EightStoryOfErothAndTerror うすね正俊先生の『砂ぼうず』第17巻(エンターブレイン)を読みました。満が苦い経験と引き換えに入手した食べ物で何とか復活した小砂ですが、満のミスもあって再び西側勢力から追われる立場となってしまいました。
小砂が言う通りに謎の存在が砂ぼうず軍団の化け物たちだとすると、彼ら、特に砂ぼうずの狙いは何なのでしょうかね?

  さて本日は、叙火先生の『八尺八話快樂巡り 異形怪奇譚』(ジーウォーク)のへたレビューです。叙火先生の作品を当ブログで取り上げさせて頂くのは初めてとなります。
妖しげな美しさと性的快楽、そして理不尽で圧倒的な恐怖が入り混じるホラーエロ漫画となっています。

EightStoryOfErothAndTerror1  収録作は、土砂降りの山中で偶然通りかかった女性ドライバーが運転するタクシーに拾って貰った青年は、“八尺様”と呼ばれる巨大な女性の姿をした怪異に出会った少年の話を語り始め、目的地までの時間潰しに、青年とタクシーの運転手は交互に怪談話を披露していくことになるのだが~という長編シリーズ全8話(←参照 高い壁すら優に超える八尺様との出会いが全ての始まり 同長編第1話「八尺様」より)。
オムニバス形式に近い構成ながら、長編全体としての統一感とストーリー性が図られており、十分に厚いボリューム感を有するエロシーンも含めて、重厚な読書感を有する作品と言えるでしょう。

【恐怖と魅了の“異形”に魅入られたモノ達の怪異譚】
  “ホラー的な要素”を有する作品はエロ漫画ジャンルにおいてしばしば認められますが、本作は明確なテーマ性を有した上でホラー・怪異譚を骨組みとし、エロ漫画と融合させた非常に珍しいタイプの作品と言えます。
大半の読者は、第1話を読み終えた時点で、青年がかつて八尺様に魅入られたものの辛うじて村から脱出して助かった元・被害者の少年であり、背の高い女性運タクシードライバが八尺様であることに気付くと思われますが、何故この二者が再会することになるのか、そして再会が主人公の青年に何をもたらすのかこそが本作最大の面白さでしょう。
EightStoryOfErothAndTerror2  百物語よろしく二人が交互に語り合う全8話の怪談は、既存の怪談や怪異の話をベースにしたものを含め、エロ要素を取り込んで構成していますが、いずれの作品にも共通するのは、“人間にとって未知の怪異への根源的な恐怖とそれに背反するような抗しがたい魅力”そして“怪異に魅入られ囚われてしまった人間達”を紡いでいるということでしょう(←参照 妖艶なる恐怖 シリーズ第7話「くねくね」より)。
最後の怪談「猿夢」が語り終えられ、青年とタクシードライバーが共に“正体”を明かし合う時、果たして青年に何が起こるのかを描く長編ラスト4Pの衝撃は、本作最大の見せ場であり、詳細は伏せますが、表裏一体な恐怖と魅了がドラスティックに転換する様相を示します。
  “怪異への恐怖と魅力”“怪異に魅入られた人間達”という個々の怪談のテーマ性と、語り部である二人の登場人物の関係性が最終的に一致していく重層的な作品構築は見事であり、劇終へ向かってじりじりと高まっていく焦燥感と不安感で読み手の意識を惹きつけるのも正しくホラーとしての醍醐味。
各怪談および長編ストーリー全体としても後味が良いとは言い難いものですが、それでも怪異の物語に魅力を感じてしまうことそのものが、本作の持つテーマ性を雄弁に物語っているとも言えるでしょう。全体の構成そのものにレビュアーとして唸らされた作品です。

【妖しく冷たい色香を放つ豊満ボディの異形達】
  登場する女性キャラクターは、概ね女性の姿をした怪異と、怪異のもたらす事象の被害者となる女性に大別され、女子校生級の美少女も居ますが、どちらかと言えば成熟した色気を持つタイプの女性がメイン。
EightStoryOfErothAndTerror3怪異としての女性キャラクターと、人間としての女性キャラクターは明瞭な描き分けが為されていると言え、前者は白磁のような白い肌と艶っぽい黒髪、切れ長の目の美しい顔が浮かべる蠱惑的な笑み等で美しくも妖しい“死としての性”を担っているのに対し(←参照 シリーズ第4話「姦姦蛇螺」より)、後者は日焼け肌や明るい表情などの快活さを有する、“生としての性”を担っているキャラクターと言えるでしょう。
怪異としての女性に相対する人間である男性キャラクターは、少年であることが多く、性的に未成熟である彼らにとって、性的に成熟した美女という外見を取る怪異の未知性と抗しがたい魅力を増幅しているであろうことも特色と言え、メインストリームではないものの、ある種のおねショタ的要素を有していることは確かでしょう。
  どちらのタイプの女性キャラクターについても、キャラとしての掘り下げはほとんど為されておらず、これは“得体の知れないモノ”としての怪異、怪異の被害者となる“普通の人物”として描くことで、怪異譚としての怖さを増幅させる上で当然の措置。
  身の丈八尺(約2.4 m)の八尺様を含め、女性キャラクターは豊かなバストと豊満なヒップをお持ちな肉感ボディであり、特に人間としての女性キャラクターは精気を感じさせるある程度がっしりした肢体の持ち主ということもあって、スレンダー巨乳ボディをお望みの諸氏は要留意。
本作のテーマ性を担う妖しくも美しい存在を描くうえで、ある程度アニメ/エロゲー的なキャッチーネスを持ちつつも、ゴシカルな重さのある絵柄は非常に親和性が高く、表紙絵の雰囲気を保ったまま単行本を通して絵柄は安定しています。

【異形の蠱惑的な色香と人間の恐怖と圧倒的な快楽】
  上述した様に、濡れ場の分量は各エピソードにおいて十分用意されていますが、ホラーとしての側面も強いため、純然たる抜きツールとして実用的読書に用いることが出来るか否かは読み手の嗜好に依存するところが大きいと言えるでしょう。
  蠱惑的な美女に少年が性的に魅入られ、その白く美しい肌と艶やかな舌や性器に搾り取られる“おねショタ”的でありつつもより倒錯的なエロシチュエーションもあれば、異形の怪物達による女性への凌辱、種族を超えた愛情が生じる異種姦なども描かれており、ある程度趣向の差異は存在しますが、前述した通りに“未知の異形との邂逅”が生み出す恐怖や魅了が描かれていることは共通しています。
  巨女である豊満な怪異に包まれたり、しがみ付きながら少年が彼女に絞られたり、半身が蛇である美女の怪異との性交があったり、異形の存在である怪異の触手や性器などに全身を蹂躙されて恐怖と快楽に包まれるシチュエーションがあったり、異種孕ませ・産卵や子宮内への侵入があったりと、特殊な行為・シチュエーションが多いのも怪談モノならではあり、それを単なるプレイとしてではなく、根源的な恐怖もしくは抗しがたい魅力を引き起こすものとして描き上げるのが確たる美点。
EightStoryOfErothAndTerror4  怪異である女性キャラクターは、ある種超然とした存在として、エロシーンにおいてもその美貌や余裕を崩さないケースが多い一方、怪異に巻き込まれてしまった女性達については圧倒的な恐怖や絶望と、それを強烈に塗りつぶし逃れなくさせてくる未曾有の快楽をに支配される様相を描いており、痴態描写のインパクトは強く形成されています(←参照 恐怖と後悔とそれを圧する快楽 シリーズ第3話「マネキン」より)。
肉感豊かで美しい肢体の存在感、蠱惑的な笑みと男性を誘惑する台詞で魅せる異形の美女達の痴態に対し、複雑な感情が入り混じる表情と漏れ出る嬌声と嗚咽、化け物の性器に蹂躙される秘所を丹念に見せつける結合部アップ構図や断面図などで構成される人間達の痴態は対照的で、異形の女性との快楽に溺れる少年達の痴態も後者に近いタイプ。
  フィニッシュシーンに特に重点を置くタイプとは感じませんが、柔らかくそして冷たさを感じさせる肢体に絡め取られ、異形の膣内に精液を搾り取られるケースでも、凶悪な快楽に支配され、その身に異形の何かを受け取ってアクメに狂乱する女性を描くケースでも、彼ら彼女らが何らかのポイント・オブ・リターンを超過してしまったことを示しており、十分に強力な印象を残す〆となっています。

  ホラー漫画としての側面が強いため、人を選ぶ作品であるのは間違いないですが、性的なモノの魅力と怪異というモノの魅力を結び付け、技巧的な作品構成でそのテーマ性をしっかりと示した稀に見る傑作と評したいところ。ラスト4Pの衝撃が読み手にもたらすモノは実に唸らされました。
サブカル系エロ漫画が好きな諸氏には文句なしにお勧めであることに加え、この妖しくも恐ろしい世界をのぞいてみたい諸氏には是非とも一読をお勧めしたい所存。