KyunKyunSwitch.jpgTVアニメ『戦姫絶唱シンフォギア』第7話「撃ちてし止まぬ運命のもとに」を観ました。なんというか設定の妙なインパクトに圧倒されて観続けてきましたが、クリスの正体なども含めてネタでなく正統派的な面白さが出てきたと感じます。
歌が嫌いといいながら、迷子の兄妹と歩く際に口ずさんでしまう辺り、この娘さんもやはり歌うことへの愛や決意があるのかなと思いますね。

 さて本日は、江戸屋ぽち先生の『きゅんきゅんスイッチ』(コアマガジン)のへたレビューです。なお、先生の(成年向け)前単行本『純愛くろにくる』(同社刊)のへたレビュー等もよろしければ併せてご参照下さい。
ほんのりコミカル成分を混ぜつつ繊細でリリカルな作劇の中で可憐な少女達の耽美な痴態を楽しめる1冊となっています。

KyunKyunSwitch1.jpg 収録作は、高名な音楽家を両親に持つバイオリン奏者の少女が、その演奏の“硬さ”を指摘され、愛を理解するためにライバルであり頑なな彼女の理解者でもある少年に“セックス”なるものを教えて貰おうとする中編「我が儘コンツェルト」シリーズ全5話(←参照 ヒロインにとってライバルであり、彼女個人を理解してくれる少年 シリーズ第2話「我が儘レゾナンツ」より)、および読み切り短編5作。
描き下ろし作品である短編「ソラニン」(18P)を含め、1話・作当りのページ数は18~24P(平均20P弱)とコンビニ誌初出としては標準かそれをやや上回る程度のボリューム。繊細な感情表現に下支えされたシナリオの味わい深さを中核としつつ、そこに陶酔感の強いエロ描写を適量織り交ぜてくる作品構築となっています。

【甘酸っぱさに胸キュンなリリカル青春ラブストーリー】
 掲載誌である「漫画ばんがいち」は、良くも悪くも頑固であり、旧来の少女漫画テイスト満載の作風とはっちゃけたコメディタイプとを提供し続けているのですが、この作家さんはどちらの作風も描ける上に、両者を融和させた作品も描けるのが作家としての強み。
台詞を文字として表現するメディアであることを利用して、ネットスラングを連発するヤンデレ彼女さんとの色恋沙汰を楽しく描く短編「【包丁彼女】ヤミちゃん【ヤンデレ?】」、および愛しの女性のために色欲を捨てようと決意した男性の受難?を描く短編「座禅 Dynamite!!!」などは、コミカル色が強く、ヒロインの可愛らしさやユニークな展開の楽しさをほっこりと楽しむタイプ。
 これに対して、シリアス成分を含む作品においては、異性への恋愛感情やその根底となる自己の認識などに対し、少女達が悩み、葛藤し、行動する様を丁寧に描き出しており、その悩みや悲しみが男性にとって都合のよい物ではなく、彼女達自身にとって重要なものであるという描き方が「少女漫画的な」リリカル成分の豊かさにつながっています。
KyunKyunSwitch2.jpg台詞表現やポエティックなモノローグを用いることで饒舌な語りを入れることもあれば、台詞を排して視覚的表現のみでヒロインの心情を描き出すこともあるなど(←参照 まるでこぼれる涙の様に桜吹雪 短編「掌の約束」より)、語りの緩急はありながら読み手の心を単行本タイトル通りにきゅんきゅんと締めつけてくれる話回しの見事さは女性読者は勿論、男性の乙女回路をも思わず悶絶させてくれること請け合いでしょう。
 このリリカルな作風を骨子としつつ、ヒロインのキャラクター性に由来するコミカル成分を適量混ぜ込んだ中編シリーズ作は、頑なな心故に堅い演奏であった少女が、セックスの快楽だけでなく、人を愛する気持ちを知り、それに悩み、また恋路を叶えていく中で、バイオリニストとしても成長して流れとなっています。
愛こそが表現の源泉であるというテーマ性を持つこの中編作は、前述した恋愛ストーリーと成長劇が絶妙のアンサンブルを奏でており、少女と少年に与えられる祝福と同様に、他の作品もヒロイン達の恋路に幸を授ける優しいラストがメインとなっています。

【ふんわり柔らかな絵柄で描かれるキュートな不器用ガールズ】
 描き下ろしの短編「ソラニン」はお嬢様学校を舞台に華族の少女同士の性愛を描く百合モノですが、ばんがいち掲載作は稀に百合成分を含みつつ、ミドルティーン級程度と思しき美少女さん達をヒロインに据えた青春ラブストーリー。
短編「ねこふんじゃった」に登場する20歳前後と思しき唯一のお姉さんキャラも含め、恋愛を含めた対人関係に“不器用さ”のあるヒロイン陣となっており、前述のヤンデレさんの様なコミカルなキャラ造形にもつながる一方、自らの感情へのもどかしさを描き出すことがシリアスな展開の中でヒロイン達の純粋性を強調していることも大きな魅力でしょう。
 なお、ヒロイン達の心情描写を話の縦糸にすることが多いため、ギャグキャラとして活躍するケース以外では、男性キャラクターの存在感は弱めですが、決して状況に流されるだけの男性達ではなく、落ち着いた言動とブレない誠実さを保つことで、動揺するヒロインと好対照を形成しているとも言えます。
KyunKyunSwitch3.jpg 肢体造形に関しては、やや小さめに肢体を描きながら、ロリぷに感が決して強い方ではなく、程良い華奢さのあるタイプ。たっぷりサイズの巨乳の持ち主もいれば、ぺたんこバストの娘さんもおり、おっぱいサイズに幅を持たせつつ、柔らかい肌が女体を包んでいる様はエロくかつ可愛い女体の描写と感じます(←参照 余談ですが、この作家さんの描くお団子ヘア少女は実に!実に良いです! 短編「座禅 Dynamite!!!」より)。
 大きめなリボンやふわふわとした髪の毛、フリルを施した衣装などなど、衣装や小道具でも少女漫画チックなキュートネスを強化しており、その意味では狙いが濃いのですが、その濃さを感じさせないふわっと柔らかな絵柄が持ち味。なお、コマが複雑に入れ込む画面構成やトーンワークなどの絵柄の修飾は、これまた少女漫画色がかなり強めで、読み手によって馴染みやすさは多少異なるでしょう。
初出時期が約4年前と古い作品も混じっていますが、基本的な絵柄は初期から完成していたと言え、男性向けとしての萌えっぽさと魅力を共有するものが多い少女漫画絵柄で安定していると評し得ます。

【陶酔感の強さと巧みな画面構成で魅せるエロシーン】
 分量的には決して長尺とは言えないのですが、小~中コマを細かく、しかして描写の連続性をしっかり保った上で並べる画面構成は、じっくり描写を追わせることでページ数以上のボリューム感を生じさせているのは、表現手法の観点から面白いところ。
 女の子同士が絡み合う百合セックスも含め、唇を重ね、肌をすり合わせ、互いの性感帯を刺激合う前戯パートを程良い緊張感と陶酔感を織り交ぜて描き出し、徐々に高まる性的快楽によって後者がより高まっていく流れで抽送パートへとスムーズにバトンタッチ。
KyunKyunSwitch4.jpgとろとろと愛液がこぼれ出すヒロインの秘所に挿入すれば、彼女達は未知の快楽にやはり戸惑ってしまい、そこは男性読者の保護欲and/or征服欲を刺激する一方で(←参照 中編シリーズ第1話「我が儘コンツェルト」より)、パートナーの手と体に包まれながら絶頂への階段を上っていく様は十分に甘い幸福感を以て描き出されているのが美点でしょう。
 また、ヒロインの痴態を描写するために男性の体躯の描写を封殺する手法が現在のエロ漫画業界では広く認められますが、ばんがいち勢の恋愛セックスの描写においては、男性の体躯にも十分な存在感を保持させ、男女の体が重なり合い、触れ合う様に一定の重きを持たせているのが特徴です。好みを分ける要素ですし、ストレートな煽情性を損なう可能性もある方法ですが、それがきっちりと魅力になるのがこの少女漫画チックエロ漫画ならではと個人的には断固主張したいところ。
アヘ顔や断面図、エロ台詞の掃射といった派手な演出は控える一方、可愛らしく蕩ける表情や、どぎつくならないものの十分にストレートなエロさのある結合部アップ描写、切れ切れに漏れ出る嬌声などのエロ演出を核としており、穏やかでありつつ着実に興奮を積み重ねていくタイプ。
 前述した細かいコマ割りは、表情のアップや結合部見せ付け構図、二人の肢体の全体描写などをテンポ良く、かつ印象的に並べており、短めながらもフィニッシュシーンまで快楽曲線に切れ目のない構築となっているのも美点。中編シリーズのみシナリオの要請上、ラストに中出しを持ってきて、それまでは外出しという仕様ですが、その他の作品では中出しフィニッシュが基本です。

エロの濃淡の程度やシナリオの方向性などに関して、ある程度読者を選ぶタイプではあるのですが、漫画ばんがいち読者にとっては快哉を叫ぶ作風であり、お話にハートをきゅんきゅんさせられながら、ヒロイン達のエロ可愛い痴態にはぁはぁさせられる1冊。
冒頭でがっちりハートを鷲掴みにされた短編「掌の約束」にも痺れましたが、中盤までのコミカル感と終盤での乙女チック成分大爆発との調和に悶絶した中編シリーズ作が最愛でございます。お勧め!!