Emotive 三部けい先生の『僕だけがいない街』最終第8巻(角川書店)を読みました。悟と八代の直接対決、両者の“哲学”をも対決させる流れで緊張感と共に引き込まれました。天才的な八代になく、悟にあったものはやはり“仲間”の力なのだなと感じられます。
本編は終了となりましたが、その仲間達の足跡も含め、外伝の方も大変楽しみな作品ですねぇ。

  さて本日は、鬼束直先生の『いもーてぃぶ』(茜新社)のへたレビューです。なお、先生の前単行本『morning view』(同社刊)のへたレビュー等もよろしければ併せてご参照下さい。
ささやかな日常の温和な雰囲気と少女達の素朴なキュートネスで魅せる妹ラブエロ作品集となっております。

  収録作はいずれも読み切り形式の短編で計8作。1作当りのページ数は18~26P(平均22P弱)と標準的な部類であり、本数が多くないこともあって、単行本としてのボリュームには若干欠けています。ストーリー面でも重厚さはありませんが、エロシーンも含めて居心地の良い優しい雰囲気が形成されており、このまったり感を過不足なく味わう上ではちょうど良いボリュームの単行本と言えるかもしれません。

【日常の中にある素朴な性愛という平和】
  少女の妖しい魅力に囚われた男の姿に少女とその母親の“女”としての愛憎劇が入り混じる短編「夜に啼く」は妖しくも美しい情景と人の欲望の業が入り混じるビターさが味わい深い作劇であり、これもこの作家さんらしい精緻な作劇ですが、今単行本のメインを占めるのは前単行本と同じく平和で優しい雰囲気のラブエロ系ストーリー。
兄妹の関係を主軸としつつ、互いに好き合う者同士が自然な流れの中で互いを求め、体を重ねていくという流れ、“少女”であることをキャラクターとして特別視することはなく、無邪気で奔放な存在の可愛らしい女性として成人男性と年齢の垣根を越えて対等な存在として描いているのは変わらぬ美点と言えるでしょう。
Emotive1  家族での食事や夏のアイス、はたまたトイレでの性器への接触など、ごく普通の日常生活を起点として作品の導入パートを形成することが多く、彼ら彼女らの性愛もごく自然な生活の一部として営まれている様に描かれているのが一つ特徴的な点でしょう(←参照 “性”への気付き 短編「兄妹そろって・・・だから」より)。
“温和な日常の中で営まれる性愛”と書いてしまうとやや陳腐とも感じますが、愛し愛される行為をごく自然なものとして滑らかに描き出す筆致は十分に技巧的であり、少女性愛に付随しかねない罪科を誠実さで綺麗に拭い去ると共に、性愛をごく自然な営みとして正面から肯定する優しさを作中に湛える手腕は十分に技巧的。
  “日常”から逸脱しないという点は、ハイテンションなコメディや重厚なドラマ性を敢えて排除したスタイルとも言え、短編「夜に啼く」の様な深みのある作劇や恋愛ドラマとしての面白みを期待するのは避けるべきかもしれませんが、日常の中でこそ輝く繊細で素朴な心情描写が魅力として明確に立ち上がっているのも高く評価したいポイントです。

【丁寧に組み上げられた“等身大”の少女像】
  LOレーベルということもあって、高学年のローティーン級縛りなヒロイン陣であり、前述した様に相対する人物としては“少女”というの属性を特別視しない一方で、無邪気な奔放さや容姿の可愛らしさという面ではやはり思春期入りたてガールならではの魅力を明確に盛り込んでいます。
Emotive2兄妹モノがメインということもあって、従妹も含めて妹ヒロインが多い陣容。大人しい娘も居れば年相応に生意気さのある娘さんも居ますが、いずれにしても彼女達が好意を寄せていたり慕っていたりする相手に素直に性的欲望や恋心を打ち明けるシーンは甘い幸福感を生み出しています(←参照 ラブラブだ! 短編「ちょい甘ゆず」より)。
  創作物として勿論好ましく感じられる様に調整を効かせてはいますが、ヒロイン達の悪戯心や意地っ張りなところ、純粋な恋愛感情などの素朴な情動を妙に構えることなく、自然体(と感じられる様に)描き出すことで、作品全体に微笑ましさを付与しているのも大きなポイントでしょう。
前述した様に短編「夜に啼く」は他の日常系ラブエロと雰囲気が大きく異なる退廃感・倒錯性のある作品であり、少女と男性の関係性も特殊なものであるのですが、その他の作品は男性主人公が概して誠実で常識的な人物像であることも、ヒロイン達が一方的に搾取される様な不誠実な方向に進まない安心感を与えています。
Emotive3  少女達のキャラデザインについて言えば、決して華やかさがないわけではないのですが、どちらかと言えば“ごく普通の女の子”としての等身大の可愛らしさを重んじるスタイルであり、未成熟な寸胴貧乳ボディも含め、人工的な萌えっぽさやエロスで固めるのではなく、いい意味でもっさりとした色香を感じさせるタイプ(←参照 満腹でぽっこりなお腹 短編「じぇみに!」より)。
  キャッチーネス満載のアニメ/エロゲー絵柄でもあざとい萌えっぽさをたっぷり充填の萌え系絵柄でもなく、さりとてオールドスクールな漫画絵柄とも異なり、素朴な可愛らしさを引き出しつつ、少女の儚げな美しさを映し出すオサレ感や日常のほのぼのとしたコミカル感も滑らかに調和させる絵柄は一種独特の魅力を有しており、単行本通して安定しています。

【抑えた演出で少女達の可愛さを引き出すエロシーン】
  体感のボリュームとしてはがっつりとエロメインの作風と言う印象をあまり感じさせない一方で、ごく自然に日常の一シーンとして滑り込んでくるエロシーンには十分なページ数を持たせており、徐々に熱っぽく快感に体を浸していく少女ヒロイン達の姿をたっぷり鑑賞可能。
親や親戚達から隠れながら真夏の納屋での逢瀬、相思相愛の妹たちのある種橋渡し役として男性が参加している3Pセックス、義父と母親と奪い合う少女の可憐でありながら蠱惑的な誘惑セックスと、シチュエーションには一定のバリエーションを設けていますが、登場人物達の個室や布団・ベットなど、日常空間の中で自然に求めあうというシチュエーションを基幹としているのは、作劇面とよくマッチしていると評し得るでしょう。
  前後パートと抽挿パートの双方にバランスよくページ数を割り振ったエロ展開において、前戯パートでは体の弄り合いやボディタッチから始まって、未成熟ボディの一本筋な秘所やぺたんこバストへの愛撫やキスを重ね、フェラや手コキ等のご奉仕プレイも投入するなど、割合に盛り沢山なプレイの中で徐々に肢体を弛緩させていくシークエンスを形成。
Emotive4十分に愛液を潤滑して受け入れ体制が整った小さな秘所に挿入して開始されるピストン描写では、演出面は全般的に抑え気味であり、結合部アップ構図や断面図などで一応のアタックを叩き出しつつ、体を包む感覚にキュッと瞳を閉じたり蕩けたりな弛緩と緊張を繰り返す表情付けに思わず漏れ出す嬌声、肢体のビクビクとした反応など、最低限の演出でヒロインの地の可愛らしさを存分に生かすスタイル(←参照 短編「夏陰」より)。
  エロ展開中盤までは着衣セックスであっても終盤では必ず男女双方が全裸になって体を重ねており、純粋な性欲の力強さを盛り込みつつも、互いの肌の感触を慈しみ、味わい合う幸福感を基調とした濡れ場の雰囲気を形成し、演出面で一定の盛り上がりを図った中出し&アクメなフィニッシュまで滑らかに描き出しています。

  がっつりとした抜きツールをお求めな諸氏には量的にも質的にも物足りなさがあるかもしれませんが、穏やかで優しい雰囲気の中で素朴でキュートな少女達と幸福なセックスを楽しんでちょっと癒されたい諸氏には大変お勧めな1冊。
個人的には、エロシーンへの導入パートの何気なさが巧い点と女の子のリアクションの可愛さが素敵な短編「真夏の温度」が最愛でございます。