ElasticOverThity.jpg  長期出張と年度初めの業務ラッシュで2週間近く更新が空いてしまいました。申し訳ない。この土日は休みなので、腰を落ち着けてレビューを書きたいものです。
仕事が忙しくて4月からの新アニメが全然観られていないのも困りものなのですが、今期も観るものはかなり絞らないと付いていけそうにないですなぁ。


  さて本日は、戦国くん先生の『むちむち❤OVER30』(エンジェル出版)のへたレビューです。なお、先生の(成年向け)前単行本『ぷるるん❤果実』(同社刊)のへたレビュー等もよろしければ併せてご参照下さい。
むっちり肉感ボディの美熟女さんとの貪欲なセックスを時に優しく、時に妖しく、時に切ないストーリーで描いた作品集となっています。

ElasticOverThity1.jpg  収録作は、出会い系サイトで知り合った名も知らぬ“ご主人様”の命じるままに露出や逆ナンで見知らぬ男とのセックスに興じる主婦を描く中編「逢瀬の間々に」全3話(←参照 見知らぬご主人様に露出を命じられ 同中編第1話より)、ちょっとお馬鹿でエッチな奥様とそのご主人のラブラブ&ハードHな連作「ゆぁ・あいず・おんりぃ」「フォー・ゆぁ・エンジェル」、下宿の管理人である未亡人の女性と彼女に惚れた主人公が逢瀬を重ねていく連作「もらとりあむ」「幼年期の終り」、および読み切り形式の短編4作。
1話・作当りのページ数は18~20P(平均19P弱)とコンビニ誌初出としては標準的な部類。作品によって読み応えの軽重には幅がありますが、総じてシナリオとエロシーンの量的バランスはコンビニ誌初出として適切に整えられているという印象です。

【お馬鹿風味の軽さとシリアス系での日本的抒情感】
  ある種の泥臭さを含みながらも誠実なストーリーテリングには定評のある作家さんであり、また作風の引き出しも比較的豊富に有するのも美点と言え、今単行本においてもバラエティ豊かな作品が取り揃えられています。
  ちょっぴりドジな奥様と旦那さんがラブラブながらお仕置きセックスやらコスプレHやらのちょいとアブノーマルなHに精を出す連作「ゆぁ・あいず・おんりぃ」「フォー・ゆぁ・エンジェル」や、露出趣味な女の子と主人公が出会い、主人公の優しさが変態趣味に突き進みつつ不安を覚えていたヒロインとの融和を促す短編「ぷりくえる」などは、比較的あっさりと軽い読み心地の作品群となっています。
  これに対し、得体のしれない謎の“ご主人様”に振り回され、痴女として振る舞う日々に不安と共に妙な充足感を覚えて深みにはまっていく中編「逢瀬の間々に」のインモラルで妙な焦燥感を呼び込む雰囲気や、作品タイトルに示されるように、昔の想い人との再会によって故郷や青春期への郷愁を呼び込むほんのりと切ないラブストーリーの短編「さうだーで」、過去の死別により不幸の匂いが沁み込んでしまった未亡人と未来を目指す青年との重なる逢瀬とすれ違っていく恋愛感情を描く連作「もらとりあむ」「幼年期の終り」などは、適度に重厚なドラマ性を有するタイプの作劇と言えるでしょう。
b0835ddd.jpg郷里に降りしきる雪の中で紡がれる男女の想い(←参照 過去を雪が覆い隠せば 短編「さうだーで」より)、古びた下宿、窓からのぞく夏の花火、薄暗い室内で交される言葉と口づけが切なさと湿っぽさを生む連作「もらとりあむ」「幼年期の終り」のシーン、乾いたネットでのやり取りとそれに翻弄されて歪んだ快楽に耽溺していく一人の女性を淡々と描く筆致と(中編「逢瀬の間々に」)、時にクラシカルな日本映画の様な情緒を豊かに紡ぎ出すこともあれば、時として現代的なドライさを織り込むこともあり、ここらの抒情性の正直な打ち出し方はこの作家さんの大きな特長と言えるでしょう。
  基本的にはハッピーエンドに収まることが多いですが、あっけらかんとしたほのぼのオチになることもあれば、直接的な表現を避けて暗喩的・象徴的なシーンで叙情的にまとめたり、敢えて余韻を強く残す様なまとめ方にしたりと、光景のリフレインやセンチメンタルなモノローグなどで技巧的にまとめるケースもあります。
話数の都合もあって、重厚なストーリーテリングを期待するのはやや避けるべきかもしれませんが、お馬鹿風味はちゃんとお馬鹿風味に、シリアスはちゃんとシリアスにと調整がきっちりと付いた作劇になっていると言えるでしょう。

【程好く緩んだ年増ボディと大人故の心情描写】
  20代前半の女子大生さんや、20代半ばのOLさんなども登場していますが、単行本タイトル通りに30代という年齢層の女性キャラクターがヒロイン陣の主力を占めています。
この年増ヒロイン達については、主人公の奥さん(一児の母)や幼少期からの憧れのお姉さんといったラブラブな関係が明瞭に形成されやすいパターンのキャラクターであることもあれば、高校生の時代に恋愛感情を持ちながらも現在は別の男性と結婚している女性や、亡き夫への思慕と女性としての欲望に揺れ動く幸薄き未亡人といった主人公との関係性に複雑さが生じるキャラクターという場合もあります。
  年増ヒロインのキャラデザインは適度な若々しさを以て描かれており、場合によっては可愛らしさを強調して描くこともありますが、年齢故の落ち着きや要所で香り出すドキッとする様な成熟した色香、重ねてきた過去を語ることでのキャラクターとしての重みなどが語られており、ここらはティーンガールズとの明瞭な差異でしょう。
ElasticOverThity3.jpg  20代の女性キャラターでもむっちりとした健康的な肉感の持ち主として描くと共に、年増ヒロインについてはたっぷり柔肉を詰め込んだバスト&ヒップをある程度垂れ気味の年季の入った体パーツとして描いており、駄肉が付いた腹部や太腿なども含めて一定のだらしさなさ・緩みのある女体として描いており(←参照 腹部のぽっこり感に注目されたい 短編「僕の看板娘❤」より)、好みは分かれるかもしれませんが、熟女ボディとしての特徴を適切なバランスで盛り込んでいると感じます。
  なお、艶やかな黒髪ロングで全ヒロインが統一されていたり、ツヤツヤとした肌の光彩を強調したり、口紅なども含めて艶やかさのある唇の表現があったり、股間にもっさりとした茂みがあったりといった点は各ヒロインに共通する要素であり、官能さを高める要因の一つ。
  どちらかと言えば素朴な可愛らしさや写実寄りの艶っぽさを美点とする絵柄であり、売れ線ど真ん中のキャッチーさ重視の絵柄とは趣を異にするため、好みは分かれると思いますが、ベテランらしく絵柄は安定しており、またデジタル作画らしい密度の打ち出しと端正な整え方の両立が図られているのも信頼感を高めています。

【重量感のある肉感ボディを熱量たっぷりに乱すエロ描写】
  シナリオパートの存在感が強い作品であっても、シナリオ展開とエロシーンでの情愛の紡ぎが適切に噛み合うように構成されており、双方が魅力を高め合う作品構築というバランスの良さが持ち味と言え、たっぷり長尺ではないにしろ抜きツールとして十分なボリュームのあるエロシーンを滑らかに展開。
  未亡人や人妻と他人の目を憚りながらのセックスや、命じられるままに痴女めいた破廉恥な露出プレイや乱交を行うインモラルなシチュエーションに加え、ラブラブHであっても妄想&お仕置きエッチやコスプレセックスなどがあったりと、シチュエーションに関してアブノーマルな要素を織り込むケースが多いという印象があります。
とは言え、それらの倒錯性や非日常感を追求するというスタイルでは必ずしもなく、むしろそこに至る女性キャラクターの心情や欲望を丁寧に紡いでいく傾向があり、明暗の差こそあっても彼女達の望む在り方を形成するための自己実現といった側面が描かれているというように感じます。
ElasticOverThity4.jpg  ストーリーテリングにもいい意味での真っ直ぐな泥臭さのある作家さんですが、エロ描写に関しても同様であり、欲望や感情が奔流を為すエネルギッシュなセックスを、綺麗にまとめるわけではなく、特に女性側のほとばしる様な熱情や充足感を表情付けや台詞回しでパワフルに描き出すスタイルが特徴的(←参照 連作前編「もらとりあむ」より)。
陰唇のビラビラが特徴的な性器描写を前面に押し出す結合部見せつけ構図や、ぎゅっと瞳を閉じたり嬌声を上げて広がる口にいい意味で力みを感じさせる表情付け、重たげに撓む女体などの描写・演出も、どちらかと言えば劇画寄りの、重さ・濃さをエロ描写に添加していると言えるでしょう。
  ずぼずぼと愚直なピストンを繰り返し、双方快感の高みに昇り詰める中出しフィニッシュを迎えたのちには、ぐったりと弛緩した女体の股間から白濁液が漏れ出し来る描写で追撃をかけており、その後の睦み言なども含めて熱情的な行為から緩やかにフェードアウトしていくラストとなっています。

  ヒロインの年齢層の高さなどもあって万人向きとは言い難い面はありますが、日本的なウェットさを含みつつ柔和な雰囲気が魅力な作劇の抒情感は好ましく、性描写も含めて人の“営み”としての側面が確かな説得力を以て描かれていると感じます。
個人的には、「北の国から」でも観ているかのような郷愁を感じさせつつ、効果的なシーンの紡ぎ方が素晴らしかった短編「さうだーで」が最愛でございます。