TremblingLip.jpgTVアニメ『幻影ヲ駆ケル太陽』第5話「ああ、金、金!この金のためにどれほど多くの悲しいことがこの世に起こることであろうか!」を観ました。タイトル長ッ!しかし、ぎんかちゃんは芯の強さを持った良い子であることが分かった回でしたね。
コッテコテな大阪商人キャラであったお父さんですが、娘思いの善き父親・お客様第一で飾らない経営者・ダエモニアもある程度対処な血族者と、何かすごいスペックのおっさんでしたな。

 さて本日は、犬先生の『フルエルクチビル』(一水社)の遅延へたレビューです。4年ぶりの新刊単行本となりますな。なお、先生の前単行本『ラッキーな日』(同社刊)のへたレビュー等もよろしければ併せてご参照下さい。
美少女達の繊細な感情描写で魅せる恋愛ストーリーと柔らかボディが蕩けるエロ描写が詰まった作品集となっています。

TremblingLip1.jpg 収録作は、素行不良な女生徒と男性教師が一線を越えて肉体関係&同居状態となるも男性側の方はなかなか素直になれず~な「Fuzzy lips」シリーズ全3作、乱交サークルと化している映研に新人部員として入ってきた少女に惹かれるも彼女はセックス依存症で~な中編「RED」全3話(←参照 彼女は何を探すのか 同中編第1話より)、および読み切り形式の短編3作。
1話・作当りのページ数は20~26P(平均22P弱)と概ね標準的なボリュームで推移。比較的コンパクトにまとまった作品が多いですが、シリアス系の作品では適度な重さのある読書感、コミカル系では軽めの読み口に整えられており、共にエロ的なボリューム感は標準的に仕上がっています。

【お馬鹿ラブコメからほろ苦青春ラブストーリーまで】
 お馬鹿なキャラクター達の台詞の応酬で楽しさを生むラブコメ・エロコメ系から、切なさやほの苦さを含んだ上で誠実な恋愛感情の動きを描出する青春ストーリーまで作風に幅がありますが、若い男女の色恋沙汰を描き出すことは共通しています。
 お馬鹿コメディ系に関してはかなりはっちゃけたスタイルとなっており、いわゆる“邪鬼眼”な妹さんが兄貴に“膜”を返せと難癖付けて大暴れな短編「頭のおかしい妹は眼帯ネコミミでやってくる」(タイトル長ッ!)や、女教師さん(ヒラコーリスペクト)の“予知”と男子学生君の“妄想”によるエロ能力バトルな短編「八つ橋先生と下田くん」などは、恋愛モノとしての甘さよりドタバタ展開や素っ頓狂な掛け合いの面白さが優先されたタイプ。
 こちらのコメディ系作品にもしっかりと存在感を持たせつつ、思春期の少年少女達の情動を繊細に描き出して、男女の体だけでなく、心が近接して行く様を誠実に描き出す作風がこの作家さんの一つの真骨頂であり、「Fuzzy lips」シリーズや中編「RED」はこちらのタイプ。
4479ec42.jpg男女の仲において生じる不器用さや羞恥心、自己保身などを忌避せずに描き出し(←参照 おこなの? シリーズ第1話「Fuzzy lips」より)、そのすれ違いの中で“理解不可能な異性”として少女を位置付けつつ、理解不能性の中に放逐することはなく、相手を真摯に想う気持ちを保ち続けることで互いの心を寄せ合い、微笑ましいハッピーエンドへと至る流れは十分な読み応えを有しています。
 セックスによる肉体的快感と、恋愛による精神的充足を明確に異なるものとして描いているのも特徴的であり、前者に溺れて後者を軽んじた場合には短編「放課後マリアージュ」の様にビターでダークなラストを迎えることとなります。
 管理人の好きな作家・森見登美彦氏の作中に「男にとって女は謎であり、女にとって男は謎である。(中略)筆者が思うに、決して理解できないものを理解しようとする営みこそ、真のこみゅにけーしょんと呼ぶべきではないだろうか」(『聖なる怠け者の冒険』朝日新聞出版, p61)とありますが、正しくその営みを描くのがこの作家さんの美点と評したいところ。

【“理解不能な異性”としての美少女ヒロインズ】
 短編「八つ橋先生と下田くん」に登場する、色眼鏡・白衣・ロングマフラーという妙ないでたちの女教師さんのみアダルトレディですが、その他のヒロイン陣はミドル~ハイティーン級の制服美少女達。
 ヤンデレガールに実は一途なツンデレ娘、突拍子の無い言動な中二病妹、無口無表情なクールガールと、かなりキャッチーな属性付けが為されたヒロイン陣と言え、それだけでも十分に魅力的ですが、それらの設定は“理解不能な異性”を明示する役割を担っているのがストーリー上の肝でもあります。
喜怒哀楽の感情を鮮やかに描き出しつつも、彼女達が内に秘めた秘密や謎、真意を徐々につかんでいこうとする流れがシナリオの軸を形成すると共に、彼女達のキャラクターとしての魅力も高めています。
2c2ae299.jpg 前述の八つ橋先生や、中編「RED」のメインヒロインであるクールガールはぺたんこバストの持ち主ですが、その他のヒロインは基本的にふかふかと柔らかそうなバストの巨乳美少女さん達(←参照 女子校生エキス!そういうのもあるのか! シリーズ第2話「Fuzzy lips 2nd」より)。乳尻の柔らかな肉感の強調と、肢体全体のスレンダーで儚げな美しさの維持を両立させたボディデザインが大きな美点と感じます。
肢体造形面であまり描き分けは為さない一方、性格や設定に合わせてキャラクターの見た目に差別化を図っているのは一つのポイントで、装備した眼帯に台詞が浮き出る謎コスプレの妹ちゃんはともかくとして、レースの下着や制服など着衣面でも丁寧な描き込みが認められます。
 アニメ/エロゲ絵柄的なキャッチーネスを有しつつ、描線の繊細さや適度なオサレ感もバランス良く調合した絵柄は現在でもそれ単体で勝負できる魅力的なもの。ギャグに走る時は思い切ってギャグに走った崩し絵になっているのも楽しいです。

【ヒロインの美しさをキープしつつ熱量のあるエロ描写】
 エロシーンそのものの分量は十分に確保された作品構築であり、美少女の肢体がしなやかに動き、陶酔した表情を浮かべながら淫液に塗れていく痴態をたっぷり楽しめます。
 お馬鹿な妹がエロ展開終盤に白目&泡吹きというどーしょもない表情を浮かべるというかなりギャグ寄りな演出を加える短編「頭のおかしい妹は眼帯ネコミミでやってくる」の様なケースもあれば、陶酔の中に少女の狂気を感じさせる短編「放課後マリアージュ」や肉体的な快楽を闇雲に求めて主人公以外の男性に無表情のまま揉みくちゃにされていくチクリと胸が痛くなる中編「RED」の様なケースもあり、作劇の方向性やテーマ性を織り込んだエロシーンであることは大きな特徴。
その分、アグレッシブなエロ描写をひたすら連続させる構成ではなく、双方の感情描写が重要となる描き方であるため、とにかく抜きに徹したいという方には一定の減点材料となりえることには要留意。
 ラブラブ感たっぷりの恋愛Hにしろ、すれ違い合う男女の悲しげなセックスにしろ、ヒロイン達の美しさを殺さない描き方となっているのが大きな特徴であり、露骨なアヘ顔や蕩け顔ではなく、くたっと弱った表情や夢中になっている表情を控えめでありつつも饒舌な描き方をする点や、結合部見せ付け構図はしっかり用いつつも透過図や断面図などの女体そのものの全体性を損なう可能性のある描写を露骨には用いない点などがその代表例。
e3bbd403.jpg体位が変化する間の体の動きのスムーズさや、男性が女性を抱え込んだり、逆に女性が男性を抱き止めたりする際の女性の四肢のしなやかさ、グッと背中を反って走る快感に反応する艶めかしさ、ふるふると震える乳揺れなど、女体そのもののエロティックさを存分に生かした描き方は流石に上手いと感じさせます(←参照 キマった構図&柔らかな乳揺れ 中編「RED」第2話より)。
 結合部から淫液の飛沫を上げつつ、キスや乳揉みなど美少女の柔らかさを満喫しながら進行するピストン運動は、体を密着させながら膣内の最奥にたっぷり白濁液を注ぎ込んで両者絶頂の様を1Pフルで描き出しており、ヒロイン達の美しくもエロい絶頂描写を楽しめます。

 この作家さんの代表作「ストレンジ・カインド オブ ウーマン(ズ)」と同様に、容易には分かり合えぬ異性とのコミュニケーションが作品の中核を形成していると言え、その上で様々な感情が迸るエロの実用性が高まっていると評し得るでしょう。
ストーリー的には、青春の青臭さが心地良い中編「RED」が、エロ的には女子校生エキスを満喫できる「Fuzzy lips」シリーズがお気に入りでございます。お勧め!