GirlsInEternalSpring.jpg 長谷川哲也先生の『セキガハラ』第3巻(リイド社)を読みました。前から気にはなっていたのですが、みの吉が言及していたので読んでみたところ、流石の長谷川マジックと感じました。
秀吉の死から関ヶ原の戦いへ向かう流れの史実を(一応)押さえつつ、ぶっ飛んだキャラクターとバトルの描写で魅せていますね。光成と秀家と吉継のお茶会のシーンは、彼らのその後を考えると、ジーンときました。

  さて本日は、史鬼匠人先生の『常春の少女たち』(ティーアイネット)のへたレビューです。なお、先生の前単行本(初単行本)『if~時限の彼女~』(同社刊)のへたレビューもよろしければ併せてご参照下さい。
和風情緒の溢れる風景の中で繰り広げられる遊女たちの時に華やかで時に哀しい艶姿が楽しめる1冊となっています。

247670f0.jpg  収録作は、特別な行政区として近世の遊郭を復活させ、風俗営業として売春行為が認められる島に、借金を背負った主人公の男性が遊郭で働くために連れてこられ、大見世で働く遊女たちに出会う中編「常春」全4話(←参照 桜が年中咲き誇り、美しく着飾る遊女達が揃う世界 同中編第1話より)+描き下ろしのフルカラープロローグ(4P)+描き下ろしエピローグ(3P)、および読み切り形式の短編「思春期妄想期間」。
収録本数こそ少ないものの、描き下ろしエピソードを除いて1話・作当りのページ数は32~48P(平均38P弱)とかなりボリューム感の強い仕上がりとなっています。十分なページ数を持つ中編として適度な読み応えもありつつ、エロの満腹感を重視した作品構築となっていると言えるでしょう。

【遊郭という世界の陰陽が入り混じる恋愛ストーリー】
  華やかな調度の遊郭を舞台に、色とりどりの和服で着飾った美少女・美女達が登場する中編作は、この島に連れてこられた男性が勤務先の遊女達にたっぷりとサービスしてみらうという、棚ボタハーレム展開で第1話を開始していますが、本作のストーリーのメインにはこの男性キャラクターはあまり関与していません。
遊女であるヒロイン達の逞しさや素直な性欲を表現しつつ、遊女達にとっての“苦界”としての側面も同時に描かれており、実は店の若旦那と幼馴染であり、互いに好き合っている少女・雪霧が遊女になり、処女を別の男性に買われてしまうという悲劇が描かれます。
GirlsInEternalSpring2.jpg互いの想いを抑えきれず愛し合ってしまう若旦那と雪霧の何処か切なくも優しい性交、そのことが露見して雪霧と彼女を庇おうとするメインヒロイン・藍葉に加えられる苛烈な性的懲罰(←参照 遊女緊縛お仕置きは日本の伝統!(真顔) 同中編第4話より)、そしてそこからのハッピーエンドへの回帰と、やや展開を急いでいる印象はあるものの、ストーリーとしての構成は安定しています。
  常春の名前の通りに一年中美しい桜が咲き誇り、綺麗な調度に囲まれながら、愛を囁き魅力的な肢体で男性を虜にする美しい遊女たちが存在する本作の舞台は、正しく“性的ファンタジー”の完成型であるとも言え、その虚構の魅力を十分にアピールした上にエロシーンにも生かしていますが、具現化させられた理想の裏にある歪みや悲しみも同時に描いている点は遊郭という題材を扱うに当たって非常に好ましいと感じます。
また、この性的な桃源郷や、そこに生き続ける人達を作中において決して否定せず、前述の男性主人公などの登場人物達の優しさや直向きさが、若旦那と雪霧にハッピーエンドを迎えさせ、また、現実と桃源郷の共存を肯定させることになっているのも好印象。
  短編「思春期妄想期間」については、ヒロインの少女が普段の生活の中で“性教育の教材にさせられる”“運動部員の性処理係に”“弟君と近親エッチ”といったアブノーマルな妄想に浸ってしまうという、どちらかと言えばコミカルでイージーゴーイングな作品ですが、オチでちょっとドキリとさせられる仕掛けをしています。

【健康的・現実的な肉付きの遊女ヒロイン達】
  舞台となる廓の遊女のまとめ役であるメインヒロインの藍葉ともう一人のメインヒロインと言える雪霧を中心として、他4名程度の遊女達が登場する中編作は複数ヒロイン制であり、年齢層としてはハイティーン~20代前半程度と思しき美少女・美女達。短編作も女子高生ヒロインとなっています。
面倒見がよく前向きで明るい性格の藍葉や、クールな佇まいの中に許されない恋心を押し殺していた雪霧に加え、おっとりとした年上美人や元気な後輩美少女などが揃った遊女ヒロイン達ですが、エロ可愛いだけではなく、その道のプロとして男の心と体を絡め取る手管の持ち主としても、程好く妖しく描かれています
  中編作においては、花鳥風月(特に花)が鮮やかに描かれた襖や屏風、そしてヒロイン達の着物に加え、行燈や障子、畳に和傘など調度品も伝統的な和風のもので揃えられており、華やかさもありつつ頻繁に陰や暗がりも描き込んでいる為に、何処か暗さ・寂しさも同時に感じさせる描き方は、“陰翳礼讃”の情緒を感じさせ、また“遊郭”という明暗・陰陽の入り混じる場にもよくマッチ。
GirlsInEternalSpring3.jpg  和風装束に包まれた女体は、おっぱいサイズにある程度のバラつきを持たせつつ、健康的な肉付きで適度にもっちりしたボディに適度なハリ・ツヤのある巨乳・桃尻を完備(←参照 中編「常春」第3話より)。バスト&ヒップのモチモチ感は十分強調されていますが、それらの存在感をグイグイ前面に押し出すタイプではなく、肢体全体の肉感と現実的なバランスでまとまる女体と感じます。
  初出時期の関係に加え、おそらく作品設定に合わせてという部分もあると思いますが、キャッチーでアニメ/エロゲー絵柄的な要素を持っていた短編「思春期妄想期間」に対し、近作である中編作は描線がより繊細で丹念になり、キャラデザインも端正さや上品さを重んじるスタイルに変化。
古い絵柄の方がキャッチーさや丸くはっきりとした描線による可愛らしさが目立っていたため、絵柄から受ける印象はかなり変化したと感じますが、丁寧な背景描写やヒロインの艶姿と組み合わさることで、繊細で上品な漫画絵柄が大きな効果を発揮していると個人的には肯定的に評価しています。

【淫液と快楽に包まれていくヒロインの艶姿】
  遊女たちの日々の営みと恋愛ドラマを描く中編作でも、次々とアブノーマルな妄想をしていく短編作も、複数のエロシチュエーションを擁していることもあって、濡れ場が分割構成されることが多く、またエロシーン間でのシナリオ展開にも重要性があるため、とにかく長尺のエロシーンに集中したい場合にはやや不向きかもしれません。
とは言え、ページ数が多いこともあって、各作品にエロシーンの総量は十分に用意されており、前述した通り次々と変態プレイ(妄想)が楽しめる短編作となっていますし、中編作でも手練れの遊女さん達による棚ボタハーレムH、遊女達を集めて上客たちへの乱交接待、規則に反した遊女への拘束凌辱に多数の男に次々と犯される肉便器プレイ、愛する人との優しい恋愛セックスなど、多彩なシチュエーションを4話に詰め込んでいます
  男性を優しく励ましたり、淫らな言葉を敢えて口にしたり、自ら積極的にプレイに関与したりな遊女さん達のテクニックと気配りが楽しめる和姦エロ系に対し、凌辱系のエロシチュでは緊縛や羞恥プレイなどでヒロイン達の心と体をねっとりと攻め立てる嗜虐的なものとなっており、それぞれの方向性について的確な踏み込みと修飾をしているという印象。
  エロ描写において、これといって特殊な演出を用いるタイプではなく、快楽と淫液に染まっていく肉感ボディの艶っぽさを中核としつつ、熱っぽく蕩けた表情や程好い量のエロ台詞、ぬるぬるとした質感を強調した液汁描写とそれの淫猥さを活かした上での結合部やキスのアップ構図と断面図などで、ベーシックな演出手法の組み込みで適度に濃く・重いエロ描写を連続させています。
97e10f5e.jpgまた、ページ数の余裕もあってか、2Pに渡るサイズの大ゴマの使用頻度が導入パートだけでなくエロシーンでも高く、ヒロインの全身が反応するダイナミックな構図や多数のヒロインの痴態を同時に映し出すハイカロリーな構図などを投入してインパクトを生んでおり、情報量を担保する小ゴマの付随と併せて良好な画面構成となっています(←参照 中編「常春」第2話より)。
  フィニッシュシーンでの盛り上がりの強調を必ずしも重視するスタイルではありませんが、ヒロイン達の艶やかボディを内から外から各種体液&白濁液で染めていく複数ラウンド制のフィニッシュは、色っぽく瞳を閉じてアクメの衝撃に耐えるヒロインの痴態を2Pに渡る大ゴマ(もしくは2Pフル)の大ボリューム映し出しており、ぬるぬるとした結合部から精液が零れ落ちる事後描写などを大ゴマで投入するケースもあります。

  遊郭という舞台を用意したことで、背景や衣装などの美術面、作られた楽園の陰陽を描くシナリオ、キャラクターの日本的な美しさ&エロさを存分に引き出すことに成功しており、アイディアの勝利というべき快作。
エロの趣向的には、雑食派の諸氏にお勧めですが、この妖しくも優しいストーリーは幅広い層にお勧めしたいですね。