BokoBokoRin 西島大介先生の『ディエンビエンフー』最終第12巻(小学館)を読みました。最終巻ではあるのですが、西島先生自らが書き記した様に未完のまま終わってしまった作品となりました。作品の展開がプロローグにつながるまで読みたかったですね。
それにしても、史実とファンタジー、可愛らしさとグロテスクさが混然と入り混じる不思議な作品でした。

  さて本日は、知るかバカうどん先生の初単行本『ボコボコりんっ!』(メディアックス)の遅延気味へたレビューとなります。エロ漫画ジャンルは変わった名前の作家さんが多いですが、その中でも非常に風変わりなペンネームですな。
悪意と愚盲と暴力に支配された地獄絵図をストーリーとエロ描写によって背筋が凍るほどの強烈さを以て叩きつけてくる作品集となっています。

BokoBokoRin1  収録作は、家事もロクにせず旦那も含めた男性をATMぐらいにしか思っていない見栄っ張りな女性の転落劇および麻薬中毒となった彼女のせいで貧困に苦しみ、その地獄から抜け出そうと大切な友達と努力する娘を待つ悲劇の母娘二代記な連作「はぴはぴ❤ハピネス」「あん❤あん あんはっぴぃ」(←参照 地獄は続く 同連作前編「はぴはぴ❤ハピネス」より)、および読み切り形式の短編・掌編6作。
1話・作当りのページ数は4~28P(平均25P弱)と中の上クラスのボリューム。作品によってストーリー的な読み応えには幅があるものの、重苦しい読書感であることは共通しており、かつエロシーンの存在感も強烈そのものであり、快いか否かはともかくとして非常にヘビィな1冊であることは間違いありません。

【暴力と狂気と愚盲に包まれた弱者と愚者の共食い地獄】
  初見の個人的かつ率直な印象を語るのであれば、「凌辱の帝王・オイスター先生を凌駕しかねない作家さんが登場した」というものであり、作中を渦巻く人間の暴力性や愚かしさを、ある種の現実味を伴わせながら抜き身の刀のように浴びせてくる作品となっています。
後述する様に、暴力的な性表現そのものが凌辱エロとしての強烈さを生み出していることは間違いないのですが、この作家さんの作品の恐ろしい点は、多くの人間が少なからず自覚できる“性的欲望に内在する暴力性の延長線上としての凌辱”ではなく、多くの人間にとっては認識の外にある“暴力そのものが発揮され性的行為はその一形態に過ぎない凌辱”を描いているということに尽きると思います。
  相手を見下しながら金銭や物品だけを貢がせる女性への私的制裁(短編「おさんぽJK❤いちごちゃん」)、いじめや犯罪行為に手を染める少女への復讐や私的制裁(短編「JS☆ガバガバりんっ!」「JC☆ボコボコりんっ!」)、薬物中毒の男性による狂気的な性行為(連作前編)等、相手を肉体的および精神的に痛めつける行為として性行為が描かれており、そこに性的欲望は明確に介在する一方で、ある種健全な“性欲の充足”という面は重要ではありません。
前述した様に男性から搾取する悪女的な存在や、若さ故の無軌道さで反社会的な行為に走る少女など、罰せられるべき存在を凌辱の対象とすることもありますが、罪もない少女が苛烈な凌辱に叩き込まれる作品(連作後編や短編「嘘もつかない純粋な存在」)と同じく、破滅的な絶望感や後味の悪さが先行し、勧善懲悪的な爽快さは微塵もないと評してよいでしょう。
BokoBokoRin2  誰しも完全なる賢者・善人ではなく、時と場合によっては愚行をしたり咎人になってしまったりする可能性があるからこそ、文明化された社会において社会的システムや善き指導者との出会いにより、人がジャン・ヴァルジャンの様に悔悛・更生することを創作物に期待するのですが、この作品で描かれるのはそれらから隔絶された“万人の万人に対する闘争”なのではないかとすら感じます(←参照 悪行の代償として出会う剥き出しの暴力 短編「JS☆ボコボコりんっ!」より)。
善の勝利も、悪徳の輝かしい精気も一切排除し、悪意や愚かしさ、暴力が支配する社会の底層を描き、救済の善なる光が入ることのないまま愚者と狂人、暴力装置が共食いしあうかのような地獄絵図を凶悪なまでの衝撃で叩きつけ、絶望に包まれた無慈悲極まりないラストで〆る各作品は、読み手の背筋を凍らせ、やりきれない読書感を残します。

【ガーリッシュ&キュートな美少女ヒロインズ】
  ヒロイン陣の年齢層はかなり幅広く、下は一桁クラスの女の子、上は20代前半程度と思しき女性まで登場(連作後編の薬物中毒状態の老婆めいた容姿の母にもセックスシーンがありますが)。とは言え、人数的な主力はロー~ミドルティーン級の美少女さん達が担っています。
何も罪がなく自らの境遇に苦しみながらも努力している少女が不幸に叩き込まれる何とも胸糞悪くなるストーリーもある一方で、前述した様に目立つのは不道徳的な行為や犯罪、裏切り行為などを働くヒロイン達であり、他者や弱者を見下し、金銭欲や虚栄心を満たすことに専念する愚者として描かれています。
男性陣については、過激な暴力・性行為をためらいもなく実行する人物達であり、何かした精神的にタガが外れてしまった狂人的なキャラクターとなっています。容姿を馬鹿にされ、JKサービスに搾取されるオタク男性や、ホームレス、激務の中で薬物中毒になっている裕福な男性サラリーマンなど、経済的弱者や社会的に疎外される人物が多いことも、社会システムから疎外された暗部での地獄という無慈悲なリアリティを生み出しています。
  アダルト美人については綺麗かつ豊満ボディ、幼い可愛らしさのある容姿の美少女ちゃん達については程好い巨乳キャラもいれば、発達の悪いぺたんこバスト・ほっそりボディの未成熟ボディもいるなど、ボディデザインには多彩さがあります。
BokoBokoRin3ヒロインの可愛らしさを増す制服等も含めた衣装やヘア・アクセサリーも丁寧に描くことで、ガーリーなキュートネスを高めていますが、その柔らかく華奢なボディを殴打も含めて一方的な暴力に晒すことで、鼻血などの血に塗れたり腫れ上がったり、苦痛や衝撃の余りに口から噴き出す泡に塗れたりで歪んでいく表情、傷付けられていく柔肌や性器によって無残な肢体を曝け出すことになります(←参照 末路 短編「JS☆ガバガバりんっ!」より)。
  初単行本ということもあり、描線のデジタル的なすっきり感の明確化など、絵柄にはある程度変化の跡が見受けられます。女性キャラクターの可愛らしさを柔らかい印象で引き出しつつ、愚昧さや狂気性を表現力豊かに醜く描き出すという、相反する要素を両立する技術力が高く評価したいポイント。

【恐怖と狂気に彩られる暴力行為としての性描写】
  一部の掌編作を除き、ページ数が十分にあることもあって、単にエロシーンと呼んでいいのか怪しくなる暴力描写をたっぷりと投入しており、その中でも登場人物達の愚かしさや狂気性を存分に発揮させるため、エロシーンそのもので量的にも質的にも作品の凄味を生み出していると評し得るでしょう。
  悪行への代償だとしてもあまりに過酷な“制裁”が待ち受ける凌辱描写であり、殴打、首絞め、フィスト等も含めた異物挿入などの苛烈な行為が連続され、恐怖し絶望感に包まれるヒロインへと一方的に注がれ続ける暴力は、凄惨という他になく、かなりの雑食派である管理人もこれで抜くのは少々無理と感じるレベルの作品も多く、かなり読み手を選ぶことは間違いないでしょう。
前述した様に、ヒロインに対する暴力という側面が前面に出た性行為であって、上記のような肉体的な暴力を多く描く一方、ヒロインもしくは関係者の精神を粉砕して絶望感を味合わせる精神的な暴力も描かれることが多く、同時に読者の精神にも痛打を与える設計となっています。
BokoBokoRin4  最初は苦痛を感じていたけど徐々に気持ち良くなって~的な性的ファンタジーのご都合主義メソッドは全く用いておらず、愛液の潤滑などの体の反応は単に生理的なものに過ぎず、苦痛に満ちた表情と絶叫、妊娠や性病、尊厳を失う恐怖感に苛まれる表情と嗚咽、意識が飛びかけて朦朧とした表情に漏れ出るだけの呻きが溢れかえる描写はゴア・グラインドめいた凶悪さで畳み掛けてきます(←参照 短編「おさんぽJK❤いちごちゃん」より)。
これらの表情・台詞回しに加え、嘔吐や破瓜を含む出血、泡吹きに性器のむごたらしい拡張・変形など、ヒロインの可愛らしい容姿を敢えて汚損するかのような表現が多く、痛覚や恐怖に対する激しい反応も破滅感を増強。非常に攻撃的なエロ演出を多用しつつ、決して量的な過剰性で力押しすることなく、適度な演出密度を保ち、大ゴマのインパクトと小ゴマの情報量を両立させる的確な画面構成を為す技術力も魅力的。
  もはや為す術がない状態で苦悶し、意識レベルの低下したヒロインに肉体的・精神的なトドメを刺すことになる無慈悲な中出しフィニッシュは、大ゴマ~1Pフルで描かれており、その後に茫然とした表情で力なく横たわる状態や、絶望感や恐怖感で嗚咽する状態まで含めて読者に猛烈な居心地の悪さを打ち付けるものとなっています。

  多少の凌辱耐性があるくらいでは受け付けることが不可能なレベルの凶悪な凌辱作品であり、凌辱エロを嗜む諸氏でも、精神的に疲れている時には読むことを明確に避けるべき作品でしょう。
しかしながら、人間の暗部を抉り出し、それをある種の冷静さを以て貫く作風は圧巻であり、他を以て替え難い魅力を有しているのも確か。
個人的には、社会の底辺で築かれた美しく純粋な努力と友情すら冷徹に踏み躙るラストまで、強烈なドラマ性で魅せる連作「はぴはぴ❤ハピネス」「あん❤あん あんはっぴぃ」が最愛。内容が内容なだけに、安易に薦めるつもりはないですが、物凄い作家さんであるのは間違いないと一レビュアーとして保証します。