TimeLimitedGirl.jpg中島三千恒先生の『軍靴のバルツァー』第5巻(新潮社)を読みました。騎兵に対する方陣の優位はナポレオンのエジプト戦役(ピラミッドの戦い)等で有名ですが、道具・戦術の進化は更に騎兵と言う旧来の兵種に圧倒的なものを与えるのだなぁと感じました。
ヴァイセンが反転攻勢をしかけるようですが、曲者なルドルフが相手側にいる以上、そう簡単にコトが進まない様な気もするのですが、一体どうなるのでしょうね。

 さて本日は、史鬼匠人先生の初単行本『if~時限の彼女~』(ティーアイネット)の遅延へたレビューです。この作品も長期間の更新停止で紹介が遅れてしまい、申し訳ない。
叙情性を重視したシナリオワークの魅力と程良い生々しさのある官能性があるエロの実用性が光る作品集となっています。

TimeLimitedGirl1.jpg 収録作は、時間を巻き戻し、行った行為を何度もなかったことに出来る魔法の時計を手に入れた登場人物達それぞれの性愛をオムニバス形式で描く「if」シリーズ全3作(←参照 主人公の時間を巻き戻す少女の目的は? 同シリーズ「if~子犬物語~」より)、および読み切り形式の短編2作。
収録本数は計5本と少ないですが、1話・作当りの形式は24~53P(平均42P弱)と個々のエピソードの分量はかなり厚め。シナリオ重視の作品構築ではありますが、このボリュームを生かしてエロにも十分なボリュームを割り振った構成となっています。

【閉塞とそこからの解放を基調とする叙情的な作劇】
 MUJIJNレーベルにおいてベテラン・楓牙先生が長年担い続け、新鋭の赤月みゅうと先生などが発展させた叙情性を重んじたストーリー作りを重視する作風にカテゴライズできる作家さんの初単行本であり、相応に読み応えのある1冊。
夏の日本家屋において、再開した幼馴染の男女が過去の思い出を振り返りながら互いの感情を打ち明け合いつつ体を交える短編「夏帰」の清涼感を感じさせる心情描写や、籠の中の鳥であり、男性に汚されながらその快感に浸る美女とその痴態を覗き見る男性との邂逅を描く短編「覗き花」の退廃感など、情景描写にセンスを感じさせる手腕は1冊目ながら大いに期待を抱かせる点と感じます。
 また、オムニバス形式によって、時間を何回もやり直せるというギミックを共通させた「if」シリーズは、性的な行為も含めて“何でもやり放題”という全能的な状態を発生させつつ、非常に空虚な停滞を生む側面もシナリオに入れ込んでおり、その“停滞”が如何に打破されるかという点においてそれぞれのストーリーに異なった面白さを付与しています。
TimeLimitedGirl2.jpg自分に辛く当った女生徒や上司である女性教師に復讐を繰り返しながら、恋心を都合よく扱ったヒロインに対してある種“逆襲”される因果応報な「if~学園物語~」、謎めいた少女の為すがままになりながら、その中で“自分”を取り戻すことで“仮面への殉死”を回避する「if~子犬物語~」、全能であるが故の虚無と鬱屈を純真な少女の優しさと恋心が救済することで停滞から抜け出す「if~時計物語~」(←参照 相手を思い通りにするだけの“愚かしさ”) と、それぞれ作劇としての仕掛けは異なりながら個々にフックのあるシナリオワークであり、特に終盤での話の動かし方は秀逸。
 ストーリーそのものが生み出す、退廃感や非日常感、逆に爽快感や現実感を、建築物や自然の風景、気象などを丁寧に描いた背景・舞台描写で的確に補強しているのはなかなかに唸らされる点であり、このレーベルで言えば赤月みゅうと先生や笹川ハヤシ先生などの魅力と共通するものを感じます。
 作劇面において、まだまだ粗削りな部分があるのは確かで、シナリオの転換点において動機づけがやや弱く感じるケース(短編「夏帰」など)もありますが、ストーリー性をしっかり練り込もうとする意欲は十二分に感じるのは大きな魅力と評したいところ。

【健康的な肉付きのむっちり感で魅せる美少女ボディ】
 ヒロイン陣に関しては、概ねミドル~ハイティーン級の美少女を中心としていますが、短編「夏帰」では20代半ば程度と思しき幼馴染の女性が登場したり、サブヒロイン(概して犯られキャラ)として20代半ば~30歳前後程度の年増美人が登場することもあります。
クールで謎めいた美少女を描くこともあれば(「if~子犬物語~」)、純粋で天真爛漫である故に倦んだ大人の心を揺さぶる少女もおり(「if~時計物語~」)、明暗を織り交ぜたイデア的な“少女像”の扱いの巧さはポイントの一つであり、この点がシナリオ面の魅力にも貢献。
 男性キャラクターに関しては、一部を除いて成人男性を登場させることが多く、“カッコいい”キャラクターではなく、日常の鬱屈、虚無感を絡ませた上で、それが様々な形で時に救済され、時に自縄自縛になる描き方は、男性読者にとって投影し易いタイプとも評し得るでしょう。
TimeLimitedGirl3.jpg 控えめバストのロリ系ボディの女の子も居れば、たっぷりの肉感を有する巨乳美少女も登場しており、どちらのタイプもスベスベとした柔肌の触感や、健康的な肉付きで適度なむっちり感を打ち出している点は共通しています(←参照 三つ編み巨乳メガネっ娘 「if~学園物語~」より)。なお、適度な濃さで茂った陰毛や、ぷっくりとしたアナルなど、特に股間周りでは一定の生々しさのある淫猥さを出しているのも肢体描写における特徴の一つでしょう。
なお、黒髪の描写には作家さんの思い入れがある様で、セックスに合わせて乱れる黒髪の描写や、黒髪ロングと清楚なワンピース、セーラー服や着物などの組み合わせは、さほどその点に強い嗜好を有さない管理人とってもグッとくる要素ではありました。
 初単行本ということもあり、初期の作品と直近の作品では絵柄のクオリティに差異はあるものの、繊細な描線を丹念に重ねた、何処となく女性向けっぽさもある絵柄の特性は維持されています。アニメ/エロゲー絵柄的なキャッチーネスも相応にありますが、ある程度クセのある絵柄であることには要留意。

【互いの体温と粘液を交換するエネルギッシュなセックス描写】
 前述した通り、ストーリー性重視の作品構築であり、また「if」シリーズでは時の流れを何回も繰り返すという設定上、エロシーンが小刻みに連続される傾向にあるため、1回のセックスをねっとりと描き出すタイプではありません。
とは言え、「if」シリーズでは、“無責任”になりえる故の行為の過激化や相手を食い散らかす様な慢心を複数の性行為の投入によって可能としていますし、逆にそれ以外の短編作では男女双方の感情・欲望を合間合間に描き出しながら十二分な尺で熱っぽい性交を描き出しています。
 行為の過激化を明示するために、拘束プレイや露出プレイ、ハメ撮りなどといった行為を投入することもあり、また無責任な行為の象徴であるレイプ描写なども目立ちますが、エロシチュエーションにおいてそれらは必ずしもメインではなく、互いの感情や欲望をストレートにぶつけ合う行為としてのセックスとその高揚感を実用性の中核に据えている印象が強くあります。
「if」シリーズでは複数回の処女喪失が投入されるのが特徴的ですが、その他の作品でも処女ヒロインは多く、その破瓜の痛みも含めて女性に苦痛や羞恥を強要することで嗜虐性を生み出すケースも多い一方、恋愛セックスにおいてはそれらを超越して相手を受容する女性らしい強さとして描かれることもあるのは一つのポイントでしょう。
6ee0bfb0.jpg ヒロインのしっとりとした肌をまさぐったり、ねばついた愛液に濡れる秘所を責めたりな前戯パートにも一定の分量を割きつつ、汗で濡れた互いの肢体を絡ませ重ねるピストン描写のエネルギー感が武器の一つであり、行為の熱気や淫液の臭気を感じさせるような、劇画チックに濃く・重いエロ描写が連発されるのはTI勢らしい特徴と感じます(←参照 股間のぬめった液汁描写と追随する擬音表現 短編「夏帰」より)。
 エロシーンを複数回投入することが多いこともあって、多少早漏展開気味となることはあるもののフェラからのぶっかけや中出し連発など、射精シーンは多く、フィニッシュは2P見開きの大ボリュームで射精の感覚にビクビクとアクメを迎えて蕩けるヒロイン達の痴態をがっつり提供しています。

 ここ最近のMUJIJNレーベルらしい新鋭作家と言え、濃い目のエロはしっかりと継承しつつ新風を吹き込んでくれそうな作家さんと感じます。あまりストーリー性に凝り過ぎると、抜きツール重点の方にはネックとなる可能性はありますが、この路線で挑戦を重ねていって頂きたいと個人的には考えております。
いずれも甲乙つけがたい作品群ですが、強いて選ぶのであれば、夏の田舎のノスタルジックな風景描写と畳の上の熱っぽいセックス描写が魅力的であった短編「夏帰」を推したい所存。