魅力はそこまで高くないのは事実。
エロ作画的にも、卑語・猥語連発の白痴系エロ台詞やアへ顔、画面を埋め尽くす液汁描写や精巧な女性器描写といった視覚的な派手さで圧倒する現代的エロ作画手法の逆を行くタイプであり、エロの激しさや濃厚さに不足は感じます。
しかし穏やかな作劇から導入されるセックスシーンとしては最適なプロダクションであるのは確かであり、決して濃厚ではないながらしっかりと存在を主張する官能性が読み手の煩悩を穏やかに掻き立てていきます。

シナリオやキャラメイキングとの相乗効果によって、“魅力的な女性とのセックス”という妄想を無理なく喚起できているのも高評価であり、個人的にはしっかり使わせて頂きました。性器描写や液汁描写の頼りなさを補って余りある雰囲気の良さを味わって頂きたいです。
なお、時にギャグ的展開で宇宙人が(性的な意味でも)絡んできたり、陰湿な痴漢凌辱があったり、お得意のくノ一尋問あったりとエロのバラエティは豊かですが、「緑凰学園裏相談所」では牛にしか興味のない農業部の男子生徒に恋する女の子が牛柄ビキニを着てラブ・アタック→恋敵(?)の牛さんの前でち○こから搾乳しちゃうぞ(はあと、というなかなか珍妙な展開で笑わせて頂きました。
家畜の見ている前でのセックスに燃えるという難儀な性癖を持つ諸兄(代表例)は要チェックですな。
勢いで押しまくるハイテンションコメディやハードにヘビィに走る特濃抜き物件、またはシリアスなストーリー重視作品などが主流の昨今のエロ漫画界隈において、気持良い程のどかな雰囲気が漂っているエロ漫画であり管理人は実に癒されました。
メガストア系やMujin系のエロ漫画がこってり中華や肉汁たっぷりのステーキだとするならば、ほかほかと温かいご飯とみそ汁と言うべき作品かなぁという印象です、微妙な例えで恐縮ですが。
エロ漫画に何らかの“強烈”なモノを求めている方には向かないのは確かなのですが、個人的には強くお勧めしたい1作です。