FatBoyFairyTail.jpgTVアニメ版『新世界より』第4話「血塗られた歴史」を観ました。ここにきて第1話冒頭のシーンの意味が理解できたわけですが、正しく血と暴力で塗り潰された過去の上に成り立つ世界だったのですな。
壮絶な殺し合いという過去の“反省”が、人間同士の闘争を著しく抑制する機構を生んだ一方、その倫理観から外れる者には無慈悲な粛清が加えられるというのは大いなる皮肉であり悲劇だなとも感じます。

 さて本日は、田沼雄一郎先生の『FAT BOY FAIRYTALE』(コアマガジン)のへたレビューです。なお、先生の前単行本『エロコメ』(ワニマガジン社)のへたレビュー等もよろしければ併せてご参照下さい。
汁塗れになって強烈な快楽に咽ぶ男女の痴態を体温と体臭にむせ返る様な濃厚さで描き出すエロシーンがド迫力の作品集となっています。

FatBoyFairyTail1.jpg 収録作は、生徒会経理として多額の予算を超優秀な会長に任され、女の子達の事情に合わせて融資しつつお礼としてのセックスを受け取る巨漢デブボーイ・吉奈賀君の活躍を描く長編「RE:PARTICIPET」第1話~第7話(以下第3期シリーズとして続刊か:←参照 会長と吉奈賀君 同長編シリーズ第1話より)、メガネショタな瞳君と元気娘な早乙女先輩の学園生活な「瞳君シリーズ」3作。なお、カバー裏に収録された約15年前のコラムではこの作家さんの超辛口トークが読めますよ。
なお、長編タイトルに“Re”とある様に、この作品は約4年前に発売された『PARTICIPET~吉奈賀くん奔走する~』(コアマガジン)に収録された長編作の続きとなっており、今単行本から読んでも理解し易い様に設計はされていますが、該当作を読んでおいた方が会長の思惑や吉奈賀君の性格などが分かり易いでしょう。
 1話当りのページ数は16~26P(平均19P)と書店売り誌初出としてはやや控えめな部類。と言っても、適度に読み応えのあるシナリオと、かなり濃厚で強烈さを有するエロシーンとが組み合わされており、特に後者は満腹感を強く喚起するものとなっています。

【誠実さや直向さが前を向かせてくれる青春活劇】
 与えられた資金力を活用しつつ、それに溺れることなく女の子のため、部活動のために主人公が奮闘する長編作も、その叩き台ともなった「瞳君」シリーズも、基本的にはポジティブな青春活劇と言え、性欲も含めた感情や意志の力で前向きに進んでいく少年少女の姿を描き出します
 長編シリーズ「RE:PARTICIPET」では、主人公と、彼にとっての“本命”である会長さんの関係を描き出しつつ、第1期シリーズにおいて吉奈賀君と関係を持った女の子達も再登場させており、彼の活動を紹介すると共に、その頼りがいのある存在をしっかりアピール。
第2期シリーズにあたる本作においては、新たに茶道部部長や写真部部長、ダイエットに悩むぽっちゃりさんなどが新たに登場しており、彼女達の悩みやトラブルを吉奈賀君が解決するエピソードを並べていきます
eaa1f307.jpg当初の矮小な変態性癖は何処へやら、その巨体と共に広い心で女の子達の悩みや想いを受け止め、彼女達の支えとなる吉奈賀君は、優しく誠実でありつつ、何処か堂々とした風格を感じさせており、会長が目論んだ通りに“いい男”としてしっかり成長していることが伺えます(←参照 頑なだった茶道部部長の心と体を解きほぐして 長編「RE:PARTICIPET」第3話より)。
 この性格面は勿論のこと、老いた雄猪の如き醜い肢体にも関わらず、その体臭や汗、精液が女性を惹き付けるかについて第7話で説明を施しており、その上でそういった“理屈”を越えたところで会長と吉奈賀君の関係が形成していることにも言及しており、今後の展開にも上手くつなげる構成となっています。ストーリー全体に大きな流れが無い分、展開にマンネリ感がないわけではないものの、中盤展開としては必要な部分でもあるでしょう。
 この長編作の原型となったらしい「瞳君」シリーズに関しては、凝った設定を入れ込んでいない分、より分かり易く青春ラブコメとなっており、後述するように長編作のエロシーンの特濃感とは対比的に程良いアタックでまとめて、快活な雰囲気を保っている感があります。

【個々に魅力的な性格設定と方向性が様々な女体設計】

 長編シリーズ・「瞳君」シリーズ共に学園青春活劇でもあるため、当然ながらヒロインはミドル~ハイティーン級の女子高生さんで統一されており、文化部系女子やスポーツ万能の運動娘など、部活少女が目立つのも作品設定上の特色。
長編シリーズでは、茶道や写真撮影などの部活の内容がセックスにおけるプレイやシチュエーションに応用されるのはこれまでと同様であり、そこらのアイディア力や多彩さが作品の面白さを形成している一つの要因でしょう。
“形式”を重んじるあまりに考えや態度が硬直化していた女の子や、太っていることがコンプレックスでダイエットを繰り返していた少女、写真撮影において自らが追うテーマを他人になかなか理解してもらえなかった天才少女、データや研究に没頭していて男女の仲の本質を見誤っていた女の子等、それぞれコンプレックスや悩みを抱えているヒロイン達が長編作では登場しています。性格面で分かり易いキャラクター属性はあまり無いとも言えますが、丁寧にキャラクターを掘り下げていく分、彼女達の魅力が徐々に高まっていくのは◎。
 グラマラスボディな会長に加え、細身で巨乳なタイプの女の子複数名、ぽっちゃりを越えてかなり太めの女の子や、ややロリっぽさを感じさせる小さめボディの少女など、肢体造形に関して方向性はかなり多彩と言えます。
FatBoyFairyTail3.jpg初出時期が古い「瞳君」シリーズでは、割合に無難な女体描写にしているのですが、長編作ではいずれのボディデザインにしても、柔らかいお肉に加えて筋肉や骨格の存在感、体液に濡れる皮膚や粘膜の感触を想起させる描写、肛門の皺や股間に茂る陰毛、ビラビラがめくれ上がる女性器など、生々しさを強烈にもたせた肢体描写となっており、“綺麗”で“整った”女体描写を望む方はドン引きする可能性があるレベルであることには要留意(←参照 長編「RE:PARTICIPET」第6話より)。
 これまた初出時期が大きく異なる「瞳君」シリーズの第1話・第2話では90年代フレーバーが強く香る漫画絵柄を示しており、個人的には心地良い懐かしさを感じますが、その絵柄のベースを保ちつつ濃さ・重さを添加して密度を上げた絵柄でその他の作品に安定して共通させています。

【美しさと汚さを併呑してパワフルに過激に疾走するエロ描写】
 まだまだエロ特化でなかった時代を感じさせる「瞳君」シリーズでは、そもそもボリュームが小さめであることに加えて、エロシーンは結構短めですが、近作である長編作に関しては十分な尺のエロシーンとなっており、2話跨ぎで濡れ場が展開されることさえあります。
 前述した女体の生々しい官能性に加え、吉奈賀君のだらしない脂肪がたっぷり付きまくった巨漢ボディの存在感は凄まじく、抽送パートで体サイズの対比以外ではなるべく描写しない工夫がされつつも、前戯パートでは恥垢まみれの特大包茎ち○こや皺の走るアナルなども描写されており、ここに強い抵抗感を受ける方は確実に居ると思います。
とは言え、この巨体に女性の肢体が包み込まれ、火照った体の体温や肌をじっとり濡らす汗、結合部から溢れ出る互いの性液が絡み合うセックス描写は非常に濃厚な温度感や体臭感を生み出しており、そういったものが“気持ち良い”と感じ取れる程に登場人物達が好意に没入していることを示しています。
FatBoyFairyTail4.jpg この描写の濃厚さに加え、今単行本では演出面でかなりのアグレッシブさを示しており、蕩け顔やアヘ顔は勿論、そこを通り越して半狂乱のアクメ顔を曝け出したり、口から泡を吹いたり白痴系のエロ台詞を狂った様に連呼したりしており(←参照 この怒涛の勢い 長編「RE:PARTICIPET」第7話より)、そもそも勢いや迫力を感じさせる作画である分、視覚的な強烈さは大変なことになっています。ここらの過激な演出に頼らなくても、構図取りや描写の連続性でそもそも十分なアタックがある作家さんであったため、この選択は既往のファンにとってある程度評価を分ける要素かもしれません。
 加えて、エロ関係でも結構な過激なプレイやアブノーマルプレイを投入しており、スカトロ要素や大量の白濁液噴出による顔面パック、超重量級のボディをフルに生かして最奥までの子宮口ファックなど、前述した肢体描写や粘膜描写のえがつない淫猥さをフル活用している分、その強烈さは好き嫌いが分かれると言えます。
 小ゴマでも作画が抜けない緊張感のあるコマの詰め込みや、ダイナミックな構図取りで魅せる大ゴマなど、作画面での技巧は流石ベテランのお仕事であり、猛烈な勢いをしっかりコントロールしつつフィニッシュシーンへと駆け込んでおります。

 作品構築そのものは非常に気持ちの良い青春活劇である一方、「PARTICIPET」シリーズにおいて重視された美醜を併せ呑む生々しさが更に強化された感があり、猛烈な加速を見せる演出面も相まって実用面では好みが大きく分かれる単行本でしょう。
「PARTICIPET」シリーズの第1巻では是非続きを描いて欲しいとレビュー中に書いたのですが、その希望が叶って一読者としては本当に嬉しく思っています。第3期シリーズにも是非期待をしたいところ。