YouPervert.jpg幸村誠先生の『ヴィンランド・サガ』第10巻(講談社)を読みました。アシュラッドの「ぶら下げたまま登れ」という言葉が、彼もまた数多の人を殺めたことを考えれば、実に胸を打つ巻でしたな。
相変わらず飄々とした農場の警備役・蛇ですが、この人でも叶わない敵が農園の平和を脅かす日が来るのでしょうか。そして、その時に非暴力を誓ったトルフィンはどう行動するのでしょうかねぇ。楽しみです。

さて本日は、香吹茂之先生の初単行本『この変態野郎!』(ティーアイネット)の遅延へたレビューです。だいぶ長い間、本作のレビューを溜めてしまって面目ないです。
ドSな美女達が男を支配するという、退廃と陶酔の世界が紡がれる怪作となっております。

bf3c17cb.jpg収録作は、冷たい美貌を持つ権力者の娘さんが学校の男性教師を犯したり、お屋敷で美少年のペットを飼っていたりなシリーズ作「男とはドMと見つけたり」全3話(←参照 同シリーズ第2話より)、交通事故で入院し四肢が骨折で不自由になった少年とその少年を弄ぶナース達を描く連作「期間限定『芋虫』」「芋虫は羽化して蝶になる」、および読み切り短編「先輩とキミ」。
収録本数こそ多くないものの、1話・作当りのページ数は32~42P(平均35P弱)とTI系でも相当の大ボリュームを誇ります。どちらかと言えば、単純にエロの量的満足感で押しまくるタイプではあるのですが、作品世界に香る妖しい狂気が作品の読み応えを増しているとも感じます。

【エロ漫画における男性と女性の役割を反転させる怪奇の物語】

作劇面に関してはかなり特殊な部類と言え、いわゆるインモラルなSM劇として話が作られているかと言うと、そうではありません。
シリーズ作第2話「男とはドMと見つけたり2」において、お嬢様が「私はサディストではない。支配者である。」という旨を発現している様に、男性の肢体を痛めつけることが目的ではなく、快楽を以て男性を支配することがヒロイン達の目的になっています。
YouPervert2.jpg現代社会の男と女の立場を完全に入れ替えた設定で、夏祭りの夜の男女の初エッチを描く短編「先輩とキミ」(←参照 女性が立ちバックで男性を攻めるの図)などで顕著ですが、男性が快楽を以て女性を“支配する”というマチズモ的な構図をそのまま男女間で反転させたと評してもおそらく間違いないでしょう。
よって、一般的なエロ漫画において広範に認められる、性的快楽における男性の主導性が完全に破棄される空間が形成されているとも言え、読み手によって程度の差はあるでしょうが、男性にとって一種の居心地の悪さがあると言えます。
この居心地の悪さを甘受し、支配者たる女性達に屈することを良しとする、正しくドMの諸氏にとっては、全てをドミナに委ね得る天国が待っているとも言えます。
とは言え、登場する男性がその尊厳を全否定されることは決してなく、「男とはドMと見つけたり」第1~2話のラストでは、女性達に好き放題にされていた男性のしたたかさを描き出しています。この辺り、凌辱エロのラストにあるヒロインの大逆転エンドを、やはり男女で反転したものと捉えても面白いでしょう。

【妖しく微笑む麗しのドミナ達】
登場するヒロイン陣は、女子高生さんやナースに女医、校医やごく普通の若い女性等々多彩ですが、女性キャラを多人数投入する傾向にあり、女子高生の集団やナースの集団に(性的な意味で)揉みくちゃにされたりします。
必ずと男性キャラクターを攻める側に回る女性陣は、上述した通りに支配者としての側面が強く、例えば鞭を振るう女王様といった分かり易い“サディスト”としての描写を望むのは避けるべきかと思われます。
無論、男性を拘束し、男性器を弄って射精を何回も繰り返させ、後ろの穴をディルドーで掘ることに、嬉々として興じる彼女達の頼もしさには、一種のマゾヒスティックな感情が煽られるのは間違いありません。
YouPervert3.jpgハイティーン級の美少女も登場しますが、成人女性も含めて、女性的な可愛らしさは造形面にあまり含まれておらず、挑発的な瞳と妖しく光るリップが特徴的な表情からは蠱惑的な美しさと、性愛に対する余裕さを感じ取らせます(←参照 また、ボンテージの似合うこと 連作前編「期間限定『芋虫』」より)。
女性陣の体型的には、手頃サイズの巨乳も含めて全身に適度な肉感が施された女体となっており、上述した少々劇画的な表情付けとの相性は良いと感じます。
初単行本ながら絵柄の安定感はかなり高く、シャープな描線をまとめつつ、コントラストをはっきり付けた作画は、退廃的な雰囲気を下支えしつつ、なかなかに美麗。とは言え、アニメ/エロゲー絵柄のキャッチーネスとは、ある意味で正反対の方向を向いている絵柄ではあるので、好みは相当分かれると思います。

【男性の肢体を強烈な快楽を以て“犯す”エロシーン】
女性が男性を調教していく様子をシナリオの中軸としているため、性的行為を描くシーンで作品の大半が占められているため、エロのボリューム感は強固にあるタイプ。
YouPervert4.jpg作品の趣向から推察可能であると思いますが、種々の事情によって抵抗不能の状態に追い込まれた男性側が性愛の“支配者”たる女性達にレイプされるエロ展開であり、ラストまで男性側が主導権を握ることはありません。挿入したり、されたりといった交わり方は(←参照 一番下が男性 連作後編「芋虫は羽化して蝶になる」より)、少なくとも女性側にとっては一つの愛のカタチではあるのですが、相互の性癖への信頼関係に基づき、確たる様式美を持つSMではない故に、狂気性もまた感じさせるところ。
特殊な趣向であるため、エロ展開の組み立て方は“通常”の男女の性愛とはやや異なるものの、各種行為によって男性器を攻めたて、何発も射精させる前戯パートと、それでもなお強制的に奮い勃たされ、女性器に精を搾られると共に女性が装着したディルドーで菊門を貫かれる抽送パートという構成は、オーソドックスなエロ展開に形式上は近似してはいます。
なお、前立腺を刺激されて自らの意志の外で何発も射精させられたり、射精を封じるために尿道に栓をされたりと、男性読者ならば思わず股間を抑えたくなる様なプレイも頻発するため、過度の苦痛描写は存在しないとは言え、Mっ気がない方には精神的に苦痛となるエロ描写であることは要注意。
ヒロイン側が攻め手であることもあって、ある程度“余裕”を保つため、性的快楽の強烈さを表現するのはむしろ男性側となっており、女性の蕩け顔やエロ台詞の連発などはあまり描かれません。この点、あまりエロ演出に依存せず、上述した肢体の妖艶さ、かなりリアル寄りで過剰な淫猥さのある性器描写など、女体の直接的なエロスで煽情性を高めるスタイルとも言えるでしょう。
長尺であるため、どうしてもエロの密度の高さを維持し難い面があるものの、終盤では女性が自ら腰を使って男性を射精に導くことで中出し絶頂フィニッシュへと導いており、ここにおいて男女間での性的絶頂が終に一致を見る事になります。

管理人は、流石にそこまでM属性が強くはないため、エロ漫画作品としては非常に珍しいことに、本作では抜けなかったのですが、エロ漫画における男女の性的役割を軽々と転換させてみた力量には惚れこんでおり、何とも居心地の悪い性描写を含めて面白いものを読ませて頂いたと思っております。
個人的には、男性と女性の社会、恋愛、性行為における役割を反転させ、その中でごく当たり前の、しかして我々にとっては異常な恋愛セックスを描く短編「先輩とキミ」が最愛でございます。