ContraryLove.jpgヨシノサツキ先生の『ばらかもん』第5巻(スクウェア・エニックス)を読みました。先生の書いた“星”には「おおっ!」と思わされました。田舎暮らしが先生の作風にかなりプラスになっているんですな。
そこまでの普段通りの穏やかさがある分、今回のラストはちょっと衝撃的でしたが、先生がなるを悲しませるようなことはしないと思うので、きっとすぐに戻ってくると信じております。

 さて本日は、MARUTA先生の『アマノジャクが恋をして』(富士美出版)のへたレビューです。なお、先生の前単行本『彼女が恋人を好きになった理由』(同社刊)のへたレビュー等もよろしければ併せてご参照下さい。
瑞々しい感情描写を以て青春の輝きを描き出すラブストーリーと豊潤な色香と生命感を香らせるエロが詰まった1冊となっています。

ContraryLove1.jpg 収録作は、東京から郷里に戻った青年が幼馴染の女の子に性体験があるよと言われ、図らずも独占欲に駆り立てられてセックスへと至ることで始まる一夏の物語な中編「向日葵の咲く季節」前中後編(←参照 ショッキングながら実は彼女の“策”でもあります 同作品中編より)、および読み切り形式の短編6作。
なお、短編「空蝉」には前単行本に収録された同名の短編と同じ双子の姉弟(兄妹?)が登場していますが、話のリンクはほとんどないので、今単行本から読んでも特に問題はありません。
 1話・作当りのページ数は20Pで固定されており、コンビニ誌初出としては平均を多少上回る程度のボリューム。とは言え、非常に趣きのある作劇の余韻は素晴らしく、シナリオと相乗効果的に魅力を増すエロの魅力もしっかりとある作品構築となっています。

【瑞々しい性と愛が躍動する青春ラブストーリー】
 思春期の少年少女の性愛を描くことを得意とする作家さんであり、登場人物達がそれぞれのもどかしい想いを丁寧に描出するスタイルは、コンビニ誌として正道な軽快なラブコメディとは一線を画すものであって、非常に味わい深い作劇。
決して大きなドラマを描く訳ではなく、1組の男女に焦点を当てて、その関係性の揺れ動きを描きだしつつ、二人の想いが重なり合う瑞々しい喜びによって、青春モノとして等身大の爽やかさや幸福感を豊かに含ませています。
7fd69130.jpg 男性側にもモノローグを語らせることも多く、彼らのストーリー上の存在感はしっかりあるものの、年相応の自由闊達さを持ち、また純粋な感情とそれを発露できる直向さを備える少女達の描写こそが作劇の中核であるとも言え、十分な鮮烈さを以て彼女達の台詞が読み手の心に沁み込んでくるのは実に素晴らしいところ(←参照 シンプルなフレーズですが味わい深い 短編「Steady×Steady」より)。
作品に登場する少女達は、好きな男の子と結ばれること、もしくはセックスに伴う性的快楽を得ることを望みますが、彼女達は主体的な行動によってそれらを獲得していく展開となっており、若さ故の真っ直ぐな感情と欲望の実行が作中において祝福をもたらすことが青春ストーリーとしての強い魅力を放っているとも評し得ます。
 短編作が中心ということもあって、ストーリーそのものに大きな動きを付けにくいのですが、思春期である故のもどかしさと、それを打破する素直な情動とのコントラストが、適度な躍動感をストーリーに付与していると言っても良いでしょう。
 上質な甘さと叙情性を含ませた作劇は、読み手の心に心地よい余韻を残してくれる印象的なラストでまとめられており、恋愛エロとしての甘さを持ちながらそれを主張し過ぎることなく、それでいて等身大の幸福を噛みしめさせる巧みな調節が為されていると感じます。

【中肉で並乳なボディが持つリアルなエロティックさ】
 中編作には主人公をある意味では惑わすアダルトなお姉様が登場していますが、その作品の正ヒロインも含めて思春期後期のハイティーン少女達で概ね統一されたヒロイン陣となっています。
 妹ちゃんや姉など、近親ヒロインも投入しつつ、近親エロとしての背徳性を追求するわけではなく、幼馴染ヒロインや先輩キャラクターなども含め、既存の関係性から一歩踏み出すことに意味を持たせる男女関係が中心となっています。
c4e6f4db.jpg 肢体の造形に関しては、比較的現実味のあるタイプであり、華奢さも感じさせつつも適度な肉感のある体幹に、掌に収まる程度なサイズの並乳を組み合わせており、強いセックスアピールには欠ける一方で、現実味を伴うエロティシズムと端正なフォルムを味わえるタイプと言えるでしょう(←参照 短編「キミの瞳に恋してる!」より)。
非常に描き込み密度が高い上に、アナログ作画に由来する良い意味での不揃い感、荒さがあるため、十二分に綺麗な女体でありながら程良い猥雑さが滲み出てくるのはこの作家さんの個性と言え、若さとしての“美”と生々しさとしての“醜”のバランスの秀逸さは特筆すべき点。
 中編作が代表的ながら、生命感溢れる夏を舞台にすることが多いのですが、どのような舞台設定であれ背景を非常に丁寧に描き込むこともこの作家さんの特徴であり、青姦での草いきれ、屋上におけるエッチでの蒸した風などを感じ取らせて臨場感を増す表現力も高く評価すべきポイントでしょう。
 アニメ/エロゲー絵柄的なキャッチーネスも相応に持ちながら、劇画的な重さや写実性、意外に目立つオサレ感などを複雑にブレンドした絵柄と言え、個性が強いながらも訴求層はかなり広いと思われるのは面白い点。上述した背景も含め、作画密度が全くと言って良い程低下しないのもコダワリを感じさせる要素です。

【相手を求める感情が生み出すエロの熱気と陶酔感】
 シナリオパートをしっかりとした分量で描くため、エロシーンは長尺とは言い難い物の、導入部で蓄積された感情と欲望が解放されるものとして描かれることで、滑らかな導入とエロの存在感を可能としています。
 少年少女達のセックスは、言語を介して伝えられぬものを相手に伝達しようする行為の様に描かれており、決して過激であったり特殊なプレイを絡めたりしない一方で、彼ら彼女らの直向さが嫌味の無い熱情をエロシーンに与えており、それ故に抜ける描写となっていると個人的には感じます。
 尺が限られていることもあって、前戯パートの分量を抑え気味にしており、ピストン運動の描写を中心にエロ展開を組み立てるタイプ。なお、野外でのエッチが数多く登場しており、思春期の少年少女の性の瑞々しさを強調するためのものであり、露出エロとしてのスリル感といった醍醐味とはやや無縁なタイプ。
6f935f43.jpg エロ演出面では、アヘ顔や断面図といった速攻性があり刺激的な要素を排除するスタンスを示しており、快楽と併せて様々な感情が入り混じる表情付けや、うるさくならない程度の量で絡める説明的エロ台詞などによって、中出しフィニッシュまで徐々に、しかしながら着実に煽情性を積み上げていく堅実な痴態の魅せ方をしています(←参照 短編「アマノジャクが恋をして」より)。
結合アップや表情のアップなど、説明的な小ゴマを比較的多用する傾向にあるのですが、要所ではきっちり大ゴマを投入しており、快楽に染め上げられるヒロインの肢体全体をしっかりと描写。また、女の子達の描写を中心としながら、男女の肢体の密着感も重視しているのも大きなポイントと言えるでしょう。
 シナリオの都合上、コンドームを用いることも多かった作家さんですが、今回はほとんどの作品が生で中出しを決め込んでおり、良くも悪くも万人受けしやすいフィニッシュシーン。また、同シーンで描かれるヒロイン達の絶頂においては、エロとしての過激性よりも少女達の美しさがより大切にされている感があるのも特徴的です。

 シナリオにしてもエロにしても、若人の血の熱さが通った上での瑞々しさに満ちており、それらの素敵な眩しさを読み手に噛みしめさせてくれる技巧が実にニクイところ。心地よい余韻に浸らせてくれる1冊です。
個人的には、自分の気持ちに素直になれたお姉ちゃんがめがっさ可愛い短編「Steady×Steady」と、妹ヒロインの真剣な表情が実に素敵な短編「アマノジャクが恋をして」が特にお気に入りでございます。