GoodByeFairies.jpg旅井とり先生(原作:坂戸佐兵衛氏)の『めしばな刑事タチバナ』第8巻(徳間書店)を読みました。今回取り上げられていますが、牛丼太郎ファンとしては本当に寂しい話でございます。
貧乏学生時代には“納豆丼”にお世話になりましたし、デフォルトでサラダにかかっているあのドレッシング、そして脂の少ない安いヘルシーな肉の牛丼、懐かしく思い出します・・・(遠い目

 さて本日は、スミヤ先生の『SAYONARA FAIRIES』(茜新社)のへたレビューです。なお、先生の前単行本『Lycoris』(同社刊)のへたレビューもよろしければ併せてご参照下さい。
華奢なボディの美少女達と紡ぐ繊細で柔らかい叙情に満ちたストーリーが取り揃えられた作品集となっています。

GoodByeFairies1.jpg 収録作は、アイルランドからの留学生である少女と彼女の日本語レッスンを担当する男性教師の恋愛模様を描く中編「さよならフェアリー」全4話(←参照 美しい少女との非日常のような日常 同中編第1話より)+二人の後日談である描き下ろしシリーズ「encore lesson」2本(それぞれ6P、3P)、および読み切り形式の短編5作。
描き下ろし掌編シリーズを除き、1話・作当りのページ数は16~24P(平均22P強)と標準的な部類。シナリオとエロの分量配置は適切に行われつつ、どちらかと言えばシナリオの味わい深さで魅せるスタイルと言え、ページ数以上に読み応えのある作品群と感じます。

【穏やかさと切迫感が同居する雰囲気豊かなストーリー】
 いずれの作品も穏やかでありつつ、時にふわりと優しく、時に張りつめた空気で少女達の性愛を描き出していますが、今回の作品に共通するポイントは単行本タイトル通りに“別離”であると言えましょう。
于武陵の詩の一節“人生足別離”を如何様に解釈するかは人それぞれでしょうが、二人の別れのシーンから始まって、共に過ごした時間を思い返す様に紡ぎ、そして二人が幸せな笑顔を示す別れのシーンへと回帰する中編作が示す通りに、悲しい別れだけではなく、明るい希望を残す一時の別れもまた描かれています
短編「月がきれいで」「およめさん」では、それぞれ少女性愛、思春期における同性愛という将来的に“別離”が強制(もしくは矯正)させられる可能性のある中で、“今”に存在する二人の確かな絆を描き出し、好いていた異国の少女が“母”となることで彼女の中に魅力を見出していた“少女性”を喪失する短編「twelve stepps」では、少女にとっては幸福な、主人公の少女性愛者にとっては不幸な別離を示しています。
 もっとも、そのテーマ性を前面に押し出して作劇を堅いものとすることはないのも特長であり、悲しい結末を迎える短編「あなたの視界」を除けば、少女達のピュアな感情や願いが、何よりヒロイン達自身にささやかながらも尊い幸福をもたらすことが読み口の良さを形成しています。
8702d6d6.jpgこの、ディスコミュニケーションの解消とそれに伴う日常の中での幸福という恋愛モノとして基礎的な魅力をしっかり織り込みつつ、日本語を教えてくれた教師に対して母語であるゲール語で愛の言葉を返して二人の対等性を示す中編作や、夏目漱石の有名な英訳をキーとする短編「月がきれいで」(←参照 “月がきれいですね”)などに示される通りに、言葉の紡ぎが雰囲気の良さを生み出しているのも大きな特性。
 また、中編作の二人が映画を見に行くという件から、それぞれゴシック風、アラビア風の世界観を持つ短編2作を並べ、映画という言葉に仮託した非日常のファンタジーとしてそれらの魅力を高める単行本としての構成など、LOレーベル屈指のオサレ作家(誉めてます)らしいところを見せています。

【儚げな印象とそれを裏切る“強さ”がある少女達】
 ファンタジー風の作品では貴族のお嬢様や遊牧民の少女などが登場していますが、現代日本を舞台とした日常系の作品群に登場する小○校高学年~中○生と併せてローティーン級の少女達で統一されたヒロイン陣。
思春期入りたての時期であることもあり、幼さとしての純粋性を有しつつ、主人公、もしくは少女性愛者にとって都合の良いキャラクターとして形成するのではなく、“一個の人格”として尊重され、自らの意志と感情によって動く存在であり、それ故にハッピーエンドの幸福感は際立ちます。
 キャラデザインに関しては、金髪の白人美少女達や、黒髪ポニテ&白ワンピースの清楚な美少女、民族衣装に身を包む遊牧民の少女など、ド真ん中でポピュラーとは言い難いものの、非常に“狙った”キャラデザインとなっており、属性持ちには堪えられないタイプと言えましょう。
 なお、言語や風習の異なる(主人公にとっての)外国人や、盲目の少女(短編「ゴシック」)、好きな男性と年の差が大きい少女など、男性主人公との相互理解に明確な難しさを持つヒロイン像が多いのも特色と言え、その分、それらを乗り越える喜びや、乗り越えられない悲しみが作品の魅力を生み出しています。
GoodByeFairies3.jpg 肢体描写に関しては全ヒロイン共通しており、ほっそりとした四肢やぺたんこバストが備わる体幹も肉付きは弱く、等身が高めであることもあって華奢さが目立つタイプ(←参照 中編「さよならフェアリー」第3話より)。ただし、それが彼女達の“弱さ”に結ぶ付くのではなく、その様に華奢な肢体に力強い“幸福への意志”が漲っているのが実に素敵。
このほっそりとした肢体描写との親和性が高い、繊細な描線を組み上げる絵柄は、キャッチーな二次元絵柄をある程度ベースとしつつも、創作系のオサレ感なども盛り込む独特なものであり、悪く言えば地味ではあるものの、非常に丁寧な作画は表現力が高く、可愛らしさよりも美しさが先行する絵柄であると評したいところ。カラー絵・モノクロ絵で印象の違いが小さいのも特徴であり、ジャケ買いでも何ら問題はないでしょう。

【絵柄の美しさ・穏やかさを保ちながらの陶酔表現】
 シナリオ重視の作品構築である一方、これはエロシーンの分量が少ないことを意味せず、各作品のページ数に見合った尺で少女達の美しくも官能的な痴態描写を鑑賞可能。
 その一方で、肉体的な快楽を単純に肯定しない傾向にあるため、互いの心が通じ合う恋愛セックスでは十分な陶酔感を打ち出す一方、疑念や切迫感が先行するケースでは全能的な快楽を拒む描き方となっている場合があり、ここをテーマ性を重視した長所と見るか、エロの入れ込みやすさを減衰させた短所と見るかは読み手の嗜好に寄る所でしょう。
性行為がもたらす快感を肯定するか保留するかは作品によって異なるものの、十分なアタックを以てセックス描写を為していることは共通しており、華奢なロリボディが全身を駆け巡る刺激によって戦慄き、震える描写は読み手の性欲中枢を甚く刺激。
GoodByeFairies4.jpg 絵柄自体が穏やかでお洒落な雰囲気を有している分、エロ演出に関しても比較的大人しい印象を受けるものの、手法そのものとしては十分な強度を打ち出そうとする意図は明確であり、漏れ出す涙や涎で濡れる表情や絞り出される嬌声、結合部から漏れ出すぬめった水音の擬音など、的確な演出によって美少女達の痴態を彩っているのは○(←参照 短編「ゴシック」より)。
もっとも、そういった演出手法を濃密に集約するスタイルではないのも特徴であり、ヒロインの美しさを阻害する様な要素は極力持ち込まない様にするスタイルとも評し得るため、雰囲気の良さを維持するためにはある程度の“セーブ”は辞さないスタイルとも言えるでしょう。作風からして至極ナチュラルな方法論と言えますが、エロ描写にアグレッシブさを求める諸氏は要留意。
 羞恥や快楽、未知の感覚への恐怖と喜悦をない交ぜにしながら、肉体的快楽に包まれていく少女達の初々しい痴態を前戯・抽送の両パートで十分に見せ付けた上で突入するフィニッシュシーンは、結合部見せ付け構図をある程度重視した描写となりつつ、美しい少女達が絶頂の快楽に悶える様そのものの官能性で勝負する抜き所と言えるでしょう。

 LOレーベル自体が様々な方向性を模索している中で、同レーベルの盛り上げに寄与した“オサレ感”のある作家の一人であることは間違いない一方で、その趣向に変に染まることなく、独自性を貫き通した作家さんであると評したいところ。
リーシャさんが実際カワイイヤッター!であり、また冒頭からラストまでの練られた構成も高く評価したい中編「さよならフェアリー」が最愛でございます。短編「twelve stepps」を推さなかったのはヒロインが褐色肌じゃないから