

初の連載作とのことですが、この作家さんの魅力を存分に出している作品であるなと感じますね。
さて本日は、赤月みゅうと先生の『美少女クラブ』上下巻(ティーアイネット)のへたレビューです。なお、先生の前単行本『奴隷兎とアンソニー』(同社刊)のへたレビュー等もよろしければ併せてご参照下さい。
この作家さんの真骨頂を発揮するSFファンタジーと美少女達の柔らかボディが熱気と体液に包まれる性描写の魅力が満喫できる作品となっています。

1話当りのページ数は32~56P(平均40P)とかなりボリューム感の強い構成。ストーリーとしての読み応えも十分に図られると共に、数多の美少女達とのセックスを連続させていくエロシーンの満腹感もある秀逸な作品構築であると評したいところ。
【数多の美少女達が咲き誇るハーレム空間】
それぞれ花の名前を持つ学園の女の子達と次々と性的関係を持っていく“ハーレム”的な展開を序盤から終盤手前まで維持しており、計20名程度のミドル~ハイティーン級(に見える容姿)の美少女達が登場する大所帯。なお、脇役として女教師さん(合法ロリ)や学園を支えるメイドさん達もエロに絡みます。
学園では“ガーデン・ローズ”の名を持ち冷たい表情である意図を以て学園を運営する主人公のメイド・リーザをメインヒロインとしつつ、優しいお姉さんタイプやちょっとSっ気もある不良少女タイプ、純粋なロリっ子や快活なスポーツ少女などなど、様々なタイプの美少女が登場するのはハーレム系作品としての明確な特長と言えるでしょう。
いずれの女の子達も、セックスとそれが生む快感への強い欲求を有しており、主人公との性行為を純粋に“気持ちの良い行為”として楽しむ存在として描かれており、このことは男性にとっての棚ボタ的な多幸感を強く形成すると共に、彼女達がそのような存在にされていることにストーリー上の大きな意味があります。
サブヒロイン達が次々と登場してセックスに興じていくと共に、あることをキッカケとして“拷問部屋”と呼ばれる場所へと何人も消えていき、新たな女の子達が登場して行く展開は、ホラー/サスペンスとしての雰囲気を生み出すと同時に、かなりの数に上るサブヒロイン達をそれぞれのエロシチュで見せ場を確保させることにも奏功しています。

少女漫画チックな修飾性もありつつ、割合に素朴なキャッチーネスを有する漫画絵柄は、派手さこそ欠けるものの幅広い層に受け入れやすい健康的なタッチが身上。絵柄そのものは比較的地味ではありつつも、時に繊細に静けさを保ち、時にダイナミックな構図や演出を自在に魅せる表現力の高さはこの作家さんの武器であり、エロシーンでもシナリオパートでもその魅力を光らせています。
【穏やかさの中に熱気と淫液に塗れた濃厚な陶酔空間の形成】
学園の女の子達に共有させられるという設定であるため、初めて見る“男性”に興味津々であり、セックスの気持ちよさに夢中になって何回も行為を求めてくる女の子達とたっぷりハーレム生活を満喫できます。
序盤~中盤では積極的な女の子達に終始求められ、お風呂場で隠れながらの集団Hや女の子達による夜這い、ほんのり逆レイプ気味なシチューションなど受動的な趣向が目立ちます。これに対して、中盤以降、主人公が自らの意志を発揮して行動し出すこともあって、特殊な命令手段を用いてのレイプ的なシチュエーションや女の子に羞恥を強いるプレイ、純粋無垢な少女達への快楽教え込みなどのプレイも投入されていきます。
複数名の女の子と同時にセックスを行ったり、次々と場面を変えて個々のセックスを描いたりといったエロシーンの構成が多いため、どうしても早漏展開がちになっていますが、逆に言えば次々と女の子達に中出しを決め込むドライブ感の強い複数ラウンド制を形成しているとも言えます。また、最終盤においての、メインヒロイン・リーザとの愛情に満ちたセックスをじっくりと描き出していることは前述の描き方と好対照を形成。
エロシチュエーションに関して多少の味付けはありますが、その辺りはさほど重要では無く、ヒロインの柔らかく温かい肢体をたっぷりと味わい、互いに腰を振り合いながらぬめった秘所で快感を交換する、非常にシンプルかつ基本的な行為そのもので強力無比な煽情性を叩き出すのがこの作家さんの真骨頂。

前述の通りに抜き所の多いエロシーン構成であり、前戯パートでの口内射精&精飲、性器への中出しの連発に加え、前戯パートでのヒロインの絶頂やお漏らしなども多数投入。フィニッシュシーンではダイナミックな2P見開き構図を多用し、秘所から精液が漏れ出す事後の描写などの追撃も用意しているのは長尺故の分量の余裕に依るものでしょう。なお、基本的に抽送パートでは膣内射精のみを描いていますが、このことにもストーリ上の意味がしっかりとあります。
【“生としての性”が快楽の楽園の歪みを打ち破る】
本作品は数多の美少女達とのウハウハ・ハーレムエロとしての外装を纏いつつ、それと対比的な不気味なミステリーでもあり、壮大な世界観を有するSFファンタジーでもあり、そしてセックスの“気持ちの良い行為”という肉体的快楽の側面を肯定しつつも、それ以上の価値を見出していくことに本質があるストーリーとも言えるでしょう。
女装も似合う美少年と彼とのセックスに積極的に励んで性的快楽を満喫する、外部から巨大な壁で遮断された学園は、少女達の記憶を改竄し、次々と消していっては新たな少女達を生み出していく強固なシステムに支えられた、いわば“歪んだ楽園”としての真実が徐々に明らかになっていきます。
蓄積されたその“歪み”が破綻をきたし、主人公が学園と外界の真実を知ることによって、物語は終盤大きく動き出すことになるのですが、それを駆動する要因はセックスの快楽への欲望ではなく、性行為の本質である“生殖としての行為”の側面であり、またそこに宿る“男女の愛”に他なりません。

次々と消えていく少女達の存在もあって、終盤ではやや重苦しさもあるものの、そこはしっかりと救済措置を施して大団円のハッピーエンドとしているのもこの作家さんらしい点であり、学園の運営を冷徹に進めていたリーザの救済も含め、単なるご都合主義で済ませずにストーリーとその設定内でハッピーエンドを円滑に迎えさせる手腕も高く評価したいポイント。
ハーレムエロとしての多幸感・全能感、その中で高まっていく焦燥と不安、終盤でのシナリオの躍動と爽快なハッピーエンドと、非常に良質なドラマ性を有した作劇と言え、最初から最後までグイグイと読みを牽引してくれることでしょう。
作劇・エロ描写共に、この作家さんの美点が遺漏なく発揮された長編作と言え、エロ漫画の現在と未来を担い得る実力派として不動の地位を築き上げたと言っても決して過言ではないでしょう。
エロ漫画として“セックス”そのものを作品の中核に据え、抜きとしての強みを存分に打ち出しつつ、そこに確たるテーマ性を宿す技量に一レビュアーとして最大限の賛辞を贈りたいと思います。お勧め!